新潟県妙高市平丸地区に伝わるスゲ細工の資料館「つなぐ」が新潟県上越市板倉区の古民家を改装し、プレオープン
新潟県妙高市の山間地・平丸地区に伝わるスゲ細工の資料館「つなぐ」が1日、新潟県上越市板倉区の古民家を改装し、プレオープンした。平丸地区にはすでにスゲ細工創作館があり、同保存会としては2つ目の拠点となる。31日まで入館無料で開放し、6月1日から有料となる。
「つなぐ」は、長野県飯山市との県境にある山間地の平丸地区が遠いため、技術研修に来られない人のために、特定NPO法人平丸スゲ細工保存会理事長の柴野美佐代さんが上越市内の昭和初期に建てられたという古民家を買い取り、資料館にした。「つなぐ」では、囲炉裏がある畳の部屋で技術研修会を行うほか、2階の座敷に研修名義で素泊まりすることも可能だという。各干支のスゲ細工などが一堂に約120点展示されており、販売も行っている。
スゲ細工は植物のスゲを使った工芸品で、長野県にルーツを持ち、平丸地区では昭和33年から冬季間の収入源として作られ始めたもので、翌年から妙高市の赤倉温泉で好調な販売実績を記録した。ピーク時の昭和47年頃には200人ほどの作り手がいて、全国の土産売り場で売られていた。最盛期には年間売上高が2000万円を計上したこともあったという。
特定NPO法人平丸スゲ細工保存会は平成27年にスゲ細工の技術の継承などを目的に設立された。同保存会の柴野理事長は元々カウンセラーで、ひきこもりなどに悩む若者たちの居場所作りのために活動していたが、若者たちの研修活動としてスゲ細工を取り入れるなどしているところで、平丸地区の作り手が高齢化を理由に製作を辞めるという話が出たため、同保存会を立ち上げた。現在、若者たちはスゲの栽培や刈り取りなどを担当している。
現在、作り手は柴野理事長を含めた40代から60代の3人。干支の12支の動物のスゲ細工を年ごとにすべて作るのが目標で、一巡する午まであと5年かかる。今年の干支である牛のスゲ細工昨年末に全国各地から60体の注文があったが、製作には1体で3日ほどかかるため、まだすべてが作り終わっていない。5月中旬までにはすべて全て出荷する予定だという。牛のスゲ細工は俵付きが税込み1万5,000円、荷車付きが税込み1万8,000円。
また、平丸地区は山菜の宝庫で、現在、同保存会では収入源の確保のため、ウドの栽培もしており、今後販売していく予定だ。
柴野理事長は「大阪と技術交流をするなど、全国に繋がりがある。人と繋がり、成長したいと言う意味を込めて施設名を『つなぐ』にした。実際に見てもらい、スゲ細工を作りたいという人が出てくるのを求めている」と話していた。