【社会課題】「チャンスの神様 後ろはハゲ」 山口達也さんが三条市で講演 青少年の更生保護に取り組む三条地区BBS会が尽力
新潟県三条市にある三条市総合福祉センター多目的ホールでは1月14日、元TOKIOのメンバーで、「依存症全般」に対する講演活動を行っている山口達也さん(52歳)を講師に迎え、講演が行われた。
主催は、三条地区BBS会(結城靖博代表)である。同BBS会は、非行や、さまざま課題を抱える少年少女の社会復帰、立ち直りや自立を支援する更生保護ボランティア団体。現在、14人のメンバーで活動を支える。
これまでも、定期的に例会を開き、更生保護について学んできたが、この度、広く市民に更生保護についての理解を深めてもらおうと初めて公開例会に踏み切った。三条市や地元企業からも多くの後援や協賛を得ている。
講師を務めた山口さんは、1988年にジャニーズ事務所に入所。1994年にアイドルグループTOKIOメンバーとして「LOVE YOU ONLY」でメジャーデビュー。CDデビューから2か月後には日本武道館でコンサートを行うなど、音楽活動を精力的に行うほか、ドラマやバラエティ番組などにも出演したが、アルコール依存症による酒気帯び運転や、未成年者への強制わいせつ事件などを起こし、2018年にジャニーズを退所した。
2022年には、飲酒運転防止インストラクター資格、メンタル心理カウンセラー資格、依存症予防教育アドバイザー資格を取得。昨年2023年に「株式会社山口達也」を設立し、自身の経験を生かしたアルコール依存症や、依存症全般に対する講演活動、企業向けの危機管理セミナーを行っている。
来場者は事前に400人を募ったが、申し込みの受付開始から初日の午前中に満員状態。人々の関心の高さが伺われた。三条市内から、会社の同僚と妻と一緒に参加した男性42歳は「BBS会に知り合いがいて誘われた。自分がギャンブル好きなので、のめり込みすぎないように話を聞こうと思った」という。
同じく三条市内から参加した40代女性は、親戚にアルコール依存症の人がいる。何かの参考になれば、と思い話を聞きに来た」と切実に語る。
また、当日参加した人々の中には、三条市以外からの参加も多くあった。加茂市から、元妻と参加した48歳男性は、「自分もかつてアルコール依存症で、昨年まで入院していた。山口さんが講演をすると聞いて話を聞いてみようと思った」という。
例会の冒頭では、来賓として招かれた滝沢亮三条市長(38歳)が登壇。近年では、インターネットやSNSの普及に伴い、失敗した人を叩く風潮があることを指摘。
そういった社会の傾向は、社会復帰への道を閉ざしているとし、三条市として寛容な街づくりを行いたいと意気込みを述べた。
山口さんは、講演の冒頭、「アルコール依存症は一生治らない病気。(アルコールを摂取することで)自分が死ぬかもしれないし、人を殺してしまうかもしれない」と述べ、「自身が安全にお酒を飲むことのできない体になってしまった」と語った。
特に、自身がアルコール依存症に至るまでの経緯や、その原因について述べ、「アルコール依存症は、いわゆるコントロール障害。酒が我慢できない」ということや、酒を飲むうえで、ある時期から、自身の飲酒の仕方が変化したことを触れ、「楽しむために飲んでいたお酒が、一人で飲むようになってった」「今思えば、飲み方が変わったときに、心が壊れ始めていた」と、自身の経験を振り返る。
さらに、「お酒を飲んで、問題を起す人たちは、アルコール依存症だからではない。心に問題があるから、問題を起す」ことを指摘。特に、近年問題となっている東横で徘徊する未成年の問題などにも触れ、「問題を起した人、苦しんでいる人を排除しているだけでは、何にもならない。個人個人の心に向き合わなければならない」と力強く語った。
そして、「道を踏み外した子どもたちを構成させようとしても、自分の思い通りにならない。自分でできるのは7割8割。残り2割3割は子どもたちが自分たち自身で気づかなければならない。そういう気持ちで、社会復帰を手伝っていただきたい」と、呼びかけた。
講演を聞いて、西蒲区から参加した参加した高橋剛文(たかあき)さん(30代)は、「自分が不安になったときに周りに助けて下さる方がいるということに改めて気がついた」と感想を語った。
また、最後まで話を聞いていた滝沢市長は、「多くの市民の皆様の関心が多くて良かった。自分の経験の話から、若者の社会復帰までつなげて話題にしていただき、さすがだと思った。非常に意義のある会だった」とした。
今回の例会を企画した同BBS会の結城靖博代表(39歳)によれば、「当初は、更生保護芸人なども検討していたが、Twitterで山口さんが講演活動を始めたという記事をみて、ダイレクトメッセージで直接連絡を取り、今回の講演に繋がった」という。「これだけの多くの人が集まって嬉しく思った」と感想を述べた。
(文・撮影 湯本泰隆)