億り人を超えるコラム第4回~「噂で買って、事実で売る」「バイデンリスク」~ (元衆議院議員 元財務官僚 個人投資家 石﨑徹)
有権者と投資家
お久しぶりです。この間、私の政治面での活動がバタバタとしておりました。このコラムは投資情報がメインなので、さらっと付記しますが、無投票で22名もの議員が選ばれる予定であった新潟県三条市市議選において、公示2日前に記者会見をして日本維新の会公認で新人を擁立して無事に当選させることが出来ました。市民の皆様の納税者の感覚からすると、月額35万円ほどの市議報酬が4年間保証される議員を選挙なしで選ぶというのは、あり得ないことではないでしょうか。全国的にもこうした無投票選挙が続出しております。
これは、人口減少社会に合わせて、議会定数が既得権益で削減されないからです。
この点、投資家の観点で考えると、投資先の企業を見るときには、「利益」を如何に出しているかが極めて重要になってきます。売上が伸びていても、赤字が続けば投資はしづらい。三条市は残念ながら財政赤字が続いており、経済成長率も人口減少要因などを含めてマイナスです。売り上げも減る、利益も出ていない時にはどうするか。経費削減です。企業であれば、株主や債権者からの圧力に晒されます。給与カット、経費削減、雇用整理などが行われます。しかしながら、議会でその是非を住民の皆さんに問うことが出来るのは、住民投票か、4年に1度の選挙か、あるいは自発的に議会で議論してもらうしかありませんが、選挙以外はなかなか行われません。この度の三条市は選挙すら行われないことになりそうでした。
納税者と投資家は似ているところがあると思います。納税者である市民は、選挙において自治体や国の運営を厳しくチェックし、4年間の市政運営への意思表示をすることが出来ます。この4年間という数字は、企業でいえば中期経営計画に当たります。納税者は投票によって、投資家は株主総会において議決権を行使できるわけです。
ただ、両者が大きく異なる点があります。納税者は自ら望む市政運営をしない住んでいる自治体から、他の自治体に逃げることは直ぐには難しいですよね。投資家のように投資先から資金を引き揚げたり、含み損が出ている場合に「損切り」をして逃げるということが簡単には出来ないというのが大きな違いではないでしょうか。
株式投資のメリットには、このように利益を出さない、売り上げを伸ばさない企業から引き揚げる、逃げるということが、平日9時~15時の株式市場が開く間にはいつでもすぐに出来るということがあると思います。
そして、個人投資家は個人の判断と責任で一人で行うことが出来ます。
「噂で買って、事実で売る」
さて、本題のその売買のタイミングについてですが、株式投資の有名な格言に「噂で買って、事実で売る」というものがあります。
例えば、ウクライナにロシアが侵攻する兆候がある、という噂は昨年夏くらいから言われていました。いや、これは噂レベルではなくて、CIAなど欧米の諜報機関は警告を発していました。
この辺りから、戦争勃発→軍需産業、資源産業に特需といった見通しを立てていれば、直近高値更新を続ける関連企業の株式に早期に投資をすることが出来たかもしれません。
既に、現時点では、ウクライナ侵攻は「事実」となっていますが、事実となっている現時点ではすでに株価は上昇した状態となっています。(今後さらに上昇するかは別論点ですが、各国の当局者の見通しでは長期戦になるとのことですからまだ関連銘柄の上昇余地はあるかもしれません)
これ以外にも、身近な商品の売れ行きが良いという噂を聞いて、その企業の株価を見てみるとまだ上昇していないから今のうちに買っておこうというのもこの格言通りの投資スタンスです。
ただ、早すぎる投資は、上がるまでの時間ロス、機会費用があるというのも気を付けなければなりません。
「バイデンリスク」と投資戦略
本日のコラムで私が今後の投資戦略における重要な噂として考えてもよいとお伝えできるのが、「バイデンリスク」です。
外交の専門家ではありませんが、以下の点に注目しています。
私は、バイデンの対ロシア戦略が「ずるずる」、「だらだら」としか見えません。個人的には侵攻の前、侵攻の直後にもっと大胆なロシア制裁、ウクライナ支援を表明していれば、長引くことはなかった。
すなわち、バイデンは21世紀のチェンバレンという歴史的評価が将来付く可能性があります。今後、最初の弱腰が、更なる戦争のエスカレート、第三次世界大戦リスクを招いたのだ、という歴史的事実にならないか不安です。
米国の血を流すことなく、ロシアの弱体化をウクライナ自身にやってもらおうという戦略が、かえって米国の血とカネの大きな代償をもたらすことに繋がるのではないか。これがバイデンリスクです。
この点、現時点では円安・ドル高、ユーロ安・ドル高が進んでいる為替市場も、米国の対ウクライナ関与が強まれば強まるほど、戦争当事国にならない円買いの方に逆回転する。その結果、現在円安によって株価上昇している銘柄の株価も逆回転するリスクがあります。
そして、バイデンリスクがより顕在化するのが、11月に行われる米国上下院の中間選挙です。この時までのウクライナ情勢次第ですが、私は「ずるずる」、「だらだら」のバイデン外交が招く、財政負担と軍事リスクによって、またタカ派過ぎる経済金融政策によって、バイデン民主党が大負けするリスクに注意する必要があると思います。その場合、選挙の前後で現時点では想定できない政策の転換が表明されることもリスクとして考えて良いでしょう。
ウクライナ民間人が大量に虐殺されている現状を変えたい、国際社会はもっと関与すべきだという国際世論の高まりが、中間選挙に如実に表れてくるかもしれません。ロシア国民自身にプーチン打倒を期待することが出来なければ、米国自体を動かすしかない、ということに繋がる。共和党もここを突いてくるでしょう。
さて、バイデンが負けそうだという噂の相場が続くのが、11月8日の中間選挙投票日まで。事前の世論調査も最近では当たらなくなっているのは大統領選でも明らかですので、11月8日の投票によって明らかになる「事実」まで中期のバイデンリスク相場が続きます。
「バイデン負ける→米国が対外的タカ派、対内的ハト派に転換」するのではないか、という噂をもとに、私がお勧めする株式投資銘柄は、バイデンリスクに左右されにくいメタバース関連などの「ハイテクグロース銘柄」と、バイデンリスクに左右される資源関連銘柄です。
「ハイテクグロース銘柄」は金利上昇で、現在、相当売り込まれていますが、今後米国の対外タカ派転換に伴って、対内的な金融経済タカ派姿勢も長期戦時体制に備えてハト派に転換。それが金利上昇見通しに一服感がもたらし、ハイテクグロース銘柄に再び資金が戻る。しかも、メタバースという言葉を聞かない日はなくなったように、我々の生活の隅々にメタバースが浸透してきます。この莫大な需要を関連企業は一身に受け、その株価の上昇がバイデンリスクに関係なく続くのではないかと見ます。
そして、対外的タカ派転換は、更なる戦争に必要な物資、戦争によって供給リスクが出てくる資源、食料価格の上昇に繋がり、関連企業業績にも跳ね返るのでないかと思います。前回のコラムでも触れた、商社、食料、資源関連企業への投資は引き続き「買い」だと思います。より直接的な軍事産業への投資は私もしづらいですが、こちらも市場は素直に動きそうです。
投資は自己責任のもと、皆様もご自身で今後の展望を予想してみてください。その際、皆様の周りで何か特異な噂はないか、耳を凝らしてみてください。そこに大きな投資のヒントがあります。
「噂(スキャンダル)で売られて、事実(歴史)で買われる」
最後に、本日は二つの選挙に触れました。日本の地方の選挙と、大国アメリカの選挙。冒頭の格言に「噂で買って、事実で売る」と書きましたが、政治家自身はこれとは逆のことが多いです。
すなわち、「噂(スキャンダル)で売られて、事実(歴史)で買われる」。
郷土にいがたの英雄、田中角栄元首相を思い出しつつ、本日のコラムを終わります。
石﨑徹
元衆議院議員 個人投資家。新潟市生まれ。38歳。財務省職員を経て、2012年衆院初当選。3期務め、投資会社であるT.I.J株式会社を設立。日々世界中の市場をウォッチしながら投資活動を政治活動の傍ら続けている。時事テーマにも切り込むYoutube番組「落選党」も主催