【独占直撃】自民党高鳥修一の県連会長辞任会見で、新聞が書かなかった「安倍派になにが起こったか」<前編>(再掲載)

自民党安倍派を退会した高鳥修一衆院議員

注目記事を再掲載します

初回掲載:2024年2月21日

 

「不祥事煽り」に終始するマスコミ

自民党・高鳥修一衆議院議員が2月7日、同党新潟県連会長を辞任し、所属した安倍派(清和政策研究会)を「退会」する記者会見を開いた。

高鳥氏は、自民党安部派のいわゆる「裏金問題」(派閥パーティーのチケット販売ノルマ超過分から各事務所に現金で還流させ、還付分を収支報告書に記載しなかった問題)で、自身も所属する安倍派のパーティー券収入から5年間で還付金544万円を事務所として受けており、かつ247万円を収支報告書に記載していなかったことを認め、「記載すべきものを記載していなかった監督責任は私にあり、道義的責任を取る」として、けじめをつける意味で県連会長の職を辞したという。同時に安倍派の退会も表明した。

辞任会見で謝罪、マスコミ各社はこの1枚が欲しかった

マスコミ各位はこぞってこの会見を取り上げ、高鳥氏の謝罪の様子を掲載した。その多くはこの事実を「不祥事」としてあげつらい、某紙には「自民党県連会長二代続けて不祥事で辞任」などと報じた。

まず「不祥事」なのかという点についてだが、安倍派では1月19日に緊急総会が開かれ、その冒頭で塩谷立座長が「裏金問題は会長と事務局長しか実態を把握しておらず、(還付を受けた議員とその事務所関係者には)長年にわたるミスリードをしてきた」と認め、謝罪している経緯が黙殺されていまいか。

もちろん、高鳥氏を指して「気の毒だ」と言う論調はなしだが、自民党裏金問題について還付分不記載の90人の議員は決して一緒くたではなく、①「(キックバック制度を)知っていて悪用し、数千万円の使い込みをした議員」②「極めてグレーゾーンな議員」③「派閥の会計責任者に<記載しないように>と含まれミスリードされていた議員」の3つに分類される。そのうち①は逮捕または起訴され、②は検察の取り調べを受けたがグレーはグレーのまま、③は全ての帳票などを提出した上で「取り調べの必要なし」とされた。高鳥氏は明らかに③の口である。

にもかかわらず、記者会見では某紙の記者から「議員辞職という選択肢はなかったのか」という質問まで飛んでいた。夕方のニュース番組では明らかに会見前に収録した既成の「市民の声」が放映され「政治家は嘘つきばっかり」「どんな気持ちで受け取ったのか」などと厳しい声が飛んでいたが、果たしてこの手のステレオタイプな演出は必要だろうか。

むしろ着目したいのは、現職自民党代議士が実名をさらして、裏金問題の責任を取ろうとしない安倍派幹部の姿勢を批判したのが、公には初めてだという部分。

2月15日には党内聞き取り調査の結果が発表され、回答は全て匿名だったが「安倍派幹部は責任の所在をはっきりすべき」というものが複数あった。それでも某評論家などはニュース番組の中で「匿名とはいえ、内部から批判が出ているのは見逃せない」という論評だったが、その6日前に、上越で既に「実名による批判」が飛び出ているのだ。これ自体がよほど大きなトピックであり、こちらにフォーカスを向けず「不祥事、不祥事」ばかりに終始している姿は、少々異常に映った。

 

幹部が誰も知らないは「ありえない」

還付金問題について、これまで既に明らかになっている部分について触れたい。

自民党安倍派(清和政策研究会)、二階派(志帥会)では91人の議員が、派閥主催のパーティー券売り上げから還付金を受けながら、収支報告書に記載しなかった。還付されたのはノルマ分を超えて売り上げた額で、派閥事務局長から「記載しなくてよい」という指導を受けていた。

安倍派で2022年8月まで事務総長を務めた西村康稔前経済産業大臣

清和研では2014年から故細田博之元衆院議長が会長を務めており、2021年11月にから故安倍晋三元総理が会長に就任した。

「キックバック制度」については、多くの報道で細田会長時代に生まれたとされているが、党内には「もっと昔からある」と言う声もある。塩谷立座長はじめ複数の派閥幹部は「(キックバックは)会長マターである」と話している。

ところが2021年に派閥に戻った安倍氏がキックバック制度に反対で「こんなことをいつまでやっているのだ」と、いったん廃止にした事実が判明。安倍氏は2022年4月にキックバックを廃止し、同5月には安倍派のパーティーが開かれた。しかし同7月に安倍氏が暗殺されて、それ以降キックバックが復活した。

安倍氏が亡くなって以降、会長職は不在であるから、幹部の言う「キックバックは会長マター、他はあずかり知らない」の理屈はこの時点で成立しない。「キックバックを復活させたのは誰か」をめぐって、現在は安倍派幹部の中で責任のなすり合いが繰り広げられている。

昨年12月に裏金問題で内閣官房長官を辞任した「安倍派五人衆」のひとり松野博一代議士

高鳥氏は7日の会見で「真実を語らない派閥幹部には強い憤りを感じている」と話し、その翌日、自身のブログやSNSで上記の点について「1月19日、清和研の総会で説明を聞いた時に、亡くなった安倍先生のせいにして誰も責任を取ろうとしない、責任のなすり合いをしている幹部の姿を見てつくづく『見苦しい』と思いました」と綴っている。

現職国会議員、しかも1月19日の安倍派臨時総会に出席していた人物が、実名でキックバック問題の本質に明確に言及したのは初めてだが、マスコミ各社の興味はなぜかそこにはなかったようだ。

前述のように、高鳥氏は県連会長を辞すると同時に、解散が決まっている安倍派を「わざわざ」退会した。本人の生の声を聞く必要がある。

(文 伊藤直樹)

 

後編は高鳥修一代議士の直撃取材へ→ 【独占直撃】自民党高鳥修一の県連会長辞任会見で、新聞各紙が書かなかった「安倍派になにが起こったか」<後編>

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