企画から製作、そして発信まで一手に引き受けるマーケター、(株)RISE.MD(新潟県三条市)と藤井篤代表取締役
「マーケティング」と言うと一般的に、市場の調査や広告を通じて企業の販売を促進する業務であるが、その具体的な仕事内容を挙げるとなると連想しづらく、また実際には関わる企業やマーケター自身によってマーケティング業務も細分化されている。そのため実際に「企業や新製品のPRをしたい」と担当者が考えた時、どこへ選べば良いのかは悩みがちだ。
そんな中「企画から印刷物・webサイトの製作までを一貫して請け負える」と謳うのが、新潟県三条市の株式会社RISE.MDと、藤井篤代表取締役だ。今回は、印刷業社での経験を活かして独立した藤井代表の経緯と、その理念に基づくRISE.MDの特徴について取材した。
目次
◎営業職で感じた企画力の必要性
◎ワンストップで実行可能な優位性
◎マーケティングの目線
◎BtoBへの進出
営業職で感じた企画力の必要性
藤井代表は新潟県燕市(旧・吉田町)出身。大学卒業後、専門学校の事務職員や大手電気設備メーカーなどの営業職を経て、県内印刷会社へ入社した。しかし、長い間営業の仕事を進める中で、次第に印刷業務はコスト面で優れるネット注文が優勢になり始めると、基本的に印刷業務だけを請け負う当時の会社の仕事にも限界を感じ始めたと振り返る。
藤井代表によると、大手でない地場の印刷業者にとって、企画という業務は実は苦手分野なのだという。しかし、顧客の視点から見れば企画から印刷までワンストップで進められた方が圧倒的に便利なのは明白だ。藤井代表がそのギャップに歯がゆさを感じていた時に出会ったのが、マーケティングだった。
「当時、知人の経営者からマーケティングのセミナーに誘われた。その際話を聞いたのは“CTPTマーケティング(コンセプト、ターゲット、プロセス、ツールによる顧客接近を重要視する手法)”だが、その戦略的に物事を考え、調査し、提案していく手法を見て、『求めていたのはこれだ』と感じた」(藤井代表)。
ワンストップで実行可能な優位性
セミナーを機にマーケティングを学んだ藤井代表は、2016年6月に独立し株式会社RISE.MDを設立。そして自社の強みについては営業時代の思いを反映し「企画からチラシ・webサイトの製作、そしてその後のフォローまで一貫で行えること」だと語る。
藤井代表は今年3月から、燕市のカメラマン兼web制作者の田村健太氏と共に、「良寛牛乳」で有名な株式会社良寛のPRに関わり、チラシとwebサイト製作を通して販売促進に取り組んでいる。
しかし、藤井氏はwebサイトを製作しただけでは足りないと話す。「多くのwebサイト制作会社は、サイトを作って終わり。しかしマーケティングを考えた場合、サイトは育てていかないといけない」。「育てる」とはつまり、継続的にコンテンツを更新することで「ファン」を定着させることである。藤井氏は良寛の社員のためにSNSの勉強会を開催。その場で良寛の企業Twitterアカウントを作成し、現在も発信を継続している。
また、これまで基本的に製造のみに関わっていた社員達にもチラシを知人などへの配布を依頼した。チラシには公式LINEアカウントへ誘導するQRが印刷されている。ここからクーポンの発行などを通して、生活品である牛乳を継続的に購入する足がかりを作っていく狙いだ。
「紙のチラシは少なくなっていっているとはいえ、デジタルで『バズる』ことも容易ではなく、相応の努力が必要であるということを多くの人が忘れている。デジタルの様々なコンテンツ、拡散ツールのTwitterや囲い込みツールのLINEなどへつなげる為には、人の手を渡るチラシや、実際にリアルの商品(牛乳)を飲んでもらう機会が必要」(藤井代表)。
このように、藤井代表が掲げるRISE.MDの「一貫して行える」という特徴は、PRの企画から広告やサイトの完成までではない。その先にある、継続的な発信や、市場の分析と助言によって実際に商品が売れるまでが含まれている。
マーケティングの目線
営業職から偶然セミナーに出会い、マーケティング業を始めた藤井代表。マーケティングに出会ってから、「なぜこの商品はこんなデザインなんだろう」と子供のように疑問や好奇心を考えるようになった自分の意識の変化に気がついたと話す。
「以前から、自分が子供の頃の懐かしさを感じることのできるコカ・コーラの古いグッズを集めることが趣味だった。しかしマーケティングを勉強してからは、視点が変わった。コカ・コーラの古いガラス瓶の美しい形が、昔の女性物のドレスをモチーフにしていることなど、全てに意味があるということもすごいが、何よりもその影響力に驚く。現代の『赤い服に白いヒゲのおじいさん』というサンタクロース像の統一にコカ・コーラ社と広告業界が関わっているのは有名な話だが、それこそ正にマーケティングの成功事例。あの会社には学ぶことも多い」(藤井代表)。
市場や顧客心理を分析し、どうしたら売れるのかを考え続けることこそマーケティングだと藤井代表は語る。「正直な話、“マーケティングコンサルタント”と言うと胡散臭いと思う人は多いし、実際に『大金を受け取って、大した話でもないアドバイスだけして終わり』という業者もいる。でも本来は、実際に商品が売れるまでをサポートしないといけない」。SNSサポートなど、継続的に企業を支援していくRISE.MDの特徴には、藤井代表の理念が反映されているのだ。
BtoBへの進出
RISE.MDではこれまで、基本的には小売店や飲食店、つまりBtoCの企業が相手だった。しかし今後は、製造業への関わりも増やしていきたいと藤井代表は言う。当然、BtoBが多い製造業は、小売業などと異なり取引先は流動的ではないし、完成品を買う顧客(C)へ目線を向ける一般的なマーケティングへの関心は低い。
そこで藤井代表が提案するのが、社会保険労務士と協力した人事評価制度である。また、この人事評価制度は経営者や外部の人間がマニュアルを作るものではなく、「現場の人間が自分たちへ課す評価基準」である点がユニークだ。
「例えば朝の挨拶のしかた1つにしても、自分たちで『こうした方が良い』と思う達成段階をしっかりと決めてもらう。私たちは、規則を作るときに意識すべき点や、規則の元になる会社の理念などを引き出すためアドバイスをする。人事評価は直接的には社内の給与の仕組みだが、会社の意識向上や企業理念の実現ができれば、社外からの評価にも繋がり、それがマーケティングになる」(藤井代表)。
また、人事評価という内側での関係は、会社パンフレットの改良や企業SNSでの発信など会社の外側への関わりに繋げていく足がかりにもなる。顧客が求める、ヒト(人材)・モノ(ツール)・カネ(売上)を全て引き受けることのできる体制が可能ならば、「ワンストップで任せられる」範囲はさらに広がる。
これまで見てきたような、マーケティング業者、web制作会社・印刷会社などを総合し、かつ売れるまでのアフターフォローに手厚い企業は非常に珍しい。その一貫体制にはかつて藤井代表が取引先企業で味わった歯がゆさと、本当に企業のメリットとなるサポートをし続けたいという思いが現れていた。人事評価制度など、常に次の展望を志向するRISE.MDへ今後も注目を続けたい。
【株式会社RISE.MD 会社情報】
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