【オタクの聖地】「オタクよ、一回顔を出せ!」 アニメ居酒屋 CONNECT オーナー兼店長 笠原大輔さん(新潟県長岡市)
新潟県長岡市の宮内エリア。有名飲食店が軒を並べる長岡市内屈指の激戦区である。そこに、「アニメ居酒屋 CONNECT(コネクト)」がある。店内に入ると、大人気アニメのフィギュア、ぬいぐるみ、グッズなどが店内一面に拡がっている。かなり個性的な雰囲気の店舗だ。休日になると、新潟県内各地から集まったイベント帰りのコスプレイヤー達の姿で賑わう。
店のオーナー兼店長をしているのが、笠原大輔さん(33歳)である。
笠原さんは、新潟県長岡市の出身。中越高校卒業後、美容師を目指して、新潟市にある国際ビューティーモード専門学校へ進学。夜は居酒屋でアルバイトをしながら、美容師の資格取得に向けて勉学に励んだ。
卒業後は、念願の美容師に就職するも、学生時代にアルバイトで経験した雰囲気が楽しくて、飲食業界に転職。長岡市内を中心に世界展開しているラーメン屋に再就職した。
10年間在籍し、店長にも昇りつめたが、「毎日毎日同じことの繰り返しで、楽しくない」と退職。「もっと、お客さんと会話などのコミュニケーションを楽しみながら仕事をしたい」と考え、自ら居酒屋を始めた。
2020年3月のことである。店名の「CONNECT」は、日本語で「繋がり」や「繋げる」という意味を表す英語。店を通じて、様々な人が繋がり合うようにと、願いを込めた。
店舗を構えるにあたって、子どもの頃から大好きだったアニメをコンセプトに据え、個性的な内装にこだわった。
これまでも確かに、新潟県内でアニメをコンセプトにした店舗はあった。けれども、店主が店内に飾ってあるグッズの説明ができない店があるなど、笠原さんにとっては不満を感じることもあったという。
そのような経験から、同店舗のグッズは全て笠原さんがセレクトしたものばかり。毎日好きなものに囲まれて、好きな仕事をしている。
「オタクの居場所を作りたかった」と笠原さんはいう。最近になってこそ、ようやくオタク文化が世間に浸透され始めてきたとはいえ、笠原さんの開業当時は、まだまだ「オタクは迫害対象」だった。
学生時代、自らのアニメ好きも、限られた周りの友人たちにしか共有できず、隠してきたという。
笠原さんが、アニメのコンセプトに拘り続ける理由はそこにある。「一般のお客さんが入れないような、オタクだけの居場所にしたかった」と笠原さんは語る。
ところが、実際に開業してみると、笠原さんの思惑と事情が違った。店舗を利用するのは、アニメ好きの客は意外と2割。残り8割は、アニメに関心の薄い一般客だったという。店内に一度入って驚かれるも、そのまま常連になってくれた客もいたという。
開業時はちょうど感染症が流行した直後だったため、最初の1年間は何の補償もない状態での店舗の経営。それなりに大変だったが、それでも無客の日は、一日たりともなかったからここまでやってこれたという。
2023年6月頃から、長岡市内の様々なコスプレイベントにも顔を出すようになった。その結果、イベント先で知り合ったコスプレイヤーの人々が、客として足を運ぶようになった。今では、週末の夜はコスプレイヤーの姿で賑わう様になったという。
「最終的には、長岡市を舞台にしたアニメを作りたい!」と、大きな夢を語る笠原さんは、「オタクよ、一回顔を出せ! 隠れてないで出てこい!」と、まだ見ぬオタクたちに呼びかける。
従来の飲食文化だけではない。近年は、摂田屋にある醸造の街並みなど、観光開発が進められている長岡市の宮内地区。将来的には、アニメ好きのコスプレイヤー、オタクたちの“聖地”ともなり得る、そんな大きな可能性を秘めた街に化けそうだ。
(記事・撮影 湯本泰隆)