【地域の企業を学びの場に】三条市立大学(新潟県三条市)2年生が産学連携実習の成果を発表
三条市立大学(新潟県三条市)は11月16日、同大学2年生による「産学連携実習Ⅰ」の成果発表報告会を開催した。「産学連携実習Ⅰ」は、学生が地域の企業の現場で短期間の体験学習を行うプログラム。発表はポスターセッション形式で行われ、受け入れ企業の社員たちもその様子を見守った。
三条市立大学は2021年に開校した大学。地元・燕三条を中心とした企業と連携し、実学を志向したカリキュラムが特徴。なかでも「産学連携実習」は、2年次は3社2週間、3年次には1社16週間、企業へ赴き現場を体験する。
16日夕方に行われた「産学連携実習Ⅰ」の成果発表報告会では、2年生72人が参加。それぞれが企業で経験したことをまとめ、ポスターセッション形式で構内に掲出した。授業には、受け入れ先となった106社の社員も招待。学生たちは、現場で得た新たな知見を熱を込めて語っていた。
何人かの学生に話を聞いてみた。県外出身のとある学生は、今回赴いた3社のうち包丁メーカーの株式会社タダフサ(新潟県三条市)について「大学入学前にテレビ番組で紹介されているのを観て、行ってみたいと思っていた。伝統的な鍛冶のイメージが強かったが、実際の現場を見たらスプリングハンマーなども駆使して包丁を作っていることに驚いた」と話す。
そして「日頃からアイデアをメモに記録しておくことが重要だと知ったし、3DCADを今後使うことが増えると予想されるので練習しておくべきだと思った。今回は企業の方に助けてもらうことが多かったので、来年(3年時の産学連携実習)は企業にとってプラスになることができれば」と意気込んだ。
また、北越工業株式会社(新潟県燕市)、株式会社玉川堂(同)、株式会社外山刃物(新潟県三条市)の3社で実習をした学生は、「ものを作るだけでなく、製品の価値も作り、売る技術も大切だと知った」と話す。また、地域や業界の課題についても知見を得て「後継者問題は、一つの企業だけの問題ではないと学んだ。製品は他の企業の協力があってこそ作ることができる。一つの企業の跡継ぎが居ないことは、地域全体の損失になりうる」と話した。現場や業界の空気を知ることも、同授業のメリットの一つだ。
株式会社野崎忠五郎商店(新潟県三条市)、株式会社カエリヤマ(同)、株式会社ミツワ(新潟県燕市)の3社を経験した学生は「学校でも習わないような、高度な機械や非常にニッチな製品を見て学ぶことができた」と、各社の特徴を熱く解説。そして、「(こういった物を見ることができるのは)現場へ行ってこそ」だと話した。
発表を見にきていたミツワの阿部洋平さんは、実習を「自分たちの仕事を定義づけて教えることはなかなか多くないので、我々としても自分自身の仕事を顧みる機会になったと思う」と振り返る。つづけて「学生たちは最先端の学問や知識を学んでいるが、社会人になるとどうしても、そうした新しいものを取り入れる機会は少なくなる。三条市立大学の取り組みで(そうした知見が)企業に還元されることに期待している。大学と企業で高めあう流れができれば」と今後に期待を込めた。