【妻有新聞】秋山郷に地熱発電所構想、来年調査へ 栄村自然環境保護審議会は可否見送り、2,000KW規模
関心が高まり続ける「再生可能エネルギー」。全国で候補地探索がなされるなか、秋山郷屋敷では東京の発電コンサルティング会社が来年4月の地熱発電の掘削調査を栄村に申請。事業化すれば長野県内初だが、6月末発生の北海道の地熱発電所事故があり、諮問を受けた栄村自然環境保護審議会(松尾眞会長)は高濃度ヒ素を含む水流出など被害があり『地熱発電調査井掘削の影響の判断土台が揺らいでいる』などと答申。これを受け村は慎重に会社側と協議する方針。
「再生エネルギーの重要さ、村だからこその地域資源活用で、今までと違う世界を作っていくのは大事だが、安全が本当に確約できるのか。現状をみると慎重にならざるを得ない」。秋山郷屋敷地内で東京の企業が事業展開を計画している地熱発電について、栄村・宮川幹雄村長は6月発生した北海道・蘭越町での地熱発電所の掘削調査での事件を念頭に、開発行為の許可について慎重に進める姿勢を示した。秋山郷屋敷地内での地熱発電を計画するのはスパークス・グリーンエナジー&テクノロジー株式会社(東京・港区)の関係会社「SGET(エスゲット)栄村地熱発電」(同)のもの。調査井掘削の開発行為を村に申請、宮川村長は栄村自然環境保護審議会(松尾眞会長、8人)に諮問していた。
同審議会の答申は今月21日に出た。答申では『付近の動植物、地質、地下資源等の自然環境、住民の生活環境に与える影響について判断するに十分なデータを得ることはできなかった』とする一方、条例上での申請や添付データには問題はなかったとし『条例の規制基準が未整備であり、開発行為が自然環境や生活環境に与える影響を村が届出者に十分な聞き取りを行わなかった』ことが要因とし、審議会としては『付近の動植物、地質、地下資源等の自然環境、住民の生活環境に与える影響について意見を申し上げることは困難』と、現状ではデータ不足で明確な可否を伝える答申はできないと結論。これを受け、宮川村長は25日に開いた議会全員協議会で姿勢を示した形だ。
一方で答申に大きく影響したのが6月発生の北海道・蘭越町で、三井石油開発が進める地熱発電所の掘削調査で、水蒸気噴出で硫化水素中毒症患者の発生。高濃度ヒ素を含む水流出により川の汚染や農業用水の一時停止など被害があり『原因は現段階でまったく不明であり、地熱発電調査井掘削が自然環境や生活環境に与える影響を判断する土台が揺らいでいると言わざるを得ない』と記している。
地熱発電所は屋敷地内の中津川右岸、秋山分校付近が候補地。掘削の最大深度は地下2千㍍。同社は2024年4~9月の工事を予定し、村に開発行為の届け出をしていた。計画では2,000kwの小規模地熱発電所で、無人施設。2月には屋敷など秋山地区で地元説明会を行っている。
一方、村議会でも今後の有望な再生可能エネルギーである地熱発電所を研究する作業班チームを置くことを26日の全協で決め、調査を進める方針を決めた。
【妻有新聞 7月29日号】