【独自】廃棄される酒粕をダイエット食品に! 新潟大学の女子学生4人が構想する「生酒粕スムージー」、商品化目指す(後編)
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「kasmoo」のイメージイラスト(OPEN-GATE提出資料より)
前回はこちら → 前編「ビジコンで最優秀賞 酒粕を使ったダイエット食品」
酒粕という「産業廃棄物」の利用
ユニークな商品である「kasmoo」だが、その出発点は日本酒の製造現場に付きまとう大きな課題にあった。
きっかけは、にゅーふぇいすの一員である荒川さんがアルバイト先の苗場酒造株式会社(新潟県津南町)で見た光景。「11月から12月にかけて、売れ残った酒粕を大幅に値下げして販売している。廃棄するぐらいだったら……という苦肉の策。それならばもっと酒粕を活かして、酒造も消費者も嬉しいことができるんじゃないか、と思った」(荒川さん)。
料理などにも使われ馴染み深い酒粕だが、実際はその多くが利用されずに廃棄されている。日本国内では、年間1,800トンもの酒粕が産業廃棄物として排出されているという。「kasmoo」は健康食品であると同時に、そうした酒造現場の課題解決も目指す。
とは言え、商品の内容が固まるまでは試行錯誤があった。当初は、酒粕を使ったゼリーやチョコレートなども構想したという。しかし、熱を入れる必要があるため、栄養豊富な生酒粕のメリットが消えてしまう。「4人集まれないことも多く、夜遅くまでリモートで繋いで意見を出し合って、スムージーに決まった。スムージーであれば(一食で)満足感も得られるし、現在はスムージーの置き換えダイエットも流行っている」。「自分たちも欲しい商品」だからこそ、注いだ情熱やこだわりも大きい。
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新潟大学経済科学部の伊藤龍史准教授は「Open Gate NIIGATA」での「にゅーふぇいす」の発表を振り返り、「ほかの商品との差別化や独自性、終始・採算の目処、そして『自分たちがやる意義』などの点を含め、総合的に良くできていたと考えられる」と話す
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大学内での活動の様子
酒粕については苗場酒造と提携するが、そのほかの食材や製造、販売小売店などについては現在パートナーを探している途中だ。今後、各材料についての知識も深めて「卒業までに商品化へ漕ぎ着けたい」と4人は意気込む。
商品化後はまず、スーパーマーケットなどでの販売を想定。そこからスムージーの需要が高い地域への進出も目指す。夢は大きく、海外展開だ。「アメリカはスムージーをよく飲み、また日本酒の輸出先としても第3位(2022年調査)。生酒粕はアルコール分が含まれているので、健康的なお酒としても展開したい」。
自分たちも消費者だからこそ生まれた発想と情熱。「生酒粕を文化に」と語る彼女たちは楽しげだ。商品化までの道のりに、これからも注目していきたい。
(文・鈴木琢真、撮影・中林憲司)
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