【made in japan】国内生産を行う株式会社美装いがらし(新潟県糸魚川市) 自社ブランドやデザイナーズブランドを拡販へ
美装いがらしの工場の様子
今や日本で供給された衣料品のうち、国産品が占める数量の割合は1.5%となっている。(「日本のアパレル市場と輸入品概況2023」日本繊維輸入組合調べ)。世界の工場・中国のみならず、ベトナム、インドネシア、ミャンマーなどのASEAN諸国から安価な衣料品が入ってきていることが要因だが、ここ数年金額ベースは変わっていない中、単価が低いものが大量に入ってきている現状がある。
創業以来55年、ブラウス専業の株式会社美装いがらし(新潟県糸魚川市)は、日本3大デザイナー・山本耀司氏によるブランド「ヨウジヤマモト」、国内大手セレクトショップのブランド、デザイナーズブランドの洋服を製造している。これは海外移転や重衣料と比べて単価が低いことなどから、国内では同業が少なくなってきたという現状があり、同社の手縫いの技術や素材に対応した技術が背景にある。
美装いがらしの五十嵐昌樹専務は「業界の課題としては、根本的には人口減があり、家計に占める繊維製品の支出がまた減ったという業界紙の報道があった。物が余っている中でどう売っていくか。各アパレルに聞いてもリアルが戻ってきて2021、2022年は前年実績は超えているが、2019年は超えていないと聞く」と話す。
「コロナ禍の最中は店頭が閉まり、発注がなくなった。弊社は1年目はマスクと防御服で半分の売り上げをカバーしたが、イコール半分仕事がなくなったということ。それでも1年目は増収増益だった。しかし、2年目は自社ブランドも閉店し、アパレルも在庫が膨らんでいたので作らず、弊社的には製造の方でかなり影響があった」。
また、「一方で、コロナが5類になり、直近1年間は年がら年中フル生産だった。理由は国内でできる会社がないことと、為替の影響、弊社は研修生がおらず日本人のみだからだと思う」(五十嵐専務)。
なお、業界は人材不足が課題。同社は今年1月から10数人が入社しており、人材育成に力を入れている。市内やU・Iターンなどの若年層が多いという。
一方で、美装いがらしでは、全体の40%が自社ファクトリーブランド(工場発のブランド)「アオ」が占める。「私はファッションの学校を出たわけでもないからもしれないが、半年前に展示会をして生産するというアパレルのやり方はギャンブルに思えた。価格決定権がほしかった」(五十嵐専務)。
企画・開発・製造・販売の垂直統合の仕組みが強みで、独自素材の開発や信州大学(長野県)との連携による肌触りの数値化が特徴。現在、阪急百貨店や新潟伊勢丹で販売するほか、ネット販売や国内約50店舗に卸している。
また、同社では、地域でオーガニックコットンを育てて、ベビー肌着を糸魚川市で生まれた子供に届ける「アオコットンプロジェクト」を9年前にスタートし、地元糸魚川市内の小学校・中学校などで綿花栽培や服育の授業なども行い、地域コミュニティにも力を注いでいる。
アパレル業界は以前から中国製が当たり前の時代だが、その意味でも逆に「日本製」「made in japan」が大きな付加価値となる。新潟で意匠性の高い服を作り続ける美装いがらしの今後の動向に注目したい。
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(文 梅川康輝)