【大人の学び】戦後にできた建築物の歴史を巡って 本年度の「まちなか大学」が本格的にスタート(新潟県長岡市)
新潟県長岡市大手通にある「まちなかキャンパス長岡」では、まちなか大学の連続講座「建築のウンチク-長岡の戦後建築史-」が始まっている。同講座は、長岡造形大学の津村泰範準教授を講師兼コーディネーターに迎え、全部で5回開催される予定である。
初回の講義となった8月7日では、「アオーレ長岡と隈研吾」というテーマで、新潟県長岡市内にある隈研吾氏の建築設計したアオーレ長岡が、どのような機能や特徴を持つか、また隈氏による建築設計の歴史の中で、どのような位置づけになるのか、津村準教授によって説明がなされた。同日は、建築関係者を含む31人が参加し、熱心に耳を傾けていた。
津村準教授は、建築写真が外観の様子が撮影されることが多い中、アオーレ長岡の写真は必ず建物内部のナカドマの写真が使われているということに着目し、「(建築物として、)お腹に建物の顔を作るというような、独特な意匠と機能を備えている」ことを指摘、そのことが「中心市街地の持つある種の豊かさである」とした上で、「このような建物を市民としては、使い倒さないと勿体ない」と結論付けた。
一方、アオーレ長岡を含む隈研吾氏の建築設計に関しては、これまで世論でも賛否両論がある。講義を受講していた一人で、長岡市内の建築会社で一級建築士をしている北川正則さん(69歳)は、「もう少し、隈研吾建築に対する先生の個人的な意見を聞きたかった」と不満を漏らしていた。
建築関係者が多く聴講していたためか、初回の講義内容としては、専門性の高い、ボリュームのある内容だった。津村準教授は、「専門家ではない参加者には辛そうだった」と振り返る。とはいえ、講師と受講者が、幅広い視野と見識で意見を交換することのできる学びの場はとても貴重である。
次回の講座は、「リリックホールと伊東豊雄」というテーマで行われる予定である。長岡市内にある身近な建築物とその建築家にちなむエピソードを知って、市内の建築物をより身近に感じたい。
(文・撮影 湯本泰隆)