【道の駅特集】地域産業から生まれた緑のオアシス、庭園の郷 保内(新潟県三条市)【動画あり】

新潟県三条市は金属加工業の町として名高いが、加茂市と隣接する保内地域は造園や庭木の生産が盛んな地域である。そんな保内に立つ道の駅「庭園の郷 保内」も地場の産業を色濃く反映しており、またそのルーツも独特だ。

今回は、地域産業を支える施設としてスタートし、現在も他にはない強みを生み出している同駅を取材した。

 

JA施設の機能を受け継いだ道の駅

現在も園芸用品売り場には、少数ながら業者向けの専門的な用品が販売されている

「庭園の郷 保内」のオープンは2016年4月だが、道の駅としての営業を開始したのはその約1年後の2017年3月。このような経緯を辿ったのには、同施設ができたきっかけに理由がある。

保内にはかつて、地域の造園業者を対象に資材を販売したり、庭木の展示販売などを行うJAの施設「保内緑花木センター」が存在したが、2010年代に閉業が決定。それに代わる施設として三条市と地元の保内緑の里管理組合(開駅当初の指定管理者)が主導してつくったのが「庭園の郷 保内」なのだ。

「JAの施設が閉業するのをきっかけに、地域の技術と文化を伝え、市内外との交流を深める拠点施設を新たにつくろう、という話になった。だから開駅当初は『センターが移転した』と間違う利用者もいたと聞いている」と、同駅で緑化木・広報を担当する進藤明香さんは話す。

広大な中庭

中庭の奥にはレストランも

そのため地元の植木業者や組合との結びつきは強く、並ぶ商品や敷地内の様子にその影響が垣間見える。特に同駅の特徴としてまず挙げられるのは、広い中庭とそこを埋め尽くす緑だろう。建物と中庭、駐車場を合わせての敷地面積は約3万平方メートル。中庭は造園業者ごとにエリアが分けられており、各々で管理している形だ。なお、中庭に並んでいる樹木はほぼ全て購入可能。季節にもよるが、ポットと植木は合計で500から600品目程度が並んでいるという。

鉢物だけでなく庭木も豊富な点や、造園業者による手厚いサービスは一般的なホームセンターや園芸店にない強みであり、顧客と業者の相互にメリットがある。

なお、同駅は開業から5年目となる2021年、指定管理者に株式会社テレコムベイシスを迎えリニューアル。より一般利用者が利用しやすいよう設備や商品を充実させた。県の統計(新潟県観光入込客統計)によると、同年には約25万人が訪れている。

 

広い敷地が生んだ新たな強み

中庭だけでなく施設内もペットの同伴が可能になっている。マルシェなどが開かれる中で、造園業と愛犬家に接点も。「ペットと遊べる庭をつくりたいので、そういった相談ブースを職人に作ってもらえないか、という声がある」(進藤さん)。自宅の芝生の整備や毒のある植物について気にする愛犬家は多い。

庭木を展示するために確保した広い中庭や施設は、当初想定していなかった強みも生んだ。子供やペットを連れて回りやすい点だ。同駅では前述のリニューアルに際して親子連れ向けの設備を拡充。屋内に遊具のあるキッズスペースを設置するのはもちろん、授乳室やおむつ替えスペースなども確保した。

一方、ペットについては、中庭だけでなく施設内も同伴することが可能となっている点が珍しい。「リードをつけていれば館内も犬を連れて歩くことができる。一般的には、ペットを車に残して手早く用事を済ませる必要があったり、館内に入れてもずっと抱えていなければいけない。こうした(『庭園の郷 保内』のような)施設は珍しいので、ペット連れの利用者から好評。近所であれば毎日夕方に犬の散歩に来る利用者もいるし、遠方から月に1度ペットと共に来館する人もいる」(進藤さん)。

また、こうした利便性やリピーターの多さによって近年は、愛犬家向けのイベントも行われるようになっている。犬の洋服やアクセサリー、雑貨などを販売する店が中庭に約40店舗も出店する「しっぽマルシェ」には県内から多くの愛犬家が集まり、臨時で増設する駐車場も満車になるほどだという。

 

地元に根ざした新商品

館内のカフェ

新商品「たたら餅ソフト」

「庭園の郷 保内」は、メインの販売物である花卉、カフェとレストラン、広い敷地を活用した設備を強みに目的地化しており、利用者の滞在時間も長い傾向にある。その一方で、ドライブの休憩などで「偶然来る利用者が少なく、三条市民でもまだ来たことがないという人もいる」(進藤さん)。加えて、保内の中心より北側では現在、バイパスの工事が進められていることも向かい風だ。

そのため現在、名物の開発でさらなる集客強化を狙っている。「当駅ではこれまで、あまり『名物』と銘打って売ってる商品はなかった。観光客などへ、この土地を知ってもらえるような商品を作っていこうと考え、地元の店舗とのコラボ商品を考案している」と話すのは、「庭園の郷 保内」統括バイヤーの渡邊貴大さん。

2023年春から企画を立ち上げ、この6月から新商品「たたら餅ソフト」を販売開始。「六角凧サブレー」などでも知られる地元の老舗洋菓子店ヤマトヤとのコラボだ。「三条に昔からある銘菓に光を当てた。道の駅の役割の一つに、地元の活性化もあると思う。(この新名物で)利用者には、当駅だけの体験をしてほしいし、保内という名前を覚えてもらいたい」(渡邊さん)。今後も地元店舗などと協力し、8月以降も新商品を投入していくという。

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三条市内には、燕市との市境に「燕三条地場産業振興センター」、下田地域に「漢学の里 しただ」と、「庭園の郷 保内」を含め3つの道の駅が存在している。同じ三条市内といえど、それぞれが地域の特色を強く反映し、まったくキャラクターが異なることが面白い。

進藤さんは言う。「三条と言ったらものづくりや金属金物で、緑のイメージはあまりないと思う。しかし、保内の地域産業である植木や造園の文化もこの場所から伝えていきたい。(そのためにも)『庭園の郷 保内』独自の強みを進化させて行けたら」。

道の駅保内 外観

 

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(文・撮影 鈴木琢真)

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