【取り出すのはデータだけではない】KDDIの有志精鋭スタッフが、ミライエ長岡でイベントを開催(新潟県長岡市)(再掲載)

掲載日 2023年9月18日
最終更新 2023年9月23日

今週の独自取材記事を日曜日に再掲載いたします。(編集部)

KDDI株式会社が長岡市のミライエ長岡で開催した「おもいで携帯再起動」のイベント

ガラケーの画像に残る何十年も前の何気ない生活の一コマ。家族や友人、恋人などと写った、ふとした日常の瞬間。ちょっとした操作ミス等で、データの移行ができず、携帯電話を新調した際に、泣く泣くデータを諦めたという経験を持つ方も多いだろう。

ところが、KDDI株式会社(東京都新宿区)が提供しているサービスを受けることによって、諦めていた画像を再び見ることができるようになるかもしれない。そんなイベントが9月15日~17日、新潟県長岡市大手通にあるミライエ長岡5階で開催された。

 

ガラケーに残った娘の写真を

小千谷市片貝町からやって来た吉井俊彦さん(68歳)が持ってきたのは、今では市場にほとんど出回っていないガラケーの本体。現在26歳である娘の久美子さんが小学校2年生くらいの頃の画像データが入っているという。

「SDカードに入れていなかったので、新しく買った携帯電話に娘の画像が移せなかった。新聞を見たら、(こちらのイベントで)画像データを1枚だけプリントアウトしてくれるとあった。ダメ元で、今回お願いしようと思った」という。

娘・久美子さんの写真を復旧させに来た吉井俊彦さん

電源の入らなくなってしまった携帯電話本体に、「テスター」と呼ばれる特殊な機械を通して、電気を送り込む。「なんとか頑張ります」と意気込むスタッフ。2,3分ほどして「(電源が)ついた!」という興奮気味の声が聞こえた。

その途端、周りは大きな拍手で包まれる。そんな様子が、会場のあちこちで見られた。通電の成功率はだいたい7割程度。通電までにかかる時間は、概ね3~5分程度だが、ケースによっては20分以上もかかる場合もあるという。

専用のテスターで電気を送り込み、通電を促す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔使用されていたテスター

同社がこのようなイベント企画を立ち上げるきっかけとなったのは、2015年頃のこと。携帯電話の先駆けとなるフォルダーフォン101型がNTTから一般向けに登場してからちょうど30年経過した節目の年に、同社では、これまで自社ブランドが製造・販売してきた携帯電話のデジタル図鑑を作成し、ウェブ上にて公開した。Web上では、「懐かしい」などといった反応がある一方、「まだ持っている」といった声も6割近く挙がったという。

通常、携帯電話本体は、1年以上も使わないでいると、そのまま過放電になり電源が入らなくなってしまう。古いタイプの携帯電話を持っているといった声もある中で、(本体の)電源が入るかどうかわからないといった声が半数位聞こえた。そこで、起動しなくなった携帯電話を再び充電・起動し、ユーザーが見ることを諦めていた懐かしい思い出の写真を印刷して渡すイベント企画が起ちあがった。

名付けて「おもいでケータイ再起動」である。その企画の中心人物こそ、同社の広報やブランディングに長年携わってきた西原由哲さん(48歳)だ。

このプロジェクトを立ち上げた西原由哲さん

 

13,000人のユーザーが体験

同社の携帯ショップには以前から、携帯電話のバッテリーに電気が残っているかどうか簡易的に調べられる「テスター」という機械があった。テスターには、過放電した携帯電話のバッテリーに、電気を充電できるという裏機能があり、その機能を活かせば、「過放電した携帯電話も復活できるのでは」と西原さんは考えたという。

その思いつきはうまくいき、2017年8月に名古屋でスタートし、以後全国350市町村、13,000人のユーザーに体験してもらっている。

広報担当の内藤弘行さん

東京からイベントに参加していた和田多津子さん

この日、スタッフの一人として、東京からイベントに参加していた和田多津子さん(62)歳も、同社の制度を活用してイベントに参加した一人である。一度定年で退職したが、再雇用で同社に勤務している。普段は法人営業の部署に所属しているため、一般顧客に接する機会はないという。「世の中に関わっていきたいと思って参加した。一度東京のイベントに参加して楽しかった」と語った。これからも「1年に1回くらいは参加していきたい」という。

結局、写真を1枚に絞り切れなかった吉井さんは、3枚プリントアウトしてもらった。「スマホで(プリントアウトされた写真を)撮って、写真もとっておく。これでいつでも見れます」と、嬉しそうに語った。

復活できるキャリアは同社製品か他社製品化に関わらず、全キャリアが対象となる。それも全て、無料で行っている。「確かに、短期的にみれば、自社だけのキャリアに限定してサービスを提供するのは、自社の差別化にはなる。

しかし、困っている方は、自社製品のユーザーに限らず、多くいらっしゃる。そういったユーザーにもサービスを向けることで長期的に視点から見ると利益につながる」と西原さんは語る。

充電に特化し、ブルートゥースを用いて端末から直接操作できるようになった新型のテスターを持って、西原さんたちは全国各地の市町村を回っている。

サービスを受けたユーザーの中には、復活した携帯本体に残っていた電話帳を見つけ、同窓会を開いた人や、反抗期のお子さんが幼かったときの画像をプリントアウトした写真を見せ、再び親子の会話が生まれたなど、嬉しい報告が寄せられているという。

通電が確認されると場内から歓声も

「5分前くらいに初めて会ったお客さんと一緒に写真を見て、笑ったり、泣いたりと、お客様さんの歴史に触れる楽しみがあるのは、短編集を読んでいる気分になる」と西原さんは語る。

あるイベント出展のときのことである。西原さんにとって印象深い出来事があった。それは昨2022年7月初旬のことである。KDDI通信障害発生し、全国の同ブランドキャリアが繋がりにくくなるなど甚大な被害が発生した。この日も西原さんたちは、イベント先に出向していた。同社社員である西原さんたちは、当然出向先で、様々なユーザーからお叱りを受けることを覚悟していたという。

ところが、いざイベントを始めてみると、お叱りの声よりも、「こんないいことしているんだからいいよ。頑張ってよ!」といった応援の声の方が多く集まったという。「こういう活動で、支援とか声援をいただくことがある。我々が元気をいただいた思い出深いエピソード」と、西原さんは当時を振り返る。

 

当時の記憶が鮮明に蘇る

無事に画像データを復旧できた

さて、冒頭に紹介した片貝町から来た吉井さんは、どうやら無事に娘さんの画像データまでたどり着いたご様子。約20年ぶりに見る久美子さんの姿に、思わず顔をほころばせる。「(画像を)ぼんやりとは覚えていたが、改めてみてみると懐かしさを感じる」と、画像の姿とともに、当時の記憶が鮮明に思い出されてきたようだ。

「この写真を撮ったのは、娘が小学校に入って間もなくのこと。多分ね、自分が一杯飲んでいたときに、“かわいいな”と思ってパシャっと撮ったもの。この写真が入っているから、携帯を捨てられなかった」と、幸せそうな様子が伝わってくる。

復活させるのは携帯電話だけではない。ユーザーの思い出や人間関係も復活させてくれる。そんな素敵な活動の輪は、これからも全国各地に広がっていく。auの下記サイトから、イベントを追うことができる。復活できないデータがある人は、是非予約の上、参加されてはどうか。

(記事・撮影 湯本泰隆)

 

【関連リンク】

https://www.au.com/omoidekeitai/

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