【再掲載】「岸り人」はウクライナ侵略で生き残れるか?~「銃声が止まる前に売れ」~(元衆議院議員 個人投資家 元財務官僚 石﨑徹)

「ロシアショックによって世界経済の見通しは更に暗いものになり、株価も下落基調が続く?(写真はイメージです)

「銃声が鳴ったら買え」というのは国際金融家ネイサン・ロスチャイルドの有名な格言だが、「銃声が止まる前に売れ」というのを本日は伝えたい。

岸田政権になってからの株価調整によって、資産を減らした人や所得が減った人達が自嘲して「岸り人」と「億り人」をもじって表現しているといった記事は前回のコラムで触れた。泣きっ面に蜂のように起きたウクライナ侵略に起因する暴落で「岸り人」達の懐事情は更に厳しくなっていると見る。

前回のコラムで詳述したが、1月の岸田ショックは東証マザーズ市場で歴代3位の下落率を記録した。過去の下落時には短時間で反発する局面があったが、今回は2月もマザーズは続落。岸田政権発足後から40%以上も下げている。

こうした中で「岸り人」達は下落した保有株をそのまま損切せずに放置したままにしている人が多いようだ。確かに、コロナバブルによって空前の株高局面によって下落局面を経験したことのない若い投資家が増え、「損切りをして逃げる」という経験がない人が多いのも実情だ。株などは「買う」よりも、「売る」が難しいといわれるのは、こうした下落局面を乗り越えるために必須の行為だからである。

1月の暴落後に、まさかで発生した2月のウクライナ侵略によって、株価も戦闘機を撃墜したといったヘッドラインの一つ一つで一喜一憂、乱高下が続いている。停戦合意の進展が見られれば株価も上がり、ロシアの侵攻が進めば下落。など、読みやすい相場とも言えるが、筆者個人の見立てでは、今後の世界経済・国際金融市場はロシアへの経済制裁によるロシア経済の大幅落ち込みに起因する「ロシアショック」によって、世界経済の見通しは更に暗いものになり、株価もそれを織り込んで下落基調が続くと見ている。従って、「いかに早く下落基調の株から逃げるか」を真剣に考えた方がよい。

既に欧米の企業はロシア投資から一目散に逃げだしている。日本の三井物産などロシアサハリン開発を進めてきた企業の株価は下落が続いているが、政府が絡んでいたりと逃げることが難しい案件もある。しかし、本来であればこうした国のエネルギー政策に沿って進めてきた日系企業が関連するロシア案件からの撤退などについては、早急に日本政府も日本企業と連携して逃げるための交渉をまとめるべきである。

日本政府や国会も非難決議やウクライナへの人道支援なども表明しているが、それと合わせて日系企業のロシア撤退を後押しを早急にすべきではないか。

また、国際的なロシアの通貨ルーブル売りに対抗するべく、ロシアの中央銀行は政策金利を9.5%から20%に引き上げた。金利高でルーブル買いを誘うといった狙いもあるが、「トリフィンのトリレンマ」の命題もあり、金利が上がれば企業や個人のローン利払いも上がりロシア国内経済はダメージを食らう。FRBが政策金利の引き上げでインフレ抑制を狙うことで株の下落を招いているのと同じように、いやそれ以上にロシア経済は破綻の危機に直面している。ロシア経済の破綻が定量的にどれだけ世界経済にダメージを与えるかは、国際機関などがレポートを出し始めるだろうが、

①エネルギー価格の上昇に伴うインフレ加速
②インフレ加速を抑えるために更なる強気の金利引き上げ政策の実施による株価下落(FRBは3月の利上げは抑えるだろうが、今後はウクライナ侵略の前より更にタカ派になると見る)
③ロシアが中国・ブラジルなどとブロック経済圏を作りだそうとする経済貿易リスク
④食料・エネルギーの買い占めによる消費の冷え込み
⑤地政学リスクを織り込んだ投資の抑制リスク(台湾問題、尖閣問題など日本近海も大きなリスク)
⑥コロナ新型変異株の出現によるリスク
⑦日本の経済政策が殆ど効果を発揮しない政治リスク

などなど、今回の前代未聞の「ロシアによるウクライナでの銃声」によって日本経済・世界経済はハッキリとした様々な「リスク」を備える時期に来た。これらは長期的なもちろん「プーチン退陣」と「平和的な新政権の樹立」となればリスクがチャンスになるのでは?と楽観論もなくはないが、現在の監視社会のロシアでは期待出来ない。

従って、日本のロシア関連株保有は特にリスクが高く、その他の銘柄も上記の様々なリスク要因により上昇期待よりも下落リスクの方が高いということから「銃声が止まったら売れ」。いや、「銃声が止まる前に売れ」が現状ではベストポジションではないか。

ただ、短期の荒波にうまく乗る個人投資家の方もおられると思うので、次回のコラムでは、「売る」・「逃げ切る」したその後に、「買う」・「立ち向かう」銘柄としてはどのようなものがあるか、「岸り人」から「億り人」へ。私なりの考えを示したいと思う。それまでに銃声が止み、ロシア国内の政治体制が改善に向かっていることを期待したい。

 


石﨑徹
元衆議院議員 個人投資家。新潟市生まれ。38歳。財務省職員を経て、2012年衆院初当選。3期務め、投資会社であるT.I.J株式会社を設立。日々世界中の市場をウォッチしながら投資活動を政治活動の傍ら続けている。時事テーマにも切り込むYoutube番組「落選党」も主催

 

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