【書店員が選ぶ】今月のおすすめ本(2023年10月 )「疲れた心によりそう食エッセイ」—— 提供・ジュンク堂書店新潟店

ジュンク堂書店新潟店(新潟市中央区)の書店員が選ぶ「今月のおすすめ本」。書店員の眼鏡に映った「今読んで欲しい本」を、書店員の生の声でお届けします。

書店員が選ぶ「今月のおすすめ本」2023年10月(提供 ジュンク堂書店新潟店)

長くて暑かった夏もようやく過ぎ、一気に涼しくなりました。秋と言ったら「読書の秋」はもちろんのこと「食欲の秋」も外せないよね、ということで秋の夜長にじっくり読みたい、疲れた心に寄り添う食エッセイ本を3冊ご紹介します。

ここ数年の料理書の棚を見ていると、「ずぼら」「手抜き」「やる気ゼロ」などがキーワードとなったレシピ本が多く発行されており、できるだけ手間や時間をかけずに料理を作りたいと思っている、お疲れな人がそれだけたくさんいるのだと感じます。

健康のためには食事が大事というのは十分わかっているけれど、料理をする元気がない・・・そんなお疲れのあなたに。(ジュンク堂書店新潟店 実用書担当 齋木由布)

 

自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話(晶文社)山口祐加、星野概念 税込1,870円

自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話(晶文社)山口祐加、星野概念 税込1,870円(提供 ジュンク堂書店新潟店)

「誰かのためにだったら料理をつくれるけど自分のためとなると面倒で、適当になってしまう」、「自分のために料理が作れない」人々の声を解きほぐし、世帯や年齢も違う6名の参加者を、著者が「自炊コーチ」をし、気持ちの変化や発見について対話を通して、各々が抱えている「自分のために料理ができない」と感じている要因を探り、その人に合った「自分のために料理をつくる」ことを考えていく。

自分のために料理をつくることがなぜ面倒くさいと感じてしまうのか、その気持ちを分解して解きほぐしていくと、単に料理にまつわる工程の多さだけではく、料理に対して「こうしなければならない」という理想や思い込み、SNSでの他人との比較によって料理に対するハードルを自分で上げてしまっていたことがわかります。

読み進めていくと、あんなに面倒くさく思っていた「自分のための料理」が思ったより自由で、可能性があることに気づき、自然と「料理してみようかな」「作りたいな」という気持ちにさせてくれる一冊です。

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ひとりで食べたい わたしの自由のための小さな冒険(平凡社)野村麻里 税込1,980円

ひとりで食べたい わたしの自由のための小さな冒険(平凡社)野村麻里 税込1,980円(提供 ジュンク堂書店新潟店)

「ひとりで食べる」ことは好きですか?

コロナ禍を経て、外食や会食を取り巻く環境は大きく変わりました。人と会食することが避けられ、「孤食」や「黙食」などと言われ、「ひとりごはん」が寂しいマイナスなイメージがあるように思われますが、ひとり客でも入りやすいお店が増えたり、テイクアウトのお店が増えたり、コンビニ飯も充実したりと「ひとりごはん」しやすい環境になったともいえます。

「ひとりで食べること」に光を当てたこの本の中で、著者は外食でも、家での食事でも「ひとりごはん」を存分に楽しんでいることが伝わってきます。

「ひとりで食べる」ことは、「自分とゆっくり食事すること」で自分と対話しているということ。

私もこの夏体調を崩したときに、食べたいものが食べられる、食欲があるということは幸せなことだったのだなあと身をもって実感しました。しかもその時の気持ちは、健康な時にはすっかり忘れてしまって、おざなりにしてしまっています。時には何かしながら適当に食事を済ませるのではなく、目の前のごはんに集中してこの時間ごと味わいたいですね。

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泣きたい夜の甘味処(KADOKAWA)中山有香里 税込1,210円

泣きたい夜の甘味処(KADOKAWA)中山有香里 税込1,210円(提供 ジュンク堂書店新潟店)

疲れているときは文章を読むのも億劫、そんな時に読んでほしいコミックエッセイです。

疲れて泣きたい人の目の前に現れる一軒の甘味処。熊と鮭が営むこのお店ではその日のメニューは1品だけ。「仕事に疲れ果てた日に食べる、ほかほかのドーナツ」「長年勤めた職場を離れた日に出会った、いちご大福」…不思議なことにそれを食べると、張り裂けそうだった気持ちが解きほぐされ、少し前を向いてまた日常に戻ることができる。そんな不思議な夜の甘味処に出会う人たちの物語です。

それぞれが抱える事情は人それぞれですが、なにか自分が抱えている悩みや不安と共感できるエピソードがあるのではないでしょうか。

世の中にはプロの作った美味しいものがたくさん溢れているけれど、昔小さい時に食べた手作りのお菓子やごはんがやけに思い出に残っていたりしませんか。それは味だけではなく、誰と一緒に食べたか、どんな会話をしたかも一緒に引き継がれ、その経験が自分にとって印象に残っているからだと思います。

普段は思い出すことはほとんどないけれど、ふとしたきっかけで思い出す。そんな思い出を大事にする「お菓子を食べる」くらいのわずかな時間がこの先生きていくために必要なときもあるのだとこの本を読んで思いました。

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以上、疲れた心によりそう食エッセイをご紹介いたしましたが、ほぼ自分へのおすすめのようになってしまいました。毎日行う食事を大切にしたいけれど、なかなかできていない…という方に届けば幸いです。作るのは難しくても「ドーナツを温めて食べる」くらいの余裕はもっていたいものです。(ジュンク堂書店新潟店 実用書担当 齋木由布)

(提供)ジュンク堂書店新潟店

 

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