【市町村長リレーコラム】第2回 新潟県阿賀町 神田一秋町長「希望ある未来へ全力」
新潟県内30市町村の首長に、地域での取り組みや課題、首長としての想いなどをコラムで寄稿いただき、次に寄稿いただく首長を指名いただく「市町村長リレーコラム」。
第2回は、加茂市藤田明美市長からバトンをつないでいただいた、新潟県阿賀町の神田一秋町長のコラムをお届けします。
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阿賀町の課題、決意
阿賀町は、平成17年4月、東蒲原郡2町2村が合併し、この3月末で18年となります。香川県の半分より広い952.89キロ平方メートルの広大な面積に、昨年12月末の人口は9,779人、この18年間で合併時の約3分の2まで減少しました。
県内では、人口減少率トップ、高齢化率トップ、急激な少子化が進み小・中学生の減少率もトップ。そうしたことから、空き家が増加し、商店が閉じ、学校統合などによる遊休施設が増え、集落機能は低下。一方、サル・イノシシが増え、シカも現れ、耕作放棄地が増加し、明るさが見えない、極めて厳しい局面に入っています。
このままでは2045年(22年後)の人口は、国が推計した4,591人を更に下回り、ポツンと一軒家的な集落が増え、地方交付税も大きく減額となり、財政運営ができるのか等々、大きな懸念があります。今の段階で、この町の歩み、立地、資源などを再認識し、原点に立ち返り、「希望ある未来」へ思い切った施策が必要でありますので、新たな発想とスピード感をもって取り組んで(挑戦して)まいります。
私は、旧三川村の最も奥深い小さな集落の貧乏な家に生まれ育ち、高校は叔母宅に下宿。大学へ行くなんてことは毛頭考えたこともなく、高校卒業後、東北電力に入社。その年の9月に父が他界。たまたま、三川村で初の職員公募が行われており締め切りまで1週間。迷うことなく応募し、採用していただきました。以降39年3ヶ月間、役場職員を務め、福祉・保健・医療・介護・子育てと極めて幅広い分野を所管する課長職6年目の2018年6月、11月に行われる町長選挙に立候補を決意し退職。既に立候補を表明していた政党も応援する現職町議会議員さん2人との三つ巴戦。泡沫とみられていた私が僅か29票差で当選させていただきました。先程のような課題山積のなか、私の行政経験と変化を選択していただいたものと思います。
就任後は、知る由もなかった第三セクターの経営問題を突き付けられるなど、隠れていた問題への対処に追われるなかコロナ禍となり、目指した施策が思うように進められない一期目ではありましたが、ワクチン接種は県内No.1のスピードと接種率で進め、感染予防対策、経済対策など評価もいただいた故か、昨年11月の2期目の選挙は無投票。次の4年間は、準備してきたものを形にしていかなければなりません。
県内NO.1の子育て支援の町へ
1期目から進めている子育て支援・教育環境の整備は、より充実させます。子ども医療費の高校卒業まで無料化、学校の普通教室のエアコン整備、小・中学校の給食費半額化、などは1期目初年度に実施し、小・中学校のトイレ改修、タブレットや電子黒板の導入などICT教育環境の整備も終え、スクールバスや机の更新なども計画的に進めています。
新年度からは学校給食費を完全無料化とし、妊産婦さんの医療費も無料化、小・中学校特別教室のエアコン整備などを実施し、「子育て支援№1&良好な教育環境の町」を更に進めていきます。
しかし、こうした支援策だけでは出生数、子どもの増加には直結しません。結婚につながるよう「出会いの場」の創出もより工夫し、また、藤山浩先生の提唱する「田園回帰1%戦略」や先進地事例など大いに参考としながら、人口対策・集落対策に取り組んでいきます。
資源活用、山の好循環を目指して
かつて阿賀町は日本有数の木炭の産地であり、そして今も水力発電によるエネルギー供給地であります。町の94%が森林、山と川が産業を創ってきました。2050年カーボンニュートラルを掲げ、再エネルギー化を進める今、阿賀町が再びその一端を担うサイクルを創っていきたいと準備しています。
手入れをしないで伐期を迎えている森林が非常に多くあります。目指すところは「切って、植えて、育てて、切る」かつての山の好循環を再び創ることであります。そのためには、山に多くある金にならないC材をバイオマス燃料として活用することであります。山に囲まれた阿賀町は、山林や農地は生業のみならず集落の在り方そのものに影響します。失われつつある林業技術の継承も極めて重要なことであります。
そして、阿賀野川、その支流の常浪川など豊かな清流を活用し、新たな産業と観光がよりつながる取り組みを模索しています。
かつて会津藩であった阿賀町は、新潟市と会津若松市の中間に位置し、そこを結ぶ磐越自動車道は念願の4車線化の工事がスタートしました。並行する国道49号は、水原バイパスが一部開通し、改良工事も加速しています。また、昨年8月の豪雨で喜多方市内の橋脚が倒壊し一部区間運休となっている磐越西線は、この春には復旧し、SLの運行も再開される予定です。
町外の方から「阿賀町は資源の宝庫」と評されています。新潟市の先には必ずや世界遺産に登録される佐渡があります。福島と新潟と佐渡をつなぎ、8つの源泉がある自然豊かな阿賀町に多くの観光客が訪れ、活気が蘇えるよう思いを巡らしています。
コロナ禍で3年も実施できなかった「狐の嫁入り行列」。コロナは第8波が高止まりの状況にありますので、今年は、従来どおり5月3日の開催は難しくとも、開催日を変更しても実施したいとの気持ちで開催を目指しています。
発足から2年経過した「阿賀町ファンクラブ」の会員は1,960人となりました。町民、そして阿賀町が好きな方、応援いただく皆さんとともに、明るい、希望ある未来へつながるよう様々な取り組みを進めてまいります。
阿賀町の魅力をいくつかご紹介
・モンドセレクション最高金賞・金賞受賞の「阿賀町産コシヒカリ」
・お湯で3分・水で5分、そのままでも食べられる「新潟ごはん」8年長期保存
・阿賀町PRソング「阿賀町ひとり」(テイチクレコード永井みゆき)
・テレワーク&ブックカフェ「風舟」(津川温泉隣接)
ご一読いただき、また町ホームページなどをご覧いただき、阿賀町に興味を持っていただいた方、ご連絡お待ちしています!
【市町村長プロフィール】
阿賀町長 神田 一秋(かんだ かずあき)。新潟県阿賀町出身。1959年10月8日生まれ。新潟県立村松高校卒業。1978年東北電力入社。1979年三川村役場職員~2018年6月退職。2018年12月阿賀町長就任、現在2期目。影響を受けた人は、宮口侗廸(としみち)早稲田大学名誉教授。趣味は、渓流釣り・山菜取り。
◎次にリレーする市町村長(神田町長からのコメント)
阿賀町の隣、五泉市の田邊正幸市長さんをご紹介します。昨年1月、市長に就任され丁度一年を迎えますが、抜群の行動力・発信力です。観光関連民間大手のリーダーであった田邊さんからは、その経験、人脈、発想を、阿賀野川ライン観光の活性化へ牽引していただくなど、一層の連携よろしくお願いします。
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