【食用ほおずき栽培】新潟県上越市出身で農家の塩崎稔さん(妙高市在住) 化学農薬・化学肥料を使わない農業実践<再掲載>
掲載 2023年11月23日(最終更新 2023年11月26日)
「地球が46億年かけて創ってきたシステムを上手に使わせてもらいたい」
「自然やその循環の仕組みを知るのが好き。地球が46億年かけて創ってきたシステムを上手に使わせてもらいたい。私は微生物や緑肥、炭などを使う農業をしていて、庭で畑に撒くための微生物を育てている」と語るのは、新潟県上越市出身で農家の塩崎稔さん(妙高市在住)だ。微生物を中心とした農業を行っている人は上越地域であまりいないという。
昨年の1年間、有機農業のスクールを実施している神奈川県平塚市の農業研修先「株式会社いかす」で、講義やオンライン授業などを受け勉強。12年間、上越市三和区の実家で稲作をしていた経験があり、現在は妙高市で食用ほおずき栽培と稲作を行っている。
「元々、実家は化学肥料や化学農薬を控えた農業をしていたが、だんだんと自分の中で自然の循環に沿った農業をしてみたいという気持ちが強くなっていった。1年間、自分ひとりで小面積での有機栽培をやり、その翌年に神奈川に勉強行った。私のやっていることは、生物の多様性や活性を高めてそれぞれに活躍してもらうこと。そのための環境創りとバランス創りをしている」と語る。
食用ほおずきは今年冬から栽培を開始。面積は1,000平方mで約500株。販売先は、上越市・妙高市の農産物直売所や上越市のフルーツ店から料亭へ流れるほか、東京の市場、京都の八百屋などにも卸す。
「こんなものがあるけど、食べてみない?」
「神奈川の研修先で、友人から『こんなものがあるけど、食べてみない?』と言われて食べてみたのが、食用ほおずきで、それがきっかけだ。スイカくらいの甘さで、糖度13度になり、味はマンゴーとパイナップルを足して2で割った感じで、香りがよくトロピカルな感じだ。何よりも栄養があるのに食べやすいところがいいと思う」。
「食用ほおずきはフードで、栄養価が高い。漢方の生薬も作りたいと思っていたところで、食べ物を通じて健康になってもらいたい。食事で人生が変わるというのは大袈裟ではないと思っている。マグネシウムが不足すると鬱っぽくなるし、鉄分が不足すると疲れやすく集中力が続かなくなる。その人がしてきた食事がその人の身体と心を作るのだと思う」と塩崎さん。
食べ方はそのままフルーツとして食べるのはもちろん、ミニトマトや酢豚のパイナップルの代わり、肉料理のソースやチューハイにしても美味しい。
食用ほおずきは、美容と健康に良いといわれる成分が豊富。食用ほおずきには、ビタミンA、ビタミンC、そして女性に不足しがちなカルシウムやマグネシウムなどが豊富に含まれている。特に生活習慣病予防や脳の活性化などに良いと言われているイノシトールの含有量が多いことでも注目されている。イノシトールにはコレステロールを低下させたり、脂肪肝、がん、動脈硬化など様々な病気を予防する効果があると考えられている。
「偶然ではなく、運命」
ところで、上越市出身の塩崎さんが妙高市で農業をする理由だが、今年の冬に居酒屋2軒が臨時休業で、仕方なく3軒目に友達とたまたま入った上越妙高駅西口の居酒屋で隣になった人が渡邉能成氏(現妙高市議)だった。
「渡邉さんは『うちにトラクターも農地もあるから、うちでやってみないか。環境を生かした市にしていきたんだ』と熱く語られていた。私も非常に興味のある話だったので、初対面だったが、その場で意気投合し、現在に至る」と話す。
今年7月の妙高市議選では塩崎さんも選挙を手伝い、見事渡邉氏は上位で初当選した。しかも、条件のいい農地の話が立ち消えになり、友達と「ダメになっちゃたね。どうしようかね」と話していた時だった。塩崎さんは「偶然ではなく、運命だと思う」と当時を振り返る。
「体にいいものを作っていきたいし、自分の農法を広めていきたい。夢としては農家仲間や行政と力を合わせて循環型の農業を確立したい。そのためには育土、その主役である微生物が重要。アマゾンにテラプレタと言う不思議な土があるが、それを再現できないかと考えている。また他業種と協力し合い廃棄物などの有効利用もしていきたい」と語る妙高の若手農家の夢はでっかい。
(文・撮影 梅川康輝)