【独占直撃】自民党高鳥修一の県連会長辞任会見で、新聞各紙が書かなかった「安倍派になにが起こったか」<後編>(再掲載)

前編はこちら→ 【独占直撃】自民党高鳥修一の県連会長辞任会見で、新聞各紙が書かなかった「安倍派になにが起こったか」の部分<前編>

注目記事を再掲載します

初回掲載:2024年2月21日

 

そこに安倍元総理の意思はない

2月18日、地元新潟県上越市に戻った自民党・高鳥修一衆院議員を直撃、安倍派の裏金問題について聞いた。

── 代議士の安倍派幹部に対する率直な思いについては、7日の辞任会見と翌日の手記で知った。あらためて1月19日の安倍派臨時総会で何があったかについて教えてほしい

高鳥氏(以下略)冒頭で塩谷座長から『長年にわたって派閥がミスリードし、各議員事務所に誤った処理をさせた。収支報告書に記載しなくてよいと伝えてきた』と謝罪があり、さらに『この問題については歴代会長と事務局長しか知らないことであり、他の幹部は一切関与していない』と話したので愕然とした。

亡くなった安倍(晋三)元総理が2021年11月に派閥の会長に就任して、翌年の4月にはキックバックをやめる方針が決まっている。側聞する限りだが、安倍さんは3月にも一度幹部を集めて「キックバックはやめるべき」と言ったという。その年の7月に安倍さんは暗殺されて亡くなっており、その後にキックバックが復活していることを考えると、そこに亡くなった安倍さんのご意思はない。「キックバックが会長マターである」という幹部側の説明は明らかに矛盾している。

安倍晋三元総理大臣

1月19日の臨時総会では、幹部の説明に対し3人が質問した。最初は東京都選出の議員が手を挙げ「私は選挙で安倍元総理に大変な御恩がある。無念にも亡くなられた安倍さんに対し、罪を着せるようなことは人としてどうなのか」と涙を流さんばかりに質した。

幹部のだれもが、これには言葉がなかった。私も黙っておられずに挙手し「会長以外の幹部が関与していないという説明は矛盾している」と言った。続いて弁護士資格を持つある議員が「誰の指示でキックバックが復活したのか説明責任がある」と質したが、それに対する答えもなかった。

 

── 時系列で見ると、2022年4月に安倍会長のもとでキックバックをやめる方針が確認されている。5月に派閥のパーティーがあり、7月に安倍元総理が銃弾に倒れ、8月に派閥の事務総長が西村康稔氏(前経済産業大臣)から高木毅氏(前党国会対策委員長)に変わっており現在に至っている。そのほか塩谷座長と安倍派五人衆と言われる萩生田光一氏(前党政調会長)、世耕弘成氏(前参院幹事長)、松野博一氏(前官房長官)を含め、安倍派幹部の中で誰かがキックバックを復活させており、嘘を言っている。代議士には見当がつかないか

既に「派閥がミスリードによって各議員事務所に誤った処理方法を指示した」と公表されていて、ミスリードされた側としては、その場にいないので知ることは不可能。だが、いったん止めたものが復活しているわけだから、誰かの意思が働かなければそうはならないと思う。

 

── 代議士自身はキックバック制度のことをいつ知ったのか

何年か前にノルマを超えた売り上げが還付されているというのは聞いた記憶がある。事務所の職員から「実はこういうものがあった」とはっきり報告されたのはこの問題が明るみになってから。信じてもらえないかもしれないが、私自身「お金」というものに強い関心が無く、パーティー券の売りあげについても「ノルマを達成したか」と確認したことはあるがノルマ超過分がいくらになったかを聞いたこともなければ、還付がいくらあったのかというのを職員に聞いたこともない。もちろん事務所の問題の責任は私にあり、派閥からの指示に従っていた職員に責任はない。聞いたところではもともと「記載しなくてよい」というルールにとどまっていたが、還付を受けたある議員事務所が収支報告書に記載したところ、派閥の帳簿と収支が合わなくなるので、「記載しないように」という指示まであったという。

 

幹部達は二重三重の裏切りを

── 今回の問題でも、安倍派幹部は亡くなった元総理の意向に反した行動を取っており、これは2023年6月に国会を通過したLGBT法案についても、法案化に反対していた安倍氏の遺志に反して全員が賛成したことにも重なる。元総理が亡くなってから、派閥内にはこうした手のひら返しが目立つが

これが、今回安倍派を退会する理由そのものだ。元総理が亡くなった時、派閥の議員たちは口々に「元総理のご遺志を継いで」と言っていたが、これが本当に言葉だけだったのかと思うと残念だ。

安倍さんはLGBTそのものに反対していたわけではなく、法案が不完全すぎると言っていた。法案成立に反対していた若手議員も多くいたが、全て採決の前に安倍派幹部が直接電話をかけて説得し寝返ってしまった。多様性を尊重する法案にもかかわらず、反対意見に党議拘束をかけるというのは、異論を許さないという、まさしく多様性の否定ではないのか。「安倍さんはもういないのだ。今は岸田総理を守らなければならない」とある幹部が言っていたが、まさに二重三重の裏切りだ。

安倍派五人衆のひとり萩生田光一政調会長

新潟2区選出の細田健一衆議院議員(安倍派)も、5年間で564万円の還付金を受け、収支報告書に記載していなかったことを認めた

 

── 野党は政治倫理審査会の開催および記載漏れの91人に全員招集を求めているが、これに対しては?

私には隠し立てすることはない。ただ私のような「ミスリードされてきた」側の議員を呼んでも何も出てこないと思う。システムを作った人、復活させた人しかわからない。詳らかになっていない問題、疑念を持たれている状態は解消すべきだとは思う。いずれにしても安倍派幹部の言っていることは矛盾に満ちていて、この人たちが口を開かない限り真相はわからない。誰が見ても「知りませんでした」はありえない。

※         ※        ※

ここまでの経緯と高鳥氏の話を聞く限り、一度廃止されたキックバック制度が復活したことには誰かの意思が作用している。そう考えると、度重なる取材に対し安倍派幹部らが『知らない』を繰り返している姿は、腹立たしいを通り越して「呆れ」や「滑稽さ」すら感じる。一般市民は、この問題の本質によく目を凝らすべきではないか。

 

(文 伊藤直樹)

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