コジマタケヒロのアルビ日記2024 Vol.4「自分の気配を消した守備」宮本英治

アルビレックス新潟の宮本英治選手

「この過酷な、本当に試されるような条件下の中でも、非常に動きもいいですし、そこに対するモチベーションも高く、選手たちは練習に臨んでくれました。第一節で勝利を収めたことでの自信というものも多少あったと思います。気持ちも安定してトレーニングできたのではないでしょうか。それにしても本当にこの条件下の中で足を止める選手が1人もいなかった。もちろん、うまくいかないことはたくさんあると思いますが、そういう意味では本当にすばらしいトレーニングだったと思います」。

2月27日、聖籠の天気は強い風が吹付け、体が芯から冷え切ってしまうのではないかというほどの過酷な環境だった。しかし、練習後、番記者たちの前でコメントしてくれた松橋力蔵監督の言葉が示すように、選手たちからは充実感にも似た、とてもいい空気感を感じた。

2月24日にアウェイで行われた鳥栖戦。新潟は逆転という形で勝利を収めた(◯2-1)。試合開始早々となる5分に鳥栖の福田晃斗に得点を許した新潟は、ボールを握るもなかなか得点への糸口を見つけられずにいた。時間は経過し、前半はアディショナルタイムへ。45+3分、中盤での激しい球際の攻防から、ボールはこの日J1デビューとなった宮本英治選手へ。左足で放ったダイレクトパスは、前線の谷口海斗選手へ。谷口選手がバウンドを見極めて右足を振り抜き、ビューティフルゴールを決め、同点。いい形で後半を迎えることができた。

「とても強い向かい風、ボールが止まりやすいピッチだったので、ちょっと強めにパスを出したんですが、それでもボールが戻ってきていました。でも、そのおかげでシュートをワンタッチで打ちやすいところに、たまたま落ちてくることにつながって、ラッキーでしたね。でも、まさかあの位置からダイレクトで打つとは思っていませんでした。あれをダイレクトで打って、しかもきちんとゴールを取ってくれるなんて、本当にすごいなと思いました」。

J1初アシストを記録した宮本選手は、あの試合でチームに勢いをもたらすきっかけとなった自身のパスについてこう話してくれた。そして、試合全体について、こんなふうに言葉を続けた。

「開幕戦を勝利で終えて本当に良かった。時間が経つにつれて、緊張感はほぐれてリラックスして試合に没頭できました。前半は、糸口を探すというか、少し難しい時間が続いたので、もしかしたら停滞していたふうに見えた方もいるかもしれません。でも、自分としては前半から自分らしくプレーできていたと思います。初めてのJ1の試合で手応えを得た部分もあるし、もっともっと改善できる部分もあると感じました。開幕戦が始まる前、(秋山)裕紀(選手)とは、お互いにバランスを見ながらプレーしようと話していました。2人で下りるというよりは、どちらかが下りてどちらかが上がるというふうに。裕紀は、ボールをたくさん触って良さが出る選手なので、ボールの近くでプレーすることが多かったと思うし、特に前半は後ろでボールを持つ時間が長かったから、裕紀がボールを引き出しに行く機会が多く、必然的に僕が高めの位置にいることが多くなりました」。

鳥栖戦、攻撃面も確かにすばらしかったが、僕自身目を見張ったのは、宮本選手の守備。

「後ろの選手たちからも『行っていいよ』と言われているので、自分がボールを取れると思ったときは思い切り行くようにしています。そこで取り切るというもの自分の長所を周りがうまく理解してくれている。周りで、ポジションを消したり、カバーしたりしてくれる選手には本当に感謝です。これからも自分がもっと取れる回数を増やして、自分の良さをもっと出していきたいです」

「相手と距離があってもボールを奪いにチャレンジしているように見えましたが?」と聞くと「僕は、相手の選手の目線で行く、行かない、のタイミングを見ています。相手の選手の顔が上がっている状態でボールを取りに行くとパスで剥がされたり、ドリブルでかわされたりしてしまうので、ボールを見るなど、自分に気づいていないときに一気に相手の前に詰めに行く。そうしたら、相手はビックリするじゃないですか。それで取れる確率が上がるので、自分の気配を消しながらボールを奪いに行くことは意識しています」。

最後に今季の目標について聞いてみた。

「5ゴール5アシスト。数字が出にくいポジションではありますが、昨年3ゴール取れていたし、この間の試合でもシュートチャンスはたくさんありました。昨年以上の結果を残せるよう、高い目標を持って、1年間やっていきたいと思います」。

キラキラとした目で、しっかりとこちらの目を見て話をしてくれた期待の新加入選手。今季もボランチの出場枠争いは激化の様相だ。

 

◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。

 

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前回:Vol.3「勝つことに対しての逆算」秋山裕紀 (2024年2月21日)

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