【人気記事】「インスリン注射しながら自転車日本一周」、1型糖尿病の本間太希(たいき)さん(新潟市西区)の挑戦(再掲載)

【独自】「インスリン注射しながら自転車日本一周」、1型糖尿病の本間太希(たいき)さん(新潟市西区)の挑戦

2023年春から夏にかけての本紙から好評だった記事をピックアップして、お盆休み期間に再掲載いたします。(編集部)

掲載日 2023年5月30日

糖尿病患者となった本間さんは、一生続くといわれる身体的な苦痛だけでなく、同じ患者が受けているであろうもう1つの痛みに気付いた。それは、糖尿病への偏見だった。

「インスリン注射しながら自転車日本一周」の挑戦をする新潟市西区在住の本間太希(たいき)さん(26歳)

 

「同じ病気で苦しんでいる人の助けになりたい」とSNS発信をスタート

本間太希さんのYouTubeチャンネル「たいき / 1型糖尿病」

糖尿病と聞くと「生活習慣病」とイメージする人が多いだろう。しかし、糖尿病には自己免疫疾患などが原因で発症する「1型」と呼ばれるものがあり、小さい子どもでもある日突然発症するケースがある。生活習慣病で知られる「2型」でも、約55%が遺伝に関係するといわれており、また個人ではコントロールしにくい生活環境が背景にあることも少なくない。

糖尿病 = 生活習慣病というイメージが強いせいで、「糖尿病は自己責任」「医療費の無駄遣い」などと思われることが多く、患者やその家族は、そんな偏見に苦しめられている現実があるという。

このような現実に自らが直面した本間さんは、「同じ病気で苦しんでいる人の助けになれないか」と考え、糖尿病インフルエンサーとしてインスタグラム、TikTok、YouTubeなどによる発信を開始。発信は徐々に全国へ広まり、約1年間で総フォロワーは3万人以上に上った。

インタビュー取材を受ける本間太希さん

糖尿病との闘いのリアルを包み隠さずに発信した本間さんのもとには、同じ1型糖尿病を患っている人やその家族からのメッセージなどが寄せられた。そんなある日、1型糖尿病を患っている小学5年生の男児を持つ母親からメッセージが届く。

「私の息子の周りには同じ病気の人はいなく、低血糖のため体育は休んだり、給食も保健室でとったりしている。もう注射を打ちたくないと訴えていたけれど、TikTokのお兄さんも同じ病気だねと伝え、動画を見せたところ、前向きに注射を頑張るようになりました」という内容が綴られていた。

本間さんは、「このコメントをいただいたことで、『僕はこのためにこの病気になった』と思えたんです。逆に言うと、こういう反応をいただけるから、僕はこの病気に向き合えているところがあります。僕一人だったら受け入れられていないと思います」と話す。

続けて本間さんは、「僕は一回死にかけて、一生この体で、前の状態には戻れなくなりました。けれどこの病気になったことで、人の優しさや思いやりに気付くことができるようになった。そこに気付かせてくれたこの第二の人生は、糖尿病で同じ辛い思いをしている人のために生きようと思えたんです。それから本腰を入れて発信などを行っていこうと覚悟が決まった」と力強く語った。

「インスリン注射しながら自転車日本一周」の挑戦を決意

「インスリン注射を打ちながら日本一周」(クラウドファンディングページより)

SNSでの発信を続けていくと徐々にフォロワーが増えていき、糖尿病患者やその家族だけでなく、一般の人にも届き始めた。すると、「若いのになぜ?」「贅沢病ではないの?」「どうせ甘いもの食べ過ぎたんでしょ」というような偏見の声が、以前より多く耳に入るようになったという。

「糖尿病に縁がない人にもこの病気を知ってもらい、どうにか偏見をなくすことが出来ないか」と考えた本間さんは、糖尿病の若者が自転車で日本一周する様子を、YouTubeで発信しながら、全国の患者と交流して回ることを企画。「インスリン注射しながら自転車日本一周」と題して、新潟市からスタートして、約半年をかけて日本を駆け巡る決意をした。

インスリン注射を打つ本間太希さん

しかし、この挑戦には様々な壁が立ちはだかった。毎日4回以上行うインスリン注射の補充、体調や食事面の管理、定期的に行う必要がある病院での検査。そして、体力と気力。

中でも最も大きな壁だったのは、検査とインスリン注射の補充の問題。本間さんは主治医に相談したところ、挑戦中も定期的に検査が行えるよう、主治医が全国の複数の病院への紹介状を書いてくれたのだ。検査やインスリン注射の補充ができるように協力してくれたのだ。

多くの人の応援の声もあり、本間さんは挑戦への準備を着々と進めていった。

 

日本中を駆け巡る旅へ、準備はOK!

出発3日前、K’s GALLERY(新潟市中央区)にて自転車を整備した

自転車日本一周スタート3日前の5月29日。本間さんは、スポーツバイク・オートバイのメンテナンスカスタムショップK’s Gallery(ケーズギャラリー、新潟市中央区)で、出発前の最終メンテナンスを行った。

挑戦を前にした今の心境を聞くと、「少し前は不安があったが、今はすごく楽しみです。準備はギリギリできたので、皆さんのおかげでなんとか出発できそうです」と笑顔を見せる。

本間さんは今回の挑戦にあたり、活動費やYouTube動画制作の外注費を集めるためのクラウドファンディングを5月30日から開始した。

「インスリン注射しながら自転車日本一周」は、6月1日に新潟市中央区の朱鷺メッセ付近からスタートし、10月31日に新潟市に帰って来る計画をしている。日本各地を巡る様子や患者との交流などは、コミュニケーションアプリのDiscord(ディスコード)やYouTubeチャンネルなどで随時発信していく。

糖尿病への偏見をなくすための日本一周の旅へいよいよ出発する本間さん。日本全国からの応援と注目が寄せられる。

グリップの具合を確認する本間太希さん

K’s GALLERY(新潟市中央区)で自転車整備を終えた本間太希さん

(文・撮影 中林憲司)

【関連サイト】
『糖尿病は自己責任』そんな偏見を無くしたい!自転車日本一周で正しい認知拡大を!(クラウドファンディング『GoodMorning』)

たいき / 1型糖尿病(YouTubeチャンネル)

たいき🚲日本一周する1型糖尿病(インスタグラム)

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