【人気記事】(再掲載)「豪雪災害、感染症有事と平時の財源について」衆議院議員 鷲尾英一郎

「著名人コラム」から好評だった記事をピックアップして、ゴールデンウィーク中に再掲載します。(編集部)

 

新潟県内では12月18日から降雪がつづき、今冬初めての本格的な降雪と相まって、各地で甚大な被害が生じました。高速道路が早くに通行止めとなり、一般道で長時間の立ち往生が発生、帰宅困難者はもとより、雪下ろしでお亡くなりになる方、車中で暖を取りながら不幸にも一酸化炭素中毒死された方もおられました。心からのお見舞いと、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り致します。柏崎市、長岡市、小千谷市、魚沼市では災害救助法が適用され、関係者は除雪作業、停電からの復旧作業、住民への支援などの様々な対応に追われていました。この間の関係者のご尽力に敬意と感謝を表する次第であります。

与党では早速、12月22日に災害対策特別委員会が開かれました。県内の与党国会議員がそれぞれ、高速道路の運用、停電への対応ならびに予防措置から、除雪費、除雪の状況およびオペレーター問題に至るまで幅広い現場の状況を指摘し、今後の対策を政府へ要望する貴重な場となりました。

こうした災害時に有難いのは、政府の予算措置であり、地方自治体は政府のバックアップのお陰で、躊躇なく様々な支援体制を組めることになります。

ここ数年、新型コロナウイルスが猛威を振るい、国家予算も今まで以上に膨張することになりましたが、有事に政府が国債を発行し、予算措置によって国民生活を支えるのは当然です。

他方で、有事に国債を躊躇なく発行できるのは、国債を受け止める市場の余力、すなわち政府の財政運営に対する信認があってこそでもあります。最近、国債はいくら発行してもデフォルトしない、財政破綻しない、経済が混乱するということはない、という議論がありますが(こう言うとデフォルトと財政破綻と経済の混乱とはそれぞれ違う、というツッコミもあろうかと思いますが)、私はいわゆる「国債の安全神話」はない、という立場です。

それを前提に、このほど与党内で侃々諤々の議論がなされた防衛費増額の財源について、いくつか指摘しておきたいと思います。

まずは中国問題です。2010年に初めて日本のGDPは中国に抜かれましたが、その後も差は開き、既に2倍以上の開きにまでなっています。この間、中国の軍事予算は増えつづけ、今年度は日本の6倍で、軍事力も飛躍的に増強しています。ご存知の様に、日本の領海侵犯のニュースも今や当たり前となっています。習近平政権が未曾有の3期目に入り、台湾への圧力のみならず、台湾支配へと着々と準備を進めているのは周知の事実です。

そんな中で、どう中国の覇権主義的行動を抑止していくのかを、私たちは考えなければなりません。

12/16に岸田政権は安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略大綱、防衛力整備計画)を改定しました。経済、技術分野を含めた強靭性の向上、反撃能力の保有、宇宙、サイバーへの対応、継戦能力の確保、それに相応しい防衛装備品の充実など、少なくともこれ以上放置しては困る問題を挙げています。

これまで幸運にも、差し迫った危険を感じる必要がなかったために、戦前からの旧軍施設を継続して使用していたり、防衛装備品を脆弱な場所に保管したり、と常識的には理解できない状況が放置され続けてきました。「自衛隊の皆さん有難う」と口では言っていても、防衛費を極力抑制し続け、隊員の皆さんがなかなか酷い状況で勤務していたことは否めません。公然と隣国で核開発が行われ、ミサイルが連射されています。こちらは否が応でも反撃能力を持たざるを得ないのです。また、新型コロナウイルスまん延で露呈したのは、世界に広がるサプライチェーンが寸断されることによる供給不安、経済の脆弱性であり、ワクチン創薬、製薬技術に代表される技術力、開発力の重要性です。サイバー攻撃によるリスクは年々高まっています。

だからこそ、抜本的な防衛費の増強が必要とされていることを安保3文書は明らかにしました。抜本的であればこそ、財源の議論はセットで行わなければならないのは当然と考えます。

次に財源問題ですが、もちろん歳出削減努力は不断に必要です。あらゆる予算は冗費の削減努力をしなければなりませんが、そもそも現在、国債を発行し続けねばならない根本原因は、削減努力が足りないのではなく、現行の社会保障制度にあります。すなわち、現下の少子高齢化の現状とあっていませんし、受益と負担のバランスはいまだに取れていません。しかし、受益を抑えて、負担を引き上げることがどれほど困難であるかは皆さんご案内の通りです。

このような状況で、さらに、平時に継続して必要となる防衛予算を国債で賄うというのは、さすがに財政に対する責任を放棄する姿勢にならないかと考えます。ここ数年の新型コロナウイルスへの対応と相まって、国債発行は膨張しています。今だからこそ、財政運営の信認もあわせて考えるべきだと思います。今、混乱は生じていないから、今後も大丈夫だということにはならないはずです。破綻する(経済が混乱する)可能性を無視し、破綻するまで財政運営への信認を放置することは許されないと思います。したがって、防衛費の財源に増税を考えざるを得ないと思っています。

ただし、防衛費の財源として増税を考えると一言で言っても、先日の与党税調での決定の中身は、中小零細企業のほとんどに影響させないということです。言葉をかえれば、大企業を中心とする企業群に負担していただこうと言うものです。蓄積される留保利益、担税力もさることながら、労働分配率は中小零細企業と大企業とは圧倒的な差が生じています。また、所得税を今の水準から増やさないことを決定しました。1%の付加税を創設するとともに、復興特別所得税を同率引き下げます。ただし、復興財源に不足が生じないよう、25年の課税期間を必要な年数延長することとしています。今、申し上げた全ては、令和9年までを目処に、段階的に確保していく予定で、少なくとも来年は増税しないことも決めました。

ここまで決めたことは大変意義のあることだと思います。議論の持ち方には色んな意見が出ていますが、安保3文書改定という期限もありましたし、与党である以上、政治決断をした上で国民の皆様に理解していただけるよう説明することが何よりも重要です。決定しなければ、責任を持って説明することもできません。

私は、防衛費の中身のみならず、財政の信認を確保していくことは、実は中国に対する相当な牽制になると確信しています。いざとなれば、国債を発行せざるを得ないし、国債発行の余力があれば色んな対応も可能になります。

これからも地道に説明をしながら、皆様にご理解いただけるよう努力していく所存です。

鷲尾英一郎

衆議院議員(6期目)。1977年1月3日、新潟市出身。本家は魚屋、祖父は珠算塾経営、政治とは無縁な家庭に育つ。1995年に新潟県立新潟高校卒業し、2001年に東京大学経済学部経済学科卒業。2005年に新潟県第2区より衆議院総選挙に初挑戦し初当選。2021年、自由民主党副幹事長就任。座右の銘は「一燈照隅 ・ 百折不撓」、趣味はボクシングと筋トレ、好物は炊き立てのご飯と味噌汁。

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