【躍進のトップに訊く】アヅマホールディングス(新潟市中央区)関博司社長、M&Aでグループ4社に、海外展開も見据えて(再掲載)
アヅマホールディングス株式会社・関博司代表取締役
掲載日 2023年10月9日
最終更新 2023年10月22日
今週の独自記事などを日曜日に再掲載いたします。(編集部)
アヅマホールディングス株式会社(新潟市中央区)は10月2日、東京都品川区に本社を置く工業用試験機の製造を手掛ける株式会社富士試験機製作所を、9月28日に子会社化したと発表した。
同社を持ち株会社とするグループは、起源でありコアとなる光学機器・計測機器の販売・メンテナンス事業のアヅマテクノス、電気部品等の販売、電気工事などを請け負う富士工機(長野県、2020年買収)、理化学機器等の輸入販売を行う仁木工芸(東京都、2021年買収)と合わせて4社を傘下に収める。近年の拡大路線、成長戦略が順調に進んでいると見た。前2回のM&Aが商社系の会社だったが、今回はグループ初のメーカーということで、新たな商材展開も見込めるか。
10月5日、アヅマホールディングス本社に関博司社長を訪ね、成長戦略の背景をうかがった。
新たなシナジーでグループ80億円目指す
― 今回のM&Aはどういうきっかけですか
関社長(以下略) 日本M&Aセンター(M&Aコンサル最大手)の紹介です。新たな商材の広がりと技術力、歴史などを兼ね備えたメーカーで、なおかつ弊社との間でシナジーが生まれそうな相手を条件として探してもらっていました。
― 富士試験機製作所はどのような会社ですか
材料試験機メーカーというかなり専門性の高い分野のメーカー。これだけ歴史を有していて(1951年創業)、材料試験機に特化したメーカーは、国内にもほとんど見当たりません。主に「ビッカース」など硬さを測る計測器を生産しています。JIS規格などの硬さの試験規格などもつくっているほど厚く信頼される技術力です。ベアリングを入れて試験を行う検査機械など、かなりニッチな分野までフォローしています。
メーカーとしても高い技術力ですが、特筆すべきは校正の分野(検査の値が正しく出ているどうかを工業現場まで赴いて精査する業務)で、国際的に信頼性の高い校正の規格であるJCSSの登録業者です。
― グループの既存販売網を活かしてシナジーが生まれそうです
グループ初のメーカーということで商材の幅も広がるし、校正におけるJCSSの有資格企業であることは既存のお客様に新たな提案ができて、お客様との接点が広がることも期待しています。工業機械は一度導入すると20~30年入れっぱなしのところが多いので、お付き合いのないお客様に食い込むのは容易ではありませんが、JCSSの有資格となれば更新のタイミングで提案ができます。お客様のすそ野が広がると考えています。
― 会社の成長戦略が加速している印象です。2021年に仁木工芸を傘下に加えた時点では「2026年にグループ年商80億円を目指す」とされていましたが、今回のM&Aで上方修正ですか
今回の合併先は、売り上げ規模がそれほど大きくなく、営業のリソースもあまりないので、これまで行ってきた販社同士のM&Aのように単純な足し算になりませんから、80億円の目標はそのままで。新たに生まれる営業チャンスで、どこまで拡販できるか、というところです。
海外展開の新たな足がかりへ
― 富士試験機製作所は2016年にタイ国の「アマタシティチョンブリ工業団地」に拠点を設けています
かなり巨大な工業団地で日系企業、特にトヨタ系やデンソーなど自動車関連産業が数多く進出しています。同社は、そうした日系企業を頼りに、卓越した校正技術で関係性を築いてきました。現地の校正業者は技術が整備されていないので、(JCSSの有資格企業は)歓迎されています。
― 2021年のM&A時には海外展開について明言されていませんでしたが、今回は当然、グループのアジア戦略が念頭にあるのでは
それはあります。タイからはベトナム、マレーシア、ミャンマーと自動車で回れるのが良い。拠点としては実に便利なので、ここから伸ばしていければ。
海外戦略も計画にはありますが、むしろ国内に向けても営業拡大していきたい。(富士試験機製作所は)優れた技術がありながら、これまではリソース不足から国内でもほとんど営業活動を展開できていないので。
― 今回の富士試験製作所は高い技術力を有しながら後継者不足で独力経営を断念せざるを得なかった会社。後継者不足は日本のものづくりの構造的な問題でもあります
後継者がいない会社で、事業規模が10人に満たないところ、少なからず廃業するか大手に身売りするかという選択に迫られます。また、どうしても有資格者が活躍する現場ですからベテランが求められるところもあり、新しい人が入ってこないと高齢化も進むばかりです。
グループとしては、今後も後継者問題を持つ技術系企業のM&Aを積極的に推進し、日本のモノづくり産業の継続的な発展を支えていく方針を持っています
(編集部・伊藤直樹)
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