【国民生活センターが警鐘】成年年齢引き下げ後、18~19歳が契約トラブルのターゲットにされている
契約当事者責任の発生
民法改正により、2022年4月から我が国の成年年齢が、以前の20歳から18歳に引き下げられたことはご存じの通り。シルバー民主主義に歯止めをかけようと、公職選挙法改正により選挙権年齢が引き下げられたことがきっかけとなり、若い世代の積極的な社会参加が望まれた形といえる。もとよりOECD加盟国35カ国でも成年年齢を18歳に定める国が32カ国と圧倒的で、若者の自己決定権尊重については日本が世界的な流れに遅れをとっていたという見方にもなる。
日本で成年年齢が引き下げられてから、今春で2年が経とうとしているが、これによって引き起こされた深刻な社会問題がある。
成年年齢が引き下げられたため、これまで親の承諾なしではかなわなかった物販やサービスの契約が、18~19歳の段階で可能になった。これにより、社会経験の乏しさと知識不足を提供者側が狡猾利用して引き起こされる消費者トラブル件数に変化が見られるのだ。
国民生活センターの調べによると、契約当事者が18~19歳だった場合の消費者トラブル相談件数は、2019年10,449件、2020年11,387件、から2021年が8,536件と減少傾向にあった。しかし改正民法施行後の2022年度はまた9,907件に増えている。
事例としては、
「脱毛エステの広告をSNSで見て、数百円でできる体験コースに応募したが、『今ならお得なコースでサービスを受けられる』『分割払いもできる』と言われてうっかり契約したが、毎月の支払いも大変なので解約したい」(男子 学生)
「スマホで『短時間に簡単に稼げる』という広告を見つけ登録だけしたが、後日事業者から連絡があり『仕事をするにはサポート契約を受けなければならない』と言われ、受け取った電子テキストには数万円~数百万円のサポートメニューが記載されていた。支払えないので断ったら、電子テキスト代2万円を請求された」(女子 学生)
などが挙げられているが、もちろん氷山の一角であり、普段はそれなりに社会経験のある大人を相手にしている悪徳業者にしてみれば、文字通り赤子の手をひねる様なものであることがわかる。
成年になっておとずれる大きな変化というのは、クレジットカードをつくったり分割払いの契約を親の承諾なしでできる点。借金も親の承諾なしでできる。以前はたとえ契約しても「親の承諾なしで交わされた契約なので」という理由を盾に無効にすることもできたが、今は成年年齢が引き下がったことにより、頭の中は子供のままに当事者能力が発生してしまっている。割賦が自分の決済で可能になったため、1件あたりの被害の額が大幅に増えてもいる。
相談件数のランキングを見ると、その内訳にも変化が見られる。2021年度は「商品一般」「出会い系サイト・アプリ」「他の健康食品」などが上位を占めていたが、2022年度は「脱毛エステ」がこれらをごぼう抜きし、1,222件で一躍トップとなった。「脱毛エステ」は2021年度の相談件数が203件で全体の10位だから、いかにこの分野が18~19歳をターゲットにしたかがわかる。インターネットを見ていると「脱毛エステ」の広告は溢れており、いやでも目に飛び込んでくる。トラブルの中身も多岐にわたり「体験で行ったがしつこく勧誘されて契約してしまった」「契約したサロンが倒産したが、請求が続いている」など。
特に最後の例「サロンが倒産したのに信販契約が続いている」に関しては、新潟県でも多くのトラブル被害が報告されており、まさに現在進行中の問題。
にいがた経済新聞でも脱毛エステのPR記事を掲載しているが、上記のような質の悪い業者が多いせいで一緒くたにされないよう、弊社のスタッフが自費で体験取材し、良くも悪くも真実を報道している。
他で順位が前年より上がっているのは「他の内職・副業」(8位→4位)「役務・その他サービス」(12位→8位)など。こうして見るとトラブルのもとになっている18~19歳の欲求の源は「美(び)」と「金(かね)」だということがわかる。一方で、以前は「若年層の消費者トラブル」の代表的存在だった「アダルト情報」などは件数も減少傾向にある。
トラブルにあったら188(イヤヤ)
国民生活センターでは、18~19歳の消費者トラブルを防止するために、以下の点について注意を促している。
①「安さ」や「気軽さ」「メリット」をことさら強調した内容に注意
「美(び)」に関するトラブルでは「お試し価格」「無料体験」「モニター」、「金(かね)」に関す るトラブルでは「短時間で簡単に稼げる」「放置したままで報酬」「スタンプを送るだけで稼げる」などの文言をうのみにしないこと。
②契約をせかす勧誘や借金を促す勧誘に注意
「美(び)」に関するトラブルでは「今だけ」「今日契約したらこの価格」「学割がきくから今し かない」などのセールストークが、「金(かね)」に関するトラブルでは「すぐに元を取ることが できる」「稼いだ分で後から支払えばよい」などと言われ、契約をせかされるケースがみられる。借金や割賦を促されることも多い。
③契約はその後のことを考えて慎重に検討、不安があれば周りに相談を
契約前に、契約期間や支払総額、解約条件など をしっかり確認し、納得したうえで契約を。
第三者の意見を聞くな どして、慎重に判断すべし。「親に相談したら反対される」「自分で判断すべき」こんなセールストークが業者側から出たら、怪しむべし。
④契約後、クーリング・オフや契約の取消しができる場合がある
特定商取引法の訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定 継続的役務提供(エステティックや美容医療等)・業務提供誘引販売取引(内職商法やモニター商法等)に該当する契約は、書面またはメール等によりクーリング・オフ(無条件での契約解除)ができる場合がある。また消費者契約法では、「うそを言われた」「帰りたいと告げたのに帰してくれなかった」といった場合に契約を取り消すことができる。なお、2023年6月1日以降に契約した場合は、「親に相談したい」などと申し出たにもかかわらず相談を妨害して 勧誘をされた場合にも、契約を取り消すことができる場合がある。
⑤トラブルにあったら、早めに消費生活センター等に相談する
こちらはむしろ「親が代わりに解約できるか」といった親からの相談が目立つようだが、解約する場合には契約当事者本人から申し出る必要がある。
※消費者ホットライン「188(いやや!)」番
最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号
本記事は全国的な事例を紹介したが、新潟県でも当然この手の消費者トラブルは増えており、新潟県総務部県民生活課でも昨年来警鐘を鳴らしている。
同課消費くらしの安全推進班・消費者行政推進担当者は「未成年者(17歳まで)の契約は、民法の「未成年者取消権」により、保護者の同意がない場合取り消すことが可能ですが、18歳になり成人すると、保護者の同意がなかったとしても取り消すことができなくなります。商品の購入やサービスの契約はくれぐれも慎重にするようにしましょう。また、少しでもあやしいなと思ったら一人で抱え込まず、周囲の人や消費生活センター等の消費生活相談窓口に相談してください」と注意を呼びかけている。
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