【写真コラム】「工場の祭典2023」見せられるほどに魅せられる、珠玉のオープンファクトリー2選(再掲載)

掲載日 2023年10月29日
最終更新 2023年11月5日

直近の人気記事を日曜日に再掲載いたします。(編集部)

10月26日から29日の4日間、燕市と三条市の全域にある工業産地を舞台に開催されたオープンファクトリーを中心としたイベント「工場の祭典2023」が幕を閉じた。
2013年からスタートして11回目を迎える工場の祭典だが、全国的にも知名度が増し、オープンファクトリーの参加企業だけでなく訪れる来場者も年々増えている。
今年の工場の祭典は初めて「任意団体KOUBA」の運営のもとで開催され、よりデザイン性の高いクリエイティブな演出とともに企業や職人の技術を深掘りした発信をしている。オープンファクトリーに参加した87の工場(こうば)の中から2カ所に着目して写真で紹介したい。
ものづくりの現場を目にし本当の価値に触れることで、その製品の魅力が増す。売り場に陳列されているのを見るだけではわからない、魅惑の情報が工場には詰まっている。

 

【藤次郎】

世界の一流料理人に愛用され、燕三条を代表する包丁の名工と知られる藤次郎株式会社(燕市)の歴史は1953年に立ち上がる。そのスタートは意外にも農機具メーカーだった。

鍛造の工程で職人の説明を受ける観覧者

機械化が進む現代でも、刃を付けていく作業は人の手によるところが大きい

包丁に名前を彫る「作切り」の工程

 

藤次郎の包丁が一流を惹きつけて離さない理由は、秀逸な切れ味はもちろんだが、流麗なハンドル形状にまでわたるユーザーフレンドリーな入念さにある。日本刀に端を発する「打ち刃物」の業、そして燕三条の地域特性を活かした「抜き刃物」の業。オープンファクトリーを見学すると、その粋に触れることができる。今年の工場の祭典は、同社の毎年恒例イベント「藤次郎ウィーク」(10月23日~10月29日)に偶然重なった。

 

【玉川堂】

玉川堂の工房とギャラリーは、この歴史を感じる雰囲気も大きな魅力

創業は1816年、槌起銅器の株式会社玉川堂の歴史は200年を超える。かつて豊かな銅の産地だた燕市に育まれた、一枚の銅板を槌で打って工芸品として命の吹き込む伝統の業。グローバルに高い評価を受け、燕三条ものづくりの象徴とされる存在だ。玉川堂のオープンファクトリーの魅力は、職人の卓越した業(わざ)もさることながら、歴史ある建物をそのまま残した工房とギャラリーは「額縁」としての役割も大いにあると感じる。

一種張り詰めた空気と、「手作り」の暖かみが同居する工房

トントンとこ気味良い槌音で、銅板に命を吹き込んでいく

その凛と張り詰めた中に暖かさが残る雰囲気は、この場所以外で味わえない。JR東日本のクルーズトレイン「四季島」周遊コースに加えられたジャポネスクがそこにある。

この見事な風合い。一枚の銅板が、槌音を経てこの味を出す

玉川堂の銅器の凄みは、その工芸の美とともに実用性の高さがしっかり担保される点だ

 

(写真 文 伊藤 直樹)

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