日刊工業新聞社(東京都)が91万部を超える大ベストセラーを記録した田中角榮著「日本列島改造論」を復刻

復刻版 日本列島改造論田中角榮著 © 日刊工業新聞社

日刊工業新聞社(東京都)は、書籍「復刻版 日本列島改造論(田中角榮著)を18日に発売した。定価は、税抜1,800円。

1972年6月20日、首相就任目前の田中角榮通商産業相がまとめた「日本列島改造論」が同社より刊行された。地方の過疎と大都市の過密を同時に解消するために、「国土の均衡ある発展」を掲げ、1970年代の「日本のかたち」をどのように描いていくか、その処方箋を豊富なデータと具体的な政策を交えながら提言した同書は、政治家本としては異例の91万部を超える大ベストセラーを記録。今回、その復刻版を約半世紀ぶりに刊行した。

 

「過疎と過密」を同時解消

当時の課題の一つがインフラ整備。東京への一極集中とそれに伴う農村部の疲弊が社会問題化していた70年代、新幹線を中心とした高速鉄道や高速道路を地方に行き渡らせることで人口と産業の地方分散を実現、「過疎と過密」を同時解消することを鮮明に打ち出してる。

そのアプローチは理論的かつユニークだ。過密対策では、都市機能の一部を担っていた工業を東京や大阪から追い出し、全国的な視野で再配分することを模索。特に知識と知恵が求められる「知識集約型産業」を内陸部に配置することを立案している。

知識集約型産業は、それまで日本を牽引してきた重化学産業と異なり、公害を出しにくい産業群であり、環境対策にもつながります。また工業を地方に分散させれば職が生まれ、自然と人口も増えます。「人と産業が地方に移りやすくするために鉄道網や道路網を整備」し、「大都市と地方のアクセスを容易にする」というシナリオ。

これが「国土の均衡ある発展」であり、田中角榮氏は「人と経済の流れを変える」と指摘している。

 

インターネット時代を予測したような記述も

日本列島改造論」の中では強化すべき分野が具体的に提示されています。電子計算機、航空機、産業ロボット、海洋開発、情報処理サービス、システムエンジニアリング―。いずれも現在の日本経済を支える産業ばかりだ。世界の自動車産業の中核になると見込まれる電気自動車(EV)開発の必要性も明記されているほか、ロボット産業の勃興もこの政策が原点といえる。

内容の半分程度は通産省の範囲だが、あとは大蔵省や建設省、運輸省(いずれも当時)などで、通産省だけでなく各省庁の戦略を巧みに盛り込むことで、インフラ整備だけでない、新たな日本の産業像を描き出している。

代表例が「情報ネットワークの構築」。「情報列島の再編成」という言葉を用いているが、特筆されるのがインターネット時代を予測したような記述があることだ。

「通産省で開発しようとしている映像情報システムでは、将来、一台のテレビ受信機で無線テレビも有線テレビも楽しみ、さらにテレビ受信機に組み込まれた鍵盤を操作すると、情報センターやデータバンクにつながって『日本の国土面積はどのくらいか』『IMF(国際通貨基金)とはどういう機関か』といった知識を求めることができる」(本文より)

デジタル全盛の今から50年も前の内容とは思えない大胆な発想が見て取れる。

 

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