コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.24 シーズン総括会見 「誰かのために」
2023年12月7日、聖籠町にあるアルビレックス新潟のクラブハウスで2023年の総括会見が行われた。冒頭約10分間は、池澤波空テクニカルコーチが編集した映像を見つつ、今季の新潟のデータ解説。序盤を終えての課題、終盤に向けての改良点がどんなところにあったのかが実に分かりやすく、解説していた映像が終わり、松橋力蔵監督への質疑に移った。
「今季の結果を僕は非常にポジティブに捉えています。ただ本当に足りないところはつきないので、それとどう向き合っていくかというところは常にそばに置きながらやっていく必要がある。いい部分、伸ばせる部分というのはまだまだあるので、しっかりとそこを突き詰めていきたい」
「結果に現れ始めたときの選手の行動や姿勢を見ると、試合を重ねるごとにみんなが自信を持つようになっていった。トライできるようになってきている部分も増えたし、終盤戦に近づくにつれ、堂々とした雰囲気すら漂うようになった」
「最終戦の得点シーンが一番分かりやすい。相手は前線からプレッシャーにくる。われわれはゴールキーパーをうまく使って何度でもやり直します。それによって相手はどんどん人数をかけてきます。でも、その矢印をパッと折ったときの景色は3対2の状況になっていて……。でもサッカーのセオリーとしてこれは絶対ダメ、危険なんです。しかし、そこでできる有効なスペースや時間、人をうまく使って、あれ(最終戦の得点)は確かにカウンター的なのですが、僕は全然カウンターを思っていない。ああいう形で崩して行って最後に得たインシアチブ、ポジティブな部分、アドバンテージというのをどうやって得点に結びつけるかという部分が成長」
約1時間にわたり、さまざまな質問が飛び交った。
もちろん、僕も松橋監督に今季最後の質問をした。
「選手の後ろ姿を見て、自信を感じると見えるようになったのはいつから?」
「僕もコーチとして長いので、選手と目の前で向き合うっていうよりも後ろから見つめることの方が結構ある。そういうふうに見る自分というのは、コーチになって早い時期、育成にときからありました」
「J1の舞台での指揮。アカデミーやJ2で指揮をとるのと違いはありますか?」
「よく聞かれる質問の一つでもあるのですが、強がるわけでも当時を忘れているわけでもなく、自分の中では大きな違いというものを特に感じていることはありません」
「監督の考える『監督業の醍醐味』は?」
「選手が生き生きとしてくれるのも当然ですが、周りの人たちもうれしそうな顔をしてくれるとやはりうれしいですね。この仕事をやっていて、やはりそこは、スタジアムに行ったときにあそこの場に立ったとき、ホーム・アウェイに関わらず、あれだけの方々がきてくれるのは本当にすごいこと。もちろん、過去にはもっとすごかったという歴史があるとは思いますが、われわれが勝つことによって、(応援に駆けつけてくれた)この方々が本当に喜んでいただける、笑顔で帰っていただける。なんかそういったところはうれしく思います。今シーズン、いくつかお手紙をいただきました。そこに書かれている文面を読むだけでも、われわれはこういった方々の、本当にちょっとかもしれないけれど支えになっているんだな。そういうことを、そういう仕事を僕はやっているんだ。そういうチームの監督をさせていただいているんだ。すごく責任と同時に誇りも感じますし、もっともっといろいろなことをやっていかないといけないと思います。誰かのため、本当に人のために何かできているんだな。サポーターに限らず、選手、スタッフ、クラブスタッフ……そういう人たちのために何かができているのであれば、すごくうれしいなというふうに考えています」
実に松橋監督らしい返答だと思った。
練習取材時、グラウンドのすぐ横に立つ番記者たちのところに駆けてきて「おはようございます」と毎度あいさつしてくれた。
現場を和ませるような冗談を突然話し、場を和ませてくれた。
夏場の暑い日には「倒れないように注意してくださいね」と声をかけてくれたこともあった。
実に気配りの人。
来季もチームの指揮をとる松橋監督が「新潟のために」どこまでスタイルを進化させるのか。
来季が早くも楽しみだ。