【特集】外国人技能実習生受け入れサポートのケア・アジャスト協同組合(新潟市中央区)西巻政廣代表に聞く ― 共生し企業の未来を切り拓くヒント ―<再掲載>
直近の特集記事を日曜日に再掲載します(編集部)。
初回掲載:2024年2月9日
少子高齢化、都市部への人口流出など、新潟を含む地方企業は深刻な人手不足に直面している。企業は求人活動に力を入れるも、限られた人材の奪い合いとなり、投じたコストに見合う成果が得られない現状に多くの経営者が悩む・・・。
このような背景の中、外国人技能実習生の受け入れが重要な選択肢となっている。
新潟を中心に外国人技能実習生の受入れをサポートするケア・アジャスト協同組合(新潟市中央区)の西巻政廣代表理事に、外国人技能実習生の受け入れにおける実態や現状、そして直面している課題について聞いた。
ベトナム人を中心とした外国人技能実習生受入れをサポートするケア・アジャスト
新潟市中央区に本部を置くケア・アジャスト協同組合は、外国人の技能実習および特定技能といった在留資格を扱い、外国人材の紹介やサポートを行う監理団体だ。2016年の事業開始以来、約60社の企業に200人程度の外国人実習生の受け入れを支援している。
外国人技能実習生が就く業種は、建設、製造、農業、介護、食品、清掃などと様々だ。特に建設業界では人手不足が顕著で、多くの実習生を受け入れている実績があるという。
実習生の出身国としては、ベトナムが最も多い。その理由は、多くの日系企業がベトナムに多く進出していることや、2017年の技能実習生制度の拡充が挙げられる。
西巻代表は、「私自身も以前に責任者を務めていた職場でベトナム人留学生との親交があり、ベトナム人は優秀で大きな戦力になってくれる印象を持っていた」と振り返る。
「当時の留学生が私たちの監理団体を手伝ってくれている。ベトナム人の実習生を支える体制ができているため、実習生の受け入れはベトナム人が多い」(西巻代表)。
外国人実習生受入れの実態、企業側のメリット
実習生が日本に来る目的は、主にお金を稼ぐこと。多くの実習生は、1年目で来日のための借金を返済し、2年目以降で貯金をして故郷に家を購入することを目指すという。
ただし、実習生にとって円安の影響は少なくない。以前は、1円=200ドンくらいだったが、今は1円=160〜170ドン程度。収入面のメリットが目減りしている現実はあるが、それでも現状の物価差はまだ魅力のようだ。
また、日本のアニメ文化などに憧れを持つ実習生もいて、日本を選ぶ理由の一つになっているという。
西巻代表は、「来日したばかりの外国人技能実習生は日本語が話せないが、半年くらい経てば不思議とある程度のコミュニケーションが取れるようになってくる」と話す。
一方で、企業と実習生との間で給料や生活環境についての条件闘争がある場合もある。「その際は実習生側と企業側と双方の意見を聞く体制をとり、共に着地点を探すようにしている」と西巻代表は話す。
また、企業側のメリットについて西巻代表は、「変化が生まれる事」と主張する。
「職場に活気が生まれたという声を企業側からよく聞く。例えば人手不足に悩む土建の現場は、平均年齢が60代。そこに20〜30代と若者の実習生が加わることによって、活気が得られる」
さらに、「職場の雰囲気になじむことができた実習生は、在留資格を失うまいとひたむきに仕事に打ち込む。そのひたむきな姿勢が受け入れ企業の職場環境に好影響を与えている」と、西巻代表。
また、実習生と企業が良い関係を築けば、実習生が特定技能実習生として企業に戻ってくることも可能で、これが企業の発展に繋がるケースがあるのだ。
共生して創る企業の未来
受け入れを検討する企業として気になるのは、仕事面だけではなく、生活面も含めたコミュニケーションの問題だろう。
ケア・アジャスト協同組合では、実習生と企業間のコミュニケーション支援にも力をいれている。特に日本語が話せない実習生に対する語学研修や、労働条件などでのトラブル時には、ベトナム人スタッフが通訳としてサポートを提供している。
そして、西巻代表が最も重要視しているのは、「共生」という考え方である。
「実習生を安い賃金で利用するような企業ではいけない。これからは共生の時代だ。実習生を育てようとする企業と付き合っていくことが最も大切」(西巻代表)
実習生とのコミュニケーションがうまくいかない場合でも、企業が長い目で実習生を育てる姿勢を持つことの重要性を強調する。
また、実習生が日本に来る前の教育を提供する「送出し機関」の重要性も指摘する。教育力を持ち、信頼ができる送出し機関と強固な連携をとっている点は、ケア・アジャストの強みの一つだ。
技能実習生の制度をめぐっては、今の制度を廃止し、新たな制度の検討が進められている。研修生の人権が尊重されることを目的としており、今まではできなかった実習生の転職(転籍)も可能になるとみられる。
予定されている新制度は、受け入れる企業側にとっては厳しい側面があることは否めない。
西巻代表は、「実習生たちを大切にしないような企業からは、やがて実習生はいなくなってしまうでしょう。今後も私たちは、長い目で見て実習生を育てることのできる企業とお付き合いしていきたい。とはいえ、受け入れたことがない企業は不安に思う点も多いはず。ぜひ一度相談して欲しい」と話した。
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外国人技能実習生制度が始まってから30年あまりが経ち、実習生を取り巻く環境は変化している。そんな中、実習生を育てようとする姿勢や信頼のおける送出し機関と連携することなど、西巻氏の実習生への温かい眼差しは印象的であった。
新たな制度への転換が進む今後も、「共生」を大切にするケア・アジャストの発展に注目していきたい。
(インタビュー・文 竹内ありす)
【関連サイト】
ケア・アジャスト協同組合(ホームページ)