【ビズテイル#1】―リーダーの光と影―「積み上げたものがどんどん崩れていった・・・」人材派遣業DearStaffの深見啓輔(ふかみけいすけ)代表取締役

新潟のビジネスの舞台裏、そこには熱きリーダーたちの「光」と「影」が交錯する。本シリーズ「ビズテイル ―リーダーの光と影―」では、彼らの真実の声を紐解きながら、経営の現場での戦いの記録を追います。

今回の主役は、株式会社DearStaff(新潟市中央区)の深見啓輔(ふかみけいすけ)代表取締役。彼のリーダーとしての旅を、共に辿りましょう。

株式会社DearStaff(新潟市中央区)の深見啓輔代表取締役

【プロフィール】
深見 啓輔(ふかみ けいすけ) 株式会社DearStaffと株式会社ペイフォワードを経営。1974年6月17日、埼玉県北本市出身。東京国際大学を卒業後、派遣労働者として工場勤務を経た後、人材派遣会社に入社。長岡支店へ転勤したことがきっかけで新潟に移住し、2012年4月に起業。人材派遣業を基盤とし、イベント企画や運営、農業支援事業、スポーツバイク・オートバイのメンテナンスカスタムショップK’s Gallery事業アドバイザーなど、幅広いビジネスを展開している。人生に影響を与えた本は「お金ではなく、人のご縁ででっかく生きろ!」著・中村文昭、趣味はバイク、釣り、熱帯魚飼育。

 

コツコツと実績を積み上げ、新潟に移住して起業

──現在の事業の概要を教えてください

株式会社DearStaffでは、オフィスや工場への人材派遣です。一方、株式会社ペイフォワードではイベントや企画立案、農業支援や起業支援など、さまざまな分野で活動しています。

 

──起業のきっかけは何でしたか?

元々は、学生時代から警備会社に頼まれて人を集める仕事をしていました。それが結構面白くて、なんとなく人に関わる仕事って自分に合ってるなと思ってました。派遣社員として工場で勤務した経験もあり、そこでも人をまとめる役割をもらったんです。

でも、会社員として会社の独自ルールやしがらみの中で動くのが自分には合わないなって感じて。独立して、自分の力で起業してみたいって強く思うようになりました。でも当時は人脈も、経験も、知識も、お金もなくて、起業は漠然とした夢でした。

だけど、ふとした機会にアウトソーシングすると言う選択肢を知り、これなら自分の不得意分野はプロに任せられるんだって気づいたんです。それで、自分は得意分野で勝負できる、俺でも起業できるんだって思えるようになったんですよ。

25歳ころ、パソコンすらできず、ノリと勢いで仕事をしていた熊谷営業所時代

——転機はいつころでしたか?

25歳の頃に視界が大きく開けましたね。でも、それからすぐに起業するわけじゃなかったんです。お金もなかったし、最初はお金を貯めることから始めました。お金をコツコツ貯めながら、自分で会社の設立書類を作り、準備を進めていたんです。

その後も準備を進めていたんですが、リーマンショックや東日本大震災など、10年おきに大きな困難がありましたね。それによって勤めていた会社の売り上げが激減し、もし、そのときに自分が独立していたら、うちの会社は即潰れて家族は路頭に迷う、という危機感を持つようになりました。だから、独立することができず、長い間モヤモヤした時期がありましたね。

 

──新潟での活動やその経験が今のビジネスにどう影響していますか?

新潟には2000年から転勤で来たんですけど、すぐに気に入っちゃって。新しいプロジェクトを立ち上げたり、新潟県内に新規支店を作ったりして転勤させられないようにしがみついてました。市場調査、社内稟議、新規支店垂直立上げの経験は今でも自分の宝です。

37歳で起業できたんですけど、それまでの経験が今のビジネスにすごく役立ってます。困難を乗り越えながら学んだこと、それが今の会社経営に活かされてますね。

 

コロナショックとビジネスの困難

株式会社DearStaff(新潟市中央区)

──起業してから現在まで、直面した最大の困難は何でしたか?

やっぱり、コロナショックが一番厳しかったですね。積み上げたものがどんどん崩れていくのを目の当たりにしました。特に、人の流れが抑制され、経済が停滞。物が売れなくなり、サービスも受けられなくなると、工場も稼働しなくなってしまうんです。それで、人員削減や値下げの要求が始まり、仕事もどんどん減っていったんですよ。

 

──具体的に収入や契約はどの程度影響を受けたんですか?

おおよそ、5割ぐらい落ちましたね。特に、電子デバイスや自動車、半導体などの工業製品に注力して事業展開していたんですが、契約更新がストップしました。主力だった専門人材の派遣も、人員削減で売上の主幹が崩れていきましたね。

 

──その時の心境はどうでしたか?

本当に厳しかった。あれだけ頑張ったのに、自分のミスじゃない外的要因でこんなことになるんですから。特にコロナは、最初はそんなに怖いものか?と思っていました。でも、人の行動が制限されて経済活動が停滞すると、地震のような物理的な被害がなくても、経済は大打撃を受ける。正直、対処の仕方が分からなかったですね。

 

──コロナの影響はすぐに出てきましたか?
ええ、すぐに出てきました。会社全体の収入は落ち込み、イベントも全て中止になり大きな影響を受けましたね。最初の半年は本当に厳しかったんです。でも、どんなに困難な状況でも、前に進む希望の光は見えてきたんですよ。

 

──具体的には、どのように乗り越えたのですか?

当初、主要な事業がほとんどダメになってしまいました。でも、学校給食がなくなり、家での食事が必要になったことで、レトルト食品が非常に売れるようになったんです。これが新たなビジネスチャンスとなりましたね。

他にもコロナ特需で取引先の一部が急に忙しくなり、そこに車の部品を作っていた人たちや半導体を作っていた人たちを配置転換させて、新しい需要に応える形になりました。

 

──厳しい時期を乗り越えることができた要因は?

情報収集がめちゃくちゃ大切だったんですよ。友人や同業他社、派遣社員の人たちからも色々学べて。その情報でどこが忙しいか分かって、ピンポイントに営業活動をしてました。

でも、結局は人との繋がりが一番大事だって気づきましたね。それで、コロナの給付金手続きの窓口業務もゲットできたんです。イベント業界の人たちとのつながりが役立ったし、一緒に共同事業を立ち上げて乗り切ろうと声を掛けて貰ったので、仲間と協力して乗り越えられたんです。

2020年3月からアルビレックス新潟試合運営開始、当時20人の依頼がいまでは50人超に

 

コロナ禍の飲食店支援、自粛ムードへの想い

──深見代表はさまざまな人と飲食の機会を作ってコミュニケーションをとっているようですが、その想いは?

地域経済の一員なのに急に守りに入る風潮が嫌いなんですよ。飲食店は苦しい時期があったじゃないですか。普段自分は助けてもらってるのに、苦しい時に無視するのは嫌でしたね。

 

──コロナ禍で収入が減少してる中、それでも飲食店に足を運んだ理由は?

経済を止めるなってメッセージを出したかったんです。自粛ムードで経済が停滞していましたが、地域経済は、地域で回さないと。自分が痛手を被ったからって縮こまって、守りに入っちゃったら、地域経済全体がおかしくなってくる。

そこは無理しようよ!ということで、借り入れして飲みに行っていました(笑)

 

苦手分野の克服と地方ビジネスの魅力

農業支援事業「にいがた農園倶楽部」の棚田(新潟県上越市)

2012年、独立して一番初めに立ち上げたビジネス 棚田オーナー制度

──今後についてお聞きします。どのような取り組みをおこなっていきますか?

これまで得意分野での勝負が私の信条だったんですが、やっぱり苦手分野も挑戦していこうと。そこを得意にすることで会社の体力や対応力も上がると思っています。具体的には、イベント舞台設営やまだチャレンジしたことのない裏方の仕事への注力を考えていますね。

 

──新潟県の人手不足や人口減少の影響を感じますか?

確かに、人材不足は深刻ですね。昔は、人を採用することに危機感を持つ会社は少なかったけど、今はその状況が逆転しています。人が不足すると売上や営業活動に影響が出るので、人材派遣会社へのニーズが高まっていると感じます。

 

──新潟でのビジネスの魅力や環境についてどう思いますか?

新潟のいいところ、新潟の魅力は、人の心の温かさや、長期的に安定して一緒に仕事ができる環境にあると感じます。大手企業が多い都会と違って、新潟は人がしっかり定着してるから、同じ人と10数年も取引できたりするんですよ。それに、新潟は「顔が見えるビジネス」ができるところ。紹介ベースで仕事が進むし、誰か会いに行ったり、会社を訪ねると不思議な縁が生まれてビジネスがスムーズに進むんです。

2023年4月 K‘sGallery立上げ

株式会社DearStaff(新潟市中央区)の深見啓輔代表取締役

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深見代表がイベント業などを手がけるペイフォワードの社名は、2000年にアメリカで公開された映画「ペイ・フォワード 可能の王国」に由来する(日本公開は2001年)。

受け取った善意や思いやりを他の人に渡す、いわゆる「恩送り」がテーマとなっている映画だが、深見代表はこの映画のメッセージに共感し、公私分け隔てなくこの考え方を体現している。

人とのリアルな繋がりを重視し、常に「みんなでハッピーになろう」というスタンスが他者からの信頼を築いている深見代表。予期せぬ事態が起ったとしても、何度も乗り越えていくために大切なマインドを学んだ。

(インタビュー・文・撮影 中林憲司)

 

【関連サイト】
株式会社DearStaff

 

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