【特集】完全オフライン対応の生成AI「Chimaki」誕生、リスク抑えたAIで地方DX促す、K-walk(新潟県加茂市)波塚飛鳥さん<前編>
上半期の記事をピックアップし、お盆期間に再掲載します(編集部)
初掲載:2024年2月8日
アプリ開発などを手掛ける株式会社K-walk(新潟県加茂市)が2023年10月、完全オフライン対応の生成AI「Chimaki(チマキ)」を発表した。インターネットに接続せずに使える点で、既存の生成AIサービスにつきまとう情報漏洩リスクや従量課金コストの課題を克服。11月からは地元の加茂役所や商工会議所、12月からは新潟大学で試験的に導入を開始している。
開発者は同社取締役・CDO(Chief Digital Officer)の波塚飛鳥さん。人手不足が深刻化する地元・加茂市を拠点に活動する、28歳の若きエンジニアが語る地方DXとは。
目次
<前編>
○セキュアな現場でも使える生成AI
○あらゆる職場に潜むITリスク──「最前線」とは異なる視点のAI
<後編>
○大学院を経てアプリケーションの開発者へ
○地方のデジタルリテラシー向上を
セキュアな現場でも使える生成AI
「Chimaki」はオープンソースの言語モデルを元に開発した文章生成AIサービス。文章を制作する「AIチャット」、事前に読み込ませたデータを元に質問に答える「AIアシスタント」、AIによる要約などを実行せずデータの検索に特化させた「サーチ」の3つのモードを搭載する。
最大の特徴は完全オフラインで運用している点。入力データの収集を行わないため、自治体や金融機関などセキュアな環境が必要とされる職場においても導入できるようになった。一方で、職場ごとにデータをインポートすることも可能。例えば、社内規定や業務マニュアルなどを読み込ませることで、「AIアシスタント」モードの回答を会社ごとにカスタマイズすることができる。この機能についても、オフラインであり情報流出のリスクが無い点が活きる。
もう一点特筆すべきが、「AIアシスタント」の回答に情報源も明示させていることだ。文章生成AIの課題の一つとして、AIがでたらめな回答を述べるハルシネーション(幻覚)リスクがある。「Chimaki」では回答で参照したデータを提示することで、その真否を確認しやすくした。また、「サーチ」モードでは文章生成を行わずデータの検索のみを実施。これにより、専門用語や会社独自の用語をAIが曲解し誤った文章を作り出すリスクを回避する。加えて、負荷が小さいため高速で動作するというメリットもある。
なお、利用料金については定額制を採用。既存サービスの多くは利用量に応じて請求が増える従量課金制を採る点が導入の障壁となっていることを鑑みた。
あらゆる職場に潜むITリスク──「最前線」とは異なる視点のAI
「自治体や金融機関に限らず、あらゆる職場で社員のITへの理解度が均一化されているとは限らない」──「Chimaki」の開発者である波塚さんはインタビューの中でそう口にした。生成AIが急速に普及しつつある現在は尚のこと、ITへのリテラシーの低さが大きなリスクとなる。
特に、専門の担当者を雇えない中小・零細企業や、高齢者が経営する商店。そして、それらの割合の高い地方においてはさらに問題が深刻化する。また、彼ら自身がITやAIへの不安を理由に技術を取り込まないことで、業務の効率化が阻まれている現状もある。
こうした現状に即して開発されたのが「Chimaki」だ。日進月歩で高性能化が進む生成AI界隈だが、そうした「最前線」とは異なる視点がそこにはある。
続きはこちら→ 後編「大学院を経てアプリケーションの開発者へ」
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株式会社K-walk
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