【ビズテイル#6】―リーダーの光と影― 新しい大学をつくるために全国を飛び回った男、開志専門職大学(新潟市中央区)権瓶拓也事務局長(後編)
前回はこちら→ 前編「「教育は人を変えることができる」──教師を目指した学生時代」
専門職大学、前例のない大学をつくる難しさ
──文科省から新しい大学の認可を得るには、相当な難しさがあると思います。
専門職大学の設置基準の法案成立が2017年5月で、当法人は2018年10月に開志専門職大学の申請をしました。当時は開学している専門職大学が無いので、どのように法律を解釈してカリキュラムを組み立てるか、文章だけでは解釈しきれません。なので、文科省の方々とのコミュニケーショが大事になっていきます。文科省とのやり取りを繰り返しながら、申請準備がしっかりと進んでいることを確認することが重要でした。
新しい大学なので、審査も厳しく見られます。申請をした後にも色々なご意見いただき、それに対応していきます。文科省から意見伝達が来て、1カ月後には書類をまとめて提出しなければいけない状況です。検討して、改善して、再度書類提出。逆算スケジュールを徹底しないといけませんでした。
限られた時間で対応しなければならず、同じ志を持つ準備室のチームが居なければ、乗り越えることはできませんでした。誰一人として諦めませんでした。それは、この新しい大学の教育内容によって、必ず新潟から日本と世界を変える人材が生まれていくと思っていたからです。
また、認可を受ける前から近隣のホテルなどで大学説明会を実施していました。本学が行おうとしている「実践的な教育」に期待を持って来てくれる受験生もいて、その期待を裏切るわけにはいきません。
──認可を受けた当時は、どのような状況でしたか?
大学設置認可の発表時期に、準備室へ文科省から電話がくることとなっていました。当時は現校舎が工事中であったため、すぐ横に準備室としてプレハブがありました。2019年10月の末、可否の電話が来るタイミングは分かりませんでしたが、その当日は「そろそろ来るのではないか……」と予感がありました。
そして電話が来て認可の連絡を受けた瞬間、その場に居た全員が立ち上がって喜びあいました。
感染症禍の中での開学
──認可を受けて、2020年の4月に開学したわけですが、当時はCOVID-19(新型コロナウイルス)の出始めでした。
まさか思ってもいませんでしたね。非常に厳しい審査を通って、認可を貰ったのに……。
県外への移動が制限されていたので、東京に居た先生方がすぐに着任できませんでした。しかし、すぐにオンライン授業へ切り替えるためのプロジェクトチームを編成して、教員と職員で協力し、ゴールデンウィーク明けにオンライン授業を開始しました。ただ、当時は1期生のみで校舎が広く使えたので、分散することも踏まえて6月下旬からは対面授業に切り替えていきました。
──実習先の企業も混乱していて、それどころではない状況ですね。
開学1年目の実習は基本的にオンラインで行いました。実習先の企業様には本当にご理解をいただきながら協力していただきました。我々は産業界と一緒に運営をしていく大学なので、その連携がなければ成り立ちません。
開志専門職大学のこれまでと、これから
──開学までを振り返ってみていかがですか?
困難の連続があった中で、本学に期待を持っている先生方であったり、何回も説明会に来ていただいている生徒とその親御さんたち……。本学へ期待している方々へ応えたい、という思いでチーム一丸となり、認可を勝ち取り、開学へ向けて準備を進め、その後の学生募集に繋がっていったと思います。(その当時は)もう心配で寝られませんでしたね。
最近、とある学生(1期生)と面談しました。その学生は元々、別の大学を第一志望としていましたが、本学のポスターを見て志望を変え、その時は親からも「新しい大学だから」と反対されたそうです。しかし、その学生は第1志望の大手企業に就職が決まり、「開志専門職大学に来なければ企業内実習の貴重な経験ができなかったので、この大学に入ってよかった」と言ってくれました。その言葉を聞いた時は、ものすごく嬉しかったですね。
──2024年に最初の卒業生を輩出します。開志専門職大学の現在と、今後について教えてください。
間違いなく、起業という道も含めて就職に強い大学です。事業創造学部、情報学部1期生の就職率は95%を超え(2023年12月25日現在)内々定先は、東証プライム市場上場企業22社、県内従業員100人以上の企業32社に至っています。また、学生起業は6組、さらに、事業創造学部の1期生で先日、慶應義塾大学大学院(政策・メディア研究科)に進学が決まった学生もおります。
学生たちは実践力を備えた上で社会へ旅立っていくので、(ほかの)新入社員の中でも実力を持っています。これから、より多くの卒業生が力を発揮していくと思います。その時に、「この大学にはいっていよかった」と思っていただければと強く願っています。
また、こうした大学を求め、入学を希望する方々が増えていってもらえれば。それをもってして、開志専門職大学が新潟、日本にある意味が、年を追うごとに根づいていけばと思っています。
(聞き手・中林憲司、鈴木琢真)
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