「予算委員会の現場から」 衆議院議員 鷲尾英一郎

衆議院の予算委員会は、通常国会開会後ほどなく、大体1月下旬からひと月の間に行われます。

私も2年連続で予算委員となっているわけですが、最近、NHK中継が入る際に、テレビカメラの画角と私の委員席とがちょうど良い塩梅らしく、良くテレビに映り込んでいると指摘を受けます。

いきなり余談になりましたが、今回は先日行われた予算委員会中央公聴会(テレビ中継はありませんでした。)での議論の一端をご紹介したいと思います。

まず公述人数名から意見を述べて頂いたのち、質疑に移る段取りなのですが、公述人自体、各党の思惑で選ばれるため、往々にして、私たちは真っ向対立する意見を聞くことになります。

1つ目は、アメリカ安全保障政策の専門家である拓殖大学の川上高司先生です。サラッと衝撃的なことを話しました。

「アメリカは、本気で中国と戦争する、できるのか、するのか、やるのか、こういう状況なんですが、もちろんやりますが、言いましたように、統合抑止戦略の下でやるとするならば、アメリカは軍事力は使わずにその他のドメインで入るわけですから、実際に向かい合うのは恐らく自衛隊と中国人民解放軍、この可能性も否定できないというようなところを我々は考えながら戦略を立てなくちゃいけないというのは間違いございません。」

「これは日米同盟のジレンマ、つまり、捨てられる恐怖と巻き込まれる恐怖があって、現在、今我々はそういうジレンマに直面し、それで、今現在、日本はアメリカの力を使って抑止しようというふうな体制に入っていますので、その逆の巻き込まれる恐怖というのがございまして、、、、」

(略)

「こういう具合なことを 述べてみますと、我々は絶体絶命のピンチにあるような状況に立たされているわけでございまして、 しかし、これを考えてみるならば、戦後七十八年間アメリカの影響力からなかなか脱し得ない日本が脱する千載一遇のチャンスだとも考えるわけで、 これはまさに、解答から言いますと、ビスマルク的な外交戦略を展開し、それで日本がバランシング、バランサーとなればいいわけでございます。」

専門家の発言だけにガツンと衝撃を受けました。

2つ目は、日米地位協定に詳しい沖縄国際大学の前泊博盛先生です。

(略)「我々は、軍拡に対して外交力がもう少し発揮されてしかるべきではないかということを注目をし ていたんですが、岸田首相がせんだって外遊をなさって、外交を展開したというふうなことでしたけれども、 中身を見ると、この同志国の訪問を繰り返しているんですね。並べてみると、これは明らかに中国包囲網をつくろうとしているかのような印象を受けます。そうすると、まさに中国側からすれば、包囲網をつくられて心穏やかではない、これにどう対処するかというような、戦争を惹起するような外交を展開しているかのような印象を受けます。こういうことにならないように。」(略)

外交力の発揮について、川上先生も前泊先生も米国に対する日本の自主性をどう発揮するか、という点では共通していますが、アメリカ側に近いか中国側に近いかで180度見方が異なります。

午前中に以上の議論があったあと、同日午後には日本政治外交史・軍事史の専門家である東大名誉教授の北岡伸一先生がかなり説得力のある議論を展開されました。

「こういうことをする(※反撃力を持つ)と周辺国の軍拡を招くという御批判がありますが、これは間違いでありまして、軍拡はもう既に先にあるんです。 我々はそれに対応しているだけです。

二〇一四年だったと思うんですけれども、私は中国のある高官と話したことがあるんですけれど、大使館の方ですが、向こうの方は、当時、二〇一四年だったと思うんですけれども、四か五ですね、日本政府、安倍内閣が防衛費を増やしたことを批判したんですね。私は驚いて、今回増やしたのは1%かそこらだ、あなたのところは毎年に10%増やしているじゃないか、何でそんなことが言えるんだと言ったら、その人は平然として、我々は前から同じ政策だ、日本は新しい政策になったと言うんですけれども。

こういう国を相手にしてそんな議論をしていてもしようがないですよ。相手が軍拡をしているわけでありまして、これに対する対応が必要だと。

確かに軍拡競争は好ましくありません。しかし、戦争はどういうときに起こるか。相手が絶対勝てると思ったときに起こるんですね。ですから、こちらの抑止力を上げておく。はっきり言ってしまえば、中国が簡単に勝てると思ったら、戦争が起こる可能性が高まるわけです。もし、結構手ごわいなというふうに思えば、ためらいます。中国は、伝統的にも軍事力の行使に慎重な国です。短期に絶対に勝てると思わない限り、多分やらない。絶対とは言いませんが、やらない確率が高い。

したがって、私は平和を守るためには、一見逆説に聞こえるかもしれませんが、こちらが行き過ぎない程度の抑止力を持つことが一番平和への道だというふうに思っております。」

あまりの説得力に清々しい思いになりました。ナチスドイツのヒトラーへ警鐘を鳴らし続け、軍備増強を訴え続けたチャーチルは、戦前、イギリス国民から戦争屋と言われていました。

よく、戦争を知るものがいなくなると戦争をしたがる人間が増えると言いますが、アメリカは戦争を知るものが多くいるにも関わらず、しょっちゅう戦争をしています。

私は、たとえ戦争自体の経験はなくとも、戦争がなぜ起こったのかを歴史に学ばなければ、また戦争が起こってしまうと思います。

 

 

鷲尾英一郎

衆議院議員(6期目)。1977年1月3日、新潟市出身。本家は魚屋、祖父は珠算塾経営、政治とは無縁な家庭に育つ。1995年に新潟県立新潟高校を卒業し、2001年に東京大学経済学部経済学科卒業。2005年に新潟県第2区より衆議院総選挙に初挑戦し初当選。2021年、自由民主党副幹事長就任。座右の銘は「一燈照隅 ・ 百折不撓」、趣味はボクシングと筋トレ、好物は炊き立てのご飯と味噌汁。

 

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