【コラム】アフターコロナで、テレワークはどうなる?(特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長 サイボウズ株式会社勤務 竹内義晴)

2023年5月にコロナ禍が5類になり、はや数ヶ月。移動や会食などの制約がなくなり、さまざまなイベントも再開され、なんとなく、人や街の明るさが戻ってきたような気がします。お盆休み前のいま、さまざまな計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

コロナ禍では、企業でも多くの制約が課されました。対面で会うことが難しく、特に都市部の企業ではテレワークが推奨されました。

しかし、コロナ禍が5類に移行してから、最近では「オフィスに回帰している」といったメディアの報道もあります。今後、私たちの働き方はどのようになっていくのでしょうか。

そこで、テレワークを中心に考察してみたいと思います。

 

現在のテレワークの状況

さて、最近のテレワークの実施状況はどのようになっているのでしょうか?

5類に移行した以降のデータを公表しているところはまだあまり多くありませんが、東京都産業労働局が2023年7月11日には発表した「テレワーク実施率調査結果をお知らせします! 6月の調査結果」(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/07/11/11.html)によれば、以下のようになっています。

(1)都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は44.0%。5月の前回調査(44.0%)と同率。
(2)テレワークを実施した社員の割合は35.8%と、前回(38.2%)に比べて、2.4ポイント減少。
(3)テレワークの実施回数は、週3日以上の実施が45.2%と、前回(42.4%)に比べて、2.8ポイント増加。
出典:テレワーク実施率調査結果をお知らせします! 6月の調査結果 | 東京都 産業労働局
(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/07/11/11.html)

ここから言えることは、「テレワークの実施率はあまり変わっていない」「テレワークを実施した社員は減っている」「テレワークを3日以上実施した回数は増えている」でしょうか。

メディアの情報を見ていると、どちらかと言えば「オフィス回帰」といったものが多いため、「テレワークを3日以上実施した回数は増えている」というのは意外な結果ですが、長期的な視点で見ると、2023年4月までは、テレワーク実施率は50%を上回っていたことから、全体的に見れば、テレワークの実施率は下がってきているようです。

 

実際に見聞きするテレワーク実施状況の肌感覚

データではなく、実際にテレワークをしている現場の肌感覚はどういったものなのでしょうか。

わたしが複業しているサイボウズ株式会社は、コロナ禍前からテレワークを実施しています。コロナ禍が5類になって制約がなくなった分、会社で行われるイベントが増えたり、「今日は〇〇があるので出社します」といった声を聞いたりする機会は増えました。しかし、社員の働き方が大きく変わった印象はあまりありません。

また、ほかの企業の方々と接する機会も多々ありますが、オンラインでミーティングを行うと、オフィスから参加している人もいれば、在宅から参加している人もいます。その観点でも「若干オフィス率は増えたかな?」という感じがしなくもありませんが、「それほど変わらない」という印象です。

これらはあくまでもわたしの肌感覚ではありますが、総じて「確かに、オフィスに行く機会は増えたけれども、だからといって、テレワークをしなくなったわけではない。必要に応じて、会社に行ったり、テレワークをしたり……という働き方をしている人が多いのかな?」という印象です。

 

アフターコロナのテレワークは?

このような状況の中で、今後、テレワークはどのようになっていくのでしょうか?

まず、間違いなく言えるのは、「全部が全部、コロナ禍前に戻ることはない」ということです。なぜなら、多くの人たちがテレワークを実施したことによって、「どんな可能性が生まれるか」を体感したからです。

もちろん、テレワークを実施したことによって、コミュニケーションの課題や業務上の課題はあったでしょう。しかし、テレワークによるメリットも実感したはずです。

実は、同じ「テレワーク」でも、わたしがフルリモートで働き始めた2017年と、多くの人がテレワークを体験した現在とでは、その働き方はまったく別ものです。コロナ禍の3年で、周囲の働き方はずいぶんと変わりました。どれだけ「オフィスに回帰している」といっても、十分、大きな変化と言えるのではないでしょうか。

 

新潟におけるテレワークは?

また、多くの人がテレワークを経験したことで、地方の企業にとって、コロナ禍前には考えられなかった可能性が生まれています。

いま、日本では1年で1つの県の人口がいなくなるぐらい、人口減少が急激に進んでいます。今後、特に地方の企業では、人材不足が大きな課題になってくるだろうと見ています。採用したくても、「そもそも、人がいない」という状況です。

しかし、テレワークが可能になると、地域外の方々との接点ができますし、副業・兼業のような形なら、採用とは違った人材との接点もできます。

もちろん、そういった方と出会うためには、さまざまな課題があるかもしれません。でも、コロナ禍前は、こういった働き方は単なる妄想というか、可能性すら見いだせなかったことを考えると、大きな変化だと思います。

テレワークというと、「一部の人たちがやっているもの」「うちの会社は現場仕事だから無理」のように思われる方も多いと思います。そう思われますよね。でも、新潟の企業における課題解決の一助になる可能性があるなら、その可能性を伝えていきたいなと思います。

竹内義晴

特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長。「楽しくはたらく人・チームを増やす」が活動のテーマ。コミュニケーションや組織づくりの企業研修・講演に従事している。

2017年よりサイボウズ株式会社 にて複業開始。ブランディングやマーケティングに携わる。複業、2拠点ワーク、テレワークなど、これからの仕事のあり方や働き方を実践している。また、地域をまたいだ多様な働き方の経験から、2020年より一般社団法人妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会 にて、ワーケーションをはじめ地域活性化の事業開発にも携わる。

著書に、『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)』などがある。

 

【過去の連載記事】

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