【輸出向け加速】かんずり(新潟県妙高市)が海外人気YouTuberとコラボ、開始2カ月で既に1万8,000本以上を出荷

新潟県発の香辛料「かんずり(寒作里)」を生産、販売する有限会社かんずり(新潟県妙高市)は、海外の人気YouTuber、パオロ氏とのコラボで動画を発信。動画の中で誕生した新しいホットソースをパオロ氏が販売したところ、発売2カ月で既に1万5,000本以上が売れるヒット商品になった。

 

フォロワー数330万人の人気チャンネルと

東京在住米国人YouTuberのパオロ氏が配信するYouTubeチャンネル「Paolo from TOKYO」は、日本の一個人やひとつの街の生活、企業の業務などにフォーカスし、その動画を通して日本文化や生活様式をグローバルに紹介している。北米を中心に、日本文化に興味のある視聴者に好評で、現在フォロワー数330万人という、かなり影響力の高い動画クリエイターとなっている。

そのパオロ氏からかんずりにオファーがあったのは、2022年の夏。パオロ氏が、ネット通販事業をスタートする上で、最初の商品は好物のホットソース(辛いソース)にしたいということで、日本の素材を求めていたところ、かんずりを発見したという。

有限会社かんずりの本社がある「かんずり本舗」(妙高市)

主力商品のひとつ「かんずり6年熟成」

 

「ベースになっている商品は、当社の『雷』というかんずりを使ったホットソース。動画も含めて、パオロさん仕様の『雷ソース』を創作するところから一緒に企画を練ってきた。海外のYouTuberということで、最初は実感がわかないところがあったが、楽しみにしながら進めているうちに、予想を大きく上回る反響で驚いている」と話す有限会社かんずり・東條昭人社長。

「雷」はかんずりを混ぜ込んだソースに、ハバネロやキャロライナリーパーといった激辛唐辛子を加え、醤油で仕上げたホットソース。パオロ氏のOEM商品も元来の規格よりかなり辛いものだったという。

今回、パオロ氏のオリジナルホトソースは「雷」のさらに辛いタイプ

「海外の方は日本人よりも辛い物に耐性があり、先方から上がってきた要求通りのソースを作るために、何度も味見をするのが辛かった」(営業部主任・森健太郎さん)

パオロ氏が制作し、7月15日に公開となったYouTube動画は、森さんの日々の生活や業務にスポットをあてたところからスタートし、最終的にオリジナルのホットソース作りへ移行していく。森さんが朝起きるところから、出勤して朝礼、デスクワークや配達をする姿、プライベートで会社の飲み会に参加する姿なども盛り込まれている。「かんずり」が400年前の戦国時代に、戦場での栄養補給と寒さしのぎに用いられていたことまで事細かに紹介されている約20分の動画は、9月中旬の時点で93万回以上の視聴回数となっている。

視聴者の反応も上々らしく「辛いものが食べたい時のためにこのブランドを覚えておかないと」「1本買ってみた。ホットソースを語る時にうま味が出てくることは滅多にないから楽しみだ」などコメント欄では好評を博している。

そのパオロ氏が、自身の動画のチャンネル登録者に向けて売り出したのがオリジナルの「雷ソース」。7月の動画配信と同時に販売開始だったが、初回1ロット(3,000本)はあっという間に完売し、すぐに注文が来て、米国の倉庫を通して追加を出したという。まだ販売開始2カ月だが既に6回の出荷を数える好調ぶりだ。

 

海外向けに戦線拡大、機は熟したか

かんずりは、東條社長の就任以前から海外戦略を進めていた。現在は欧州や北米が、その舞台の中心となっている。

「当初はアジア圏をターゲットに売り込みをかけていた。しかし韓国、台湾、香港などはご存じのように自国の香辛料に強みがあり、なかなか入り込めなかった。一方で、北米や欧州では非常に反応が良い。和食レストランや創作料理の店などで使ってもらったが、ソースの隠し味にするなど、私たちの想像しえなかった使い方をする」(東條社長)

海外市場に目を向ける、東條昭人社長

かんずり自体は肉料理との相性が良いことでも知られ、また食品添加物などを使わないナチュラルフードでもあることから、欧州市場との親和性は高いのではないか。

思えば、かんずりが広く世に知られるきっかけとなったのが、作家のC.W.ニコル氏だった。昭和50年代に発行された某雑誌にニコル氏が取り上げられ、羊の肉にかんずりを塗って蒸し焼きにする料理を作っている写真が載り「あれは何という調味料だ」と話題になったという。何やら今回のYouTuberコラボと重なるところが多いエピソードだ。

昨夏に完成した新工場は、海外戦略を見据えてのもの。ISO22000を取得する予定

一昨年から1年がかりで取り組まれた新工場が昨夏に完成。これは当然、海外展開を念頭に置いた投資である。「海外に出す場合、衛生管理の認証を取っておいた方が有利。認証がなければ門前払いのケースも多い。以前の工場は古かったので、HACCAPやISOを取得するのは難しかった。商品ごとに取る方法もあったが、思い切って工場を新しくする方法を選択した」(同)

ちょうど新工場のISO22000最終認証の審査が終わったところ。今回の海外YouTuberコラボで、新潟の風土が生み出した独特の旨みを含む辛みが海外の人々に一層認知されるのは、地元新潟としても誇らしいところ。今後の展開がますます楽しみだ。

 

(記事・撮影 伊藤直樹)

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