【市町村長リレーコラム】第1回 新潟県加茂市 藤田明美市長「チャレンジせずに諦めてしまったら、全て嘘になる」
にいがた経済新聞では、新企画「市町村長リレーコラム」をスタートしました。
新潟県内30市町村の首長に、地域での取り組み・課題・首長としての想いなどのコラムを寄稿いただき、次に寄稿いただく首長を指名いただく「リレー形式」で繋いでいく企画です。
「市町村長リレーコラム」第1回は、新潟県加茂市の藤田明美市長です。
チャレンジせずに諦めてしまったら、全て嘘になる
4年前のこと、誤算
私が加茂市長選に立候補することを表明したのが4年前の今頃、12月です。本来は、9月か10月に表明して準備を進めたいという思いでいました。しかしながら、なかなか思うように物事は進まず、表明が12月にずれ込みました。誰かに出馬を頼まれたわけではないので、後援会長を引き受けてくださる方を探しましたが見つけられず、もうこれ以上遅らせるわけにはいかないと思い、組織ができないまま表明をすることになりました。
市政を変え、課題を解決するには市長にならなければ変えられない。市長になるには選挙に勝たなければならない。選挙に勝つには強い組織を作る必要がある。それが、私が最初に思い描いていたやり方でした。市長選に出られる方はごく当たり前に考えることだと思います。ところが簡単には組織を作ることができないとわかりました。そこで正攻法や定石といったことにこだわらずに、まずはできることからやってみることにしました。市長選に勝つという目標は変えずに、その目標達成までの手順を変えたということになります。まずは目の前のできることからやってみるというやり方は、本当に目標までたどり着けるのか不確実なところもあります。それゆえに、目標とその先にある目的を強く意識し、見失わないようにしました。
元々、最後は一人になっても戦うと決めていたことや表明すれば応援してくれる人も増えていくかもしれないと楽観的に考えていたところもあり、表明したことでようやく走り出すことができると安堵したのを覚えています。その後、それだけの覚悟があるのならと、応援してくれる人が一人、二人と増えていきました。名前を明かして応援することが非常に勇気のいることでしたので、支えてくださった方々には本当に感謝しています。
市長選に出たかったわけ
当時、私は市政に多くの課題があると感じていました。話題になっていたのは財政難のことやごみ処理施設の老朽化によるダイオキシン問題でしたが、それらに加えて、子どもや障がい者の声が全く届かないということ、少子化が急速に進んでいることが私にとっての大きな課題でした。それらを解決したいということが市長選に出馬すると決めた理由の一つです。その一方で、選挙の勝ち負けはとても重要ですが、選挙にチャレンジすることはもっと重要だと考えていました。
財政破綻しないのだろうか、近隣の自治体と仲良くやれないのだろうか…、そう感じる市民は多くいるものの、どうせ声を上げても変わらない、声を上げること自体が怖い、といった諦めの空気が市内を覆っていました。私自身もその中にいました。もちろん、市政が変わってもらっては困るという人も多くいらっしゃいました。
その頃、私は市議会議員のほかに塾講師、家庭教師という立場にいました。塾講師、家庭教師としては20年ほど働いたことになります。多くの子どもたちとの出会いは私の財産です。その子ども達と向き合う時に私が意識してきたのは、伴走と子ども達の自律です。一人ひとりのゴールに向かって、最後は自力で走りきることができるように、戦略を一緒に練ったり、声をかけたり、話を聞いたりすることを心がけてきました。子どもたちには、チャレンジしよう、諦めないで最後までやってみよう、といった言葉をかける一方で、市政に対しては諦めている、誰かのせいにしている、という矛盾した私自身がいたことになります。
このままチャレンジせずに諦めてしまえば、これまで私が子ども達にかけてきた言葉は全て嘘になってしまいますし、この先何を発しても私の言葉は説得力を持たないものになってしまうと思いました。無理と思われていることに大人でもチャレンジするんだということを子ども達に知ってほしかったのです。
このような想いがあり、結果にこだわる以上に市長選にチャレンジすることが重要だと考えていました。結局のところ、自分自身のために戦った選挙でもありました。
市長になって
市政運営は大なり小なり想定外の出来事の連続でした。市長に就任してまず着手した行財政健全化は想定していたことですが、公共施設の老朽化は想定以上でした。そして、新型コロナウイルス感染症の流行は当然想定していたものではありませんし、約四半世紀ぶりとなる総合計画策定のスケジュールにも影響が出ました。
想定していたことと異なることが起こっても、状況を見極め、決断し、できることから取り組めば少しずつでも前進することが多いと感じています。価値観が大きく変わり正解のない時代だからこそ、結果だけではなくそこまでの過程を大切にしていきたいです。
私が4年前のことを書こうと思ったのは、初心を忘れないようにするためです。市民に寄り添っていますか。なかなか声を上げられない人達の声を聞こうとしていますか。加茂市の今だけでなく未来のことも考えていますか。市民に嫌われることを恐れていませんか。大きく速い時代の流れに押し流されそうな時こそ、一度原点に立ち返ってみたいと考えています。
【市町村長プロフィール】
加茂市長 藤田 明美(ふじた あけみ)氏。新潟県加茂市出身。1971年1月6日生まれ。 新潟県立三条高等学校を卒業後、早稲田大学理工学部数学科へ進学。2015年5月に加茂市議会議員に就任ののち、2019年5月に加茂市長就任。影響を受けた本は、「天才と発達障害」著・岡南。趣味は旅、美術館めぐり。
◎次にリレーする市町村長(藤田市長からのコメント)
阿賀町の神田一秋町長をご紹介します。熱い想いを持ち続けている神田町長にいつも刺激を受けています。また、阿賀町の花は加茂市の花と同じ雪椿。雪椿にちなんだ町おこしは加茂市としても大変参考になります。
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