「続・アイドル論」 新潟県元副知事・中国運輸局長 益田浩
第4回も前回に続き、アイドルについて書いてみます。アイドル論のつもりがヲタネタ化しそうですが、ご容赦ください。前回の記事は、にいがた経済新聞のWEB版や同紙のTwitterに掲載されていますが、Twitterへのいいねの数がWEB版へのいいねの数の倍近くあることには驚きました。記事への反響も新潟県からだけでなく、広島県の堅い職業の方からも「Twitterのリツィートで見たよ」との連絡があるなど、ヲタネタは独特の伝わり方をするなぁと感じています。
年明け早々、AKB48を14年間応援し、グッズなどに約2,000万円を使った30代後半のファンがグッズを大量に破壊し、決別を宣言したという、ドルヲタ界に衝撃が走るニュースが配信されました。数年前であれば、私もその決断に至る経緯や心境が全く理解できなかったと思いますが、今では「14年間、よく頑張ったね。うんうん、分かるよ」と納得しながら記事を読んでいました。前回は、私がNGT48劇場にデビューして、「沼にはまりはじめた」頃までを振り返りましたので、今回は現在に至る「沼にはまった」状態を書いてみましょう。
一般的に、アイドルグループを推し始めた当初は、特定のメンバーを応援することなく、グループ全体を応援している「箱推し」の状態が多いと思いますが、劇場公演の最中もメンバーは自分を推してくれるファンを一人でも増やそうと、壇上から「レス」(視線を合わせてくる)をしたり、手を振ったり、指で差したりと、「釣り」にきます。若くて綺麗な女性に免疫が無い中年男性がメンバーと目が合って、ニコッとされるとどうなるでしょう。ご想像のとおり、簡単に釣られてしまいます。何度も劇場に通っているうちに、段々と気になるメンバーが出てきて、推しメンの歓心を買うために、サイリウムで推しサイを振り、生誕シャツなど着るようになると、はい、立派なヲタの誕生です。通常、劇場公演の終了後、メンバーが壇上などに一列に並び、その前を劇場に来たファンが歩きながら挨拶をして通り過ぎるという「お見送り」の儀式があるのですが、めでたくメンバーから「認知」(顔を覚えてもらう)され、お見送りで通り過ぎる短い間に「サイリウム、見えていたよ」とか「生誕シャツ、ありがとう」などと、推しメンから声をかけられると、もう顔の表情とともに財布の紐が緩みっぱなしになります。
驚くべきことに、この界隈では、ドルヲタの心理を踏まえた集金システムが見事にできあがっています。一例ですが、コロナ禍の前から、アイドルがアプリを使ってオンライン配信することにより、しっかり課金できる仕組みができており、コロナ禍の最初の頃、観光業界の方に実例を示しつつ、オンラインで稼ぐ方法として紹介したことがあります。劇場公演に参加するにはチケット料金がかかりますが、その他にも既に述べた生誕グッズのほか、劇場公演へ出演を祝う花束などのプレゼント、毎月の個別生写真や季節のグッズの購入、握手会(コロナ禍ではオンラインお話し会、おしゃべり会に変わる)への参加、先に述べたメンバーがオンライン配信するSHOWROOMなどへのギフト(配信者を応援する投げ銭)など、いつかは卒業する推しメンを、今、しっかり推したいというファンにいろんな請求書が回ってきます。「推しは推せるときに推せ」という格言もありますからね。
かつてはAKB48グループの総選挙(AKB48のシングル選抜メンバーをファン投票で決める)という過酷なイベントがありましたので、上記のニュースで「約2,000万円を使った」と書いてあっても、さもありなんと思います。まぁ、恋は盲目という言葉もありますし、この頃がヲタ活をしていて一番楽しい時期かもしれません。本人が納得して支出している限り、周りがとやかく言う必要もありませんが、推しメンが一人でもこのような状態なので、もし二人以上いると、お財布を空にして、結果的に地域経済に大きく貢献することになります。
私は早い段階からイチ推しはずっとぶれていませんが、NGT48との接点が増える中で、同じように頑張っている他のメンバーも気になってくるし、メンバーも自分のファンを増やすため、他のメンバーのファンでもしっかり「釣り」に来ます。私もメンバーから「(ひろしさんの)Twitterのプロフィール欄に(応援するメンバーとして)私の名前を書いてもらえるよう、頑張る」と可愛らしく、しっかりと「圧」(圧力)をかけられたことがあります。
折角、いろいろ個性のあるメンバーが揃っている以上、「単推し」(一人のメンバーのみ応援する)は勿体無いなと思いますし、実際、ずっと単推しのファンは少ないのではないかと感じます。私も「推し増し」(イチ推し以外に応援するメンバーが増える)状態となり、「DD」(複数の推しメンがいる状態)扱いされることもありましたが、中には「推し変」(イチ推しが変わる)するファンもいて、こちらは元の推しメンとの関係で緊張感が漂うことになります。DDになると、劇場公演中、目の前にイチ推しがいないときは、すかさず手に持つサイリウムの色を他の推しメンの色に替えて振ったりしますが、これもイチ推しから「斜めからでもよく見えているよ」と牽制されるなど、DDもなかなか気を遣います。オンラインのお話し会ではメンバーと1対1なので、こういう悩みからは解放されますが、メンバーが一堂に会し、ファンがメンバー毎の目当ての列に並ぶ握手会や2ショット撮影会の場では、他のメンバーの列に並んでいる自分のファンを見つけたメンバーから指を差されたり、じっと見つめられたりと、圧をかけられる光景も少なくありません。コロナ禍がなかなか収束せず、握手会の再開は見通せませんが、徐々に対面でのイベントも動き始めていますので、ファンとメンバーとの間の神経戦も増えてきそうです。大変ですね。
現状で、私がNGT48の劇場公演に行くと、2期生以上のメンバーの過半はお見送りで声をかけてくれます。STU48の公演ではまだメンバーにほぼ認知されていないので、お見送りも淡々と終わります。今後、どのように変わっていくか楽しみです。また、機会があれば、アイドル論を書いてみたいと思います。
益田浩
昭和61年3月私立修道高等学校卒業、平成3年3月東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種(法律)合格。平成3年4月運輸省採用。平成9年7月運輸省大臣官房人事課付(英国ケンブリッジ大学留学国際関係論)、平成27年7月自動車局自動車情報課長、28年6月大臣官房参事官(税制担当)などを経て、29年7月新潟県副知事。令和2年7月内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官、令和4年6月国土交通省中国運輸局長。
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