「仕事を通じた往来づくり」で新潟の課題を解決したい(特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長 サイボウズ株式会社勤務 竹内義晴)
竹内義晴と申します。このたび、にいがた経済新聞にて、コラムを書かせていただくことになりました。今回は、簡単な自己紹介をしつつ、わたしがいま抱いている課題感と、それを解決するための取り組みについてお話したいと思っています。
わたしは現在、大きくわけると3つの仕事をしています。1つ目は特定非営利活動法人しごとのみらいの経営です。「一人ひとりの「楽しい」で、しごとのみらいを創る。」が理念の法人で、管理職やリーダー層に向けた組織づくりやコミュニケーションの企業研修・講演に従事しています。
2つ目は、サイボウズというIT企業で、「週2日、フルリモート複業社員」という形で働いています。ここでいう「複業」とは、メインの本業があり、空き時間を使ってお金のためにサブの仕事をする「副業・兼業」とは異なり、「複数の本業がある」という働き方です。サイボウズではマーケティングやブランディングを担当しており、2拠点ワーク、テレワーク、複業など、これからの働き方や仕事のあり方を実践しています。
3つ目は、テレワークによって、地域をまたいだ多様な働き方をしてきた経験から、妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会という法人で、ワーケーションをはじめ、地域活性化の事業に取り組んでいます。
新潟と東京を行ったり来たりしながら働いていることもあり、地方の視点と都市部の視点の両方を持っている「変な人」だなと自分では思っています。その分、価値観のギャップが起こりやすいからか、「新潟の課題は○○だな」「本当は、○○にすればいいのにな」といったことに気づきやすい体質になりました。
このコラムでは、わたしが取り組んでいる組織づくりや世代間ギャップをはじめとしたコミュニケーションについて。また、2拠点ワークやテレワーク、複業などのこれからの働き方について。さらに、新潟の地域課題やワーケーションをはじめとした、新たな交流づくりについて触れて、現場に基づいたお話をしていきたいと思っています。
■少子高齢化が進む中で「新潟の企業や地域は大丈夫なのか?」
さて、今回は、少子高齢化の現実と、新潟の企業や地域に対する課題感についてお話したいと思います。
「人口減少が進んでいる」――これをお読みのみなさんも、きっと一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。2021年、日本の人口減少は64万人で過去最大でした。ちなみに、鳥取県の人口は55万人です。1つの県の人口がいなくなるぐらいの勢いで人口が減っています。
わたしが住んでいるのは、妙高市にある50世帯ほどの小さな集落ですが、高齢化世帯が増え、子どもたちの数は両手で数えられるほどになっており、少子高齢化はリアルな課題です。「あと10年後、この地域はどうなるんだろう……」そんな危機感を抱くことが増えてきました。みなさんがお住まいの自治体でも、似たような課題があるかもしれません。
この問題に対応しようと、多くの地域では、観光客や移住者を増やす努力をしています。しかし、観光客の関わりは一過性ですし、移住者を増やすのはハードルが高いです。また、日本全体で見ると、移住者対策は「どこかが増えれば、どこかが減ってしまう」という奪い合いの構造です。「自分たちの地域の人口さえ増えればいいって話でもないよな」とも感じています。
■仕事を通じて「行ったり来たりできる関係」ができないか
そこで関心があるのが、「仕事を通じた人の往来づくり」です。いま、取り組んでいるのは大きく分けて2つです。
1つは、わたしの働き方の逆――つまり、新潟の企業に、都市部をはじめとした他の地域に住んでいる人たちが、複業のような形で関わることができる仕組みづくりです。
こういった人材活用について、地元企業の理解や、収益を得ながら事業化する難しさなどがあり、現状は、まだ形にできてはいません。一方で「なんとかしないといけないよね」といった課題認識を持っている人たちとつながりはできつつあり、何かしらの形が実現できるといいなと思っています。
もう1つがワーケーションです。駅伝で有名な青山学院大学が、妙高市のロゴマークを胸につけて走っているのをご存じですか? 実は、妙高市は大学の駅伝チームをはじめとして「スポーツ合宿が盛んな街」です。
この、「スポーツ」を「ビジネス」に置き換えて、企業の、合宿による来訪者を増やしたい。つまり、妙高に合宿においでいただくと「組織づくりやコミュニケーションが学べる」「地域の体験によってチームワークがよくなる」「地域課題から、これから必要なビジネスのアイデアが得られる」「自然や森林の効果でストレスを軽減できる」「会社を離れて集中的に議論することで仕事の成果が出る」といった、ビジネスの価値を提供することで「合宿を通じた、企業人の往来」をつくりたいのです。
現在は、そのためのコンテンツや受け入れ体制を整えており、ここにきて少しずつですが、成果が出始めているところです。その成果について、もしご興味があれば「妙高ワーケーションセンター」で検索してみてください。
こういった取り組みは、街づくりのような要素があり、時間がかかる作業です。しかし、人口減少や少子高齢化が事実としてある以上、地域を守るための何らかの取り組みをしていきたい。
そこにあるのは、正直、課題ばかりで、頭を悩ませてばかりですが、新潟に住む1人として、これからも取り組んで行きたいと考えています。
引き続き、よろしくお願いいたします。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長。「楽しくはたらく人・チームを増やす」が活動のテーマ。コミュニケーションや組織づくりの企業研修・講演に従事している。
2017年よりサイボウズ株式会社 にて複業開始。ブランディングやマーケティングに携わる。複業、2拠点ワーク、テレワークなど、これからの仕事のあり方や働き方を実践している。また、地域をまたいだ多様な働き方の経験から、2020年より一般社団法人妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会 にて、ワーケーションをはじめ地域活性化の事業開発にも携わる。
著書に、『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)』などがある。