【記者コラム】にいがた経済新聞編集部発「今週の編集後記」
編集後記
先人からの想いを受け継ぐ
8月も近づき、市町村でのお祭りシーズンとなってきた。今年は4年ぶりに開催する地域も多いという。加えて、マルシェイベントや観光地などの人の動きを見ていると、すっかり例年ぶり、いやむしろ、鬱積されていた分、課外活動が活性化しているようにすら、個人的には思えるのだ。
それにしても、今年も8月2日、3日に開催される長岡花火は、全席有料観覧席になっており、市民のために開かれた無料での観覧席は用意されていないという。長岡市民として、地元の花火を信濃川河川敷で、無料で気軽に花火を観覧できないのは忸怩たる思いがある。花火大会自身の開催規模の拡大化により経費や維持費が嵩んでいることは理解できるし、ある程度の有料化は仕方がないことだと思いつつも、一方で、どこか納得できない自分がいる。長岡花火は、そもそもどういう歴史的な経緯で始まったのか。もともとは慰霊の花火ではなかったのか。
江戸時代に、水子供養のひとつの形式として始まった経緯を持つ花火は、長岡の遊郭関係でも打ち上げられるようになり、太平洋戦争後は空襲による死者への慰霊の花火として、毎年続けられている。
かつて、年配の女性から、「花火を見ると空襲を思い出す。だから、つらくて見られない」という想いを聞いたことがある。それだけの歴史の重みと死者への弔いの気持ちがある花火を、単に「経済効果があるから」という理由だけで、安易に観光物化してしまってもいいのだろうか。もう少し、別のやり方はないのか。そういった点も、関係者には、是非とも考えてもらいたい。その上で、全席有料化することもやむを得ないというのなら、地元民への販売価格を考慮するなどの策を講じてもらいたい。
歴史の重みといえば、7月22日から一般開放された米百俵プレイス西棟・ミライエ長岡も同様である。同館には互尊文庫が入っている。長岡市初の公共図書館として、大正時代に野本恭八郎氏によって‟寄贈“された同図書館の意義は、「私は図書館を寄付したのではない。‟互尊文庫”を寄付したのである」という野本氏自身の言葉に凝縮されている。旧三島邸跡地から、明治公園脇へ。そして、今回のミライエ長岡内へ、‟施設“としての図書館は、移転し、「互尊文庫」という名前も、令和の時代へと引き継がれた。だが、果たして、施設名に込められた野本氏の想いや信念を、正しく知る利用者はどれだけいるのだろうか。「互尊独尊」を校歌・校訓に込め、現在も教育活動の中で折に触れて伝えられている長岡市立西中学校の在校生や、その関係者の方が、野本氏の思想に触れる機会も多く、よほどしっかり継承されているのではないだろうか。
令和時代—果たして我々は、どれだけの精神文化を先人から受け継ぎ、そして次の時代に伝えていくことができるのだろうか―コロナ禍もある程度まで落ち着き、少し気持ちに余裕ができたこの時だからこそ、このことをじっくり考えていきたいのである。
全ては、‟時代の流れ“という名の花火の光と音に、かき消されないうちに。
(編集部・Y)
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