【新刊紹介】アークプラザとイオンモール、新潟南に並び立つ巨大商業施設の開発秘話/「南南西に進路を取れ 新潟市を活かす、場所産業と街づくり」(著者・平松 勝)

新潟市民、いや、下越地域の住民であれば一度は足を運んだことがあるであろう巨大商業施設「アークプラザ新潟南店(スーパーセンタームサシ新潟店)」と「イオンモール新潟南店」は共に、新潟駅から見て南へ伸びる弁天線沿いに並び立っている。30年前には田園地帯であったこの場所に県内有数の商業施設の用地を斡旋したのは、一人の不動産業者だった。

8月2日にアメージング出版から刊行された「南南西に進路を取れ 新潟市を活かす、場所産業と街づくり」(著者・平松勝)では、不動産開発構成企画者として上記2施設を誘致した平松氏の口から、その完成までの道のりと苦難、そして同地域のポテ
ンシャルが語られる。

著・平松勝氏「南南西に進路を取れ 新潟市を活かす、場所産業と街づくり」

平松氏は1949年、まさに地元である鳥屋野潟南部の生まれ。農家の長男として生まれたが減反政策の影響から不動産業界へ就職し、独立を経て以来40年以上地域の発展に尽力してきた。本書で語られる弁天線沿いから「新潟市の南南西」つまり鳥屋野潟周辺には、上記の商業施設以外にも「デンカビッグスワンスタジアム」が立地し、さらにこの7月には「AIRMANスケートパーク」が供用開始。博物館、図書館、病院なども揃い、宅地開発も近年さらに加速している。

新潟市の南側が新たな中心として注目が集まる中で、今回、平松氏は自身の持つまちづくりのノウハウを、これから開発に携わる人々やそこへ住む人々へ提供する思いで筆を取ったという。

アークプラザ新潟(新潟市中央区)

平松氏曰く「上空から新潟市を眺めると、北北東の日本海に向かってカモメが飛んでいるかのように見える」(42頁より引用)。1964年の新潟地震を契機に、新潟市は地盤が安定した沿岸地域を中心に発展してきた一方で、鳥屋野潟周辺は「地盤
が軟弱な水田地帯」と見なされて開発で遅れをとってきた。しかし、技術的に課題が解決された近年、鳥屋野潟周辺は広い土地が存在し、新潟駅や主要道路などからのアクセス性が良いという高いアドバンテージを持つ。

ただ、大型施設の誘致となると、話は簡単にはいかなかった。開発にかけた時間は「アークプラザ」に約10年、「イオンモール」が約7年。平松氏はその間、幾度となく地域住民へ頭を下げ、行政と激論を交わした。

「交渉に伺うなら、農作業がひと段落する夕方頃に再訪するか、事前に取り付けておくのがよい。また天候に恵まれた日には、畑でゆっくりと本音を聞けることが多くなる。彼らの気分が良くなると頂きものが増えるが、決して断ってはいけない」(91頁より引用)。

これは、農家の地主との土地交渉の一場面だ。平松氏は「アークプラザ」の開発において70世帯の地主と交渉したが、こうした些細な心遣いから関係づくりは始まっている。人間観察と誠実な対応こそが事業を成功へ導く一歩である、と説く本書の考えを端的に表す場面でもあるだろう。

もちろん、牧歌的な話し合いだけではなかった。農村内に潜むヒエラルキー、親子間でも拗れてしまう権利関係、地主の元に降りかかる税制上のアクシデント……本書の中で語られるのは、大型施設建設に伴う生々しい人間模様でもあり、そこへ切り込んでいく平松氏の後ろ姿から得られる教訓は、同業種に限らず普遍的な教えだ。

イオンモール新潟南(新潟市中央区)

平松氏は当時を振り返る「できるかできないか、という最初に結論ありきではなくて『できるようにどうしたらいいか』ということを考えてきた」。

本書内には、大型施設の土地取得について行政と対立する場面が出てくる。農地転用を頑なに拒む行政に対し、平松氏は「農地を守っても、農産物を売る場や加工する場がなければ意味がない」と食い下がった。「結局、交渉で行政側が言う『ダメ』な理由をどうもう少し広げていくか。俯瞰の視点から見て、都市計画だとか、全国的な行政まちづくりの手法とか、そこからやっぱり紐解いていくといろんなヒントが見つかる。そのヒントをネタに交渉していった」。まちづくりは、華々しいプロモーションでは実現しない。ある種泥臭い持久戦こそが、本当の戦いである。

こうしたノウハウを伝えたいのは、これから街をつくっていく世代だ。「私の記憶からも薄れていくので、口伝で伝えていくわけにもいかない。若い人、興味のある人、熱意のある人に『地域を良くしたい』という考えをもってこの本を紐解いていただければ……そう思いながら古い資料を掘り起こして、私の当時の想いも託して、わかりやすい言葉で書いた」。

片山さつき参議院議員(左)と平松勝氏(右)

本の帯には、平松氏と親交のある、参議院議員の片山さつき氏がコメントを寄せた。

片山氏は話す。「ここ(書籍化)までやる人はなかなか居ない。秘密裏に動く人はいるが、それでは(地域創生の)ノウハウは伝わらない。後進の人たちにまで伝えようとするところが、平松氏のいいところ」。

そして、これからのまちづくりや地域創生を担う新潟県民に問う。「新潟は明治の初め一番大きな県だった。私の曽祖父(銀林綱男)も糸魚川の出身。埼玉県知事だったが、そういう人を輩出した土地だということが忘れられているのではないか。
豊かな土地だからこそ、教育もビジネスも一番できるはず。それをもう一度とりもどしてほしい」。

「南南西に進路を取れ 新潟市を活かす、場所産業とまちづくり」は、1,650円(税込)。書店ほか、Amazonhontoなど各種通販サイトで販売中。

著者の平松勝(ひらまつまさる)氏

 

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本記事は、平松勝師の提供による記事広告です

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