【道の駅特集】リニューアルで客数倍増、SORAIRO国上(新潟県燕市) アウトドアと食、そして新たな施設も
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道の駅制度が施行(正式登録の開始)されてから2023年で30周年。施設の老朽化や、観光施設としての需要の高まりからリニューアルを行う道の駅も増えている。新潟県燕市、国上山の麓に建つ道の駅「SORAIRO国上」も2022年、指定管理者に新しく飲食のよね蔵グループを迎え再スタート。リニューアル前(2019年4月から翌年3月)は入込客数約21万8,000人だったが、リニューアルしたその年度(2021年4月から翌年3月)は早くも約43万人に倍増する飛躍を見せている。
原点は町民のための温泉施設
道の駅「国上」を構成する施設のうち最初に建てられたのは日帰り温泉「てまりの湯」で、1993年開業。元々は旧分水町と旧吉田町の保養施設で、開業当初から「ワンコインで入れる」温泉であることを売りにする。その後2002年5月、食堂や売店などを備えた休憩施設「ふれあい交流センター」が併設され、同年8月に道の駅として登録。現在のメイン施設の原型となっている。
2016年には1回目のリニューアルを実施し、「ふれあい交流センター」を全面的に改装。また、同施設は当初、旧分水町が農村振興を主な目的として農林水産省の補助金で建設したことから販売物に規制がかけられており、燕市編入後も工業製品などを販売できない状況にあったが、これを緩和。「ものづくりのまち」燕三条としての商品も販売できるようになった。
一方で、同施設は県内有数の観光地である彌彦神社(新潟県弥彦村)と寺泊港(新潟県長岡市)を結ぶ道路上にある。その観光ルート上で集客力をより高めるため、燕市は2022年にリニューアルを実施した。
農産品、食、アウトドア
リニューアルに際し、指定管理者には新たに地元・旧分水町を拠点とするよね蔵グループを迎えた。同社が掲げたコンセプトは「ファーマーズマーケット&アウトドア」。売店入ってすぐのエリアには近隣農家から仕入れた野菜が並ぶ。
「当駅の見どころの一つは、季節ごとの新鮮な野菜・果物が毎朝並ぶこと。約90件の農家と直接取引していて、野菜は燕市からのものが多いが、弥彦や巻(西蒲区)、三条の農家ともやり取りしている。朝は、開店待ちで並ぶ人もいるほどの人気」と紹介するのは国上のスタッフ鴨井智恵子さん。
また、飲食関連ではよね蔵グループのノウハウが光る。食堂では、そば・うどん、キャンプ風の食事、背脂ラーメンの3店舗が営業。さらに今年からは、売店エリア奥の厨房をオープンキッチンに改装し、できたての惣菜とおにぎりを提供している。特におにぎりに関しては、利用者からの要望が多かった品目だという。
アウトドア関連では、敷地内にキャンプフィールドとデイキャンプエリアを用意。本格的なものから、自分で荷物を用意せず手軽に楽しめるメニューまで提供する。
売店では燕市内5社からアウトドアグッズ約200点を販売。アウトドア関連に品物を絞ることで、燕三条地場産業振興センター(新潟県三条市)やストックバスターズ(新潟県燕市)との棲み分けを明確にした。「バーベキューやキャンプで実際に使ってもらうことで、その良さを知って買っていく人も多い。三条だけでなく、燕にもキャンプグッズを作っている会社が多いということをもっと知ってもらえたら」(鴨井さん)。
加えて、今年6月に新たにオープンしたのが、車中泊が可能なRVパークだ。国上でも元々車中泊利用者は多かったが、本来道の駅での車中泊はグレーな状態。駐車場が埋まることでほかの利用者が停めにくくなる弊害もある。そこで国上では、RV専用の駐車スペースを確保。料金を徴収する代わりに、炊事場や電源の利用、温泉の利用券など快適性を提供する。
課題と新たな動き──良寛史料館の移転
現在、休日になれば地元客はもちろん、県央一帯を巡る観光客の自動車で駐車場は埋まる。一方で、大型バスで乗りつける団体観光客は少ないと鴨井さんは話す。「客層で言うと断然ファミリーカーで来る人が多い。団体の場合、弥彦・寺泊間が近すぎてすぐにバスを止めることになってしまうため」。ただ一方で、「お土産の豊富さや食事の多彩さで言えば弥彦にも寺泊にも無い強み。これからそうした点も打ち出していければ」と今後への意気込みも話す。
もう一つ課題となっている点が、駐車場の不足だ。現状、長期休暇やイベントになると駐車場が飽和してしまうことも多く、近隣の農道などに許可をとって臨時の駐車スペースにすることすらあるという。また、キャンプや温泉といった特徴から、客の滞在時間が長期化する傾向もこれを後押ししている。
こうした問題も含め今後期待されるのが、分水良寛史料館の移転新築だ。同館は道の駅「国上」の近隣へ移ることになっており、2024年にも計画に着手し始める。これに伴い駐車場も大幅に拡充される予定。また、良寛の足跡を辿る人にとっても国上山と史料館が近いことはメリット。「わじま」「天領の里」といった近隣道の駅も加わって、また新たな観光ルートの構築にも期待が高まる。
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保養施設としてスタートし30年、道の駅となって20年。施設の増設やアップデートを繰り返す「国上」は、時代のニーズとトレンドに合わせて姿を変える道の駅のあり方の代表とも言える。目前に控えた良寛史料館新築だけでなく、さらにその先の展開にも注目だ。
【グーグルマップ 道の駅SORAIRO国上】
(文・撮影 鈴木琢真)
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掲載日 :2023年12月1日
最終更新:2023年12月13日