【人気記事】「3,000円のTシャツを6,000円で売る方法」えちごトキめき鉄道 代表取締役社長 鳥塚亮(再掲載)
2023年春から夏にかけての本紙から好評だった記事をピックアップして、お盆休み期間に再掲載いたします。(編集部)
掲載日 2023年7月22日
えちごトキめき鉄道は並行在来線です。
並行在来線というのはJRになってからの新幹線の延伸開業の際に、それまでの在来線○○本線を県と地元が引き受けるという国との取り決めで誕生した第3セクター会社で、北海道から九州まで現在8社。来年の春に福井県の敦賀まで北陸新幹線が延伸すると、福井県内の北陸本線が並行在来線になりますから、もう一社増えて全部で9社になります。
上越新幹線のように国鉄時代に開業した新幹線は、当時の国鉄は両方運営することになっていましたので、在来線の上越線も並行在来線になることはなく今でもJR線として運営されていますが、JRになってからは民間会社に両方を持たせるのは無理があるとして、新幹線の建設工事をスタートする際の条件として、在来線は県と沿線市が運営しますというお約束になっているのです。そして、並行在来線をJRから分離し地域の第3セクター鉄道にするかどうかは、基本的にJRが決めることになっていて、その判断基準は、「新幹線開業後に黒字を維持できるか、それとも赤字になるか。」というところになります。
九州新幹線の並行在来線である博多-鹿児島間や、お隣り長野県の長野-篠ノ井間のように、新幹線ができても第3セクター化されずJR線として運営しているところは、「黒字路線」ということになりますから、逆に言うと、並行在来線として第3セクターに分社化された路線は、「当初から黒字化が見込めない区間」ということになります。
ということで、えちごトキめき鉄道は開業以来赤字が続いている路線なのでありますが、「並行在来線だから赤字は仕方ない。」という考え方は民間企業では通用しません。赤字会社の経営者や幹部職員は、日々その赤字をできるだけ少なくする努力義務があり、「やれることは何でもやる」ということが、民間の会社として当然だと私は考えています。
そこで本日の表題、「3,000円のTシャツを6,000円で売る方法」について。
えちごトキめき鉄道では各種グッズの品ぞろえの一つとしてTシャツを販売しています。品物にもよりますが、通常価格は3000円前後です。
でも、赤字解消のためにはもう少し売り上げを伸ばしたい。そこで3000円のTシャツを6000円で販売する方法はないかを考えました。
通常の商品であればどうしても安い方にお客様は流れます。
ところが鉄道会社もそうですが、お役所も顧客心理なんて考えませんから、一方的に運賃値上げをしたり、あるいは増税をしたりの繰り返しですよね。
特にローカル鉄道の場合は、値上げして、さらに本数を減らして、お客様に利用されなくなっているというのが全国的な傾向ですから、商品を作る時にも、この顧客心理の部分を考えなければなりません。つまり、「どうしたら商品を買っていただけるか」ということです。
値段を上げたとしてもお客様が喜んで買っていただける。そういう商品を世に出す必要があると私は考えます。
そこで、えちごトキめき鉄道ではTシャツを切符にしてみました。
名付けて、「急行券Tシャツ」。Tシャツが急行券になっていますので、このTシャツを来ていれば急行列車に乗ることができるというTシャツです。
えちごトキめき鉄道では土休日を中心に昭和の国鉄形車両を使用した観光急行列車を運行していますが、ご乗車の際の急行料金は1回500円。Tシャツ代が3000円だとすると、残りの3000円が急行料金。7月21日から9月10日までの夏休み期間中、急行列車に6回乗れば元が取れるという価格設定で、今はやりのサブスクです。
もちろん6回以上乗れば乗っただけお得になりますが、急行列車は土休日を中心に日本海ひすいラインの直江津-市振間を1日2往復、4本走っていますから、土日2日間の滞在で元が取れる計算です。
でも、それだけではありません。
お客様の心理としては、「Tシャツで改札口を通れる」ことや「急行券を拝見しますと車掌が回ってきたときに、胸を張って見せることができる」など、お金だけじゃなくて楽しい体験ができることも魅力のようで、インターネットだけでの販売にもかかわらず、すでに100枚ほどのご注文をいただいております。
会社としては、このTシャツはあくまでも「急行券」でありますから、ご乗車の際には別途乗車券(直江津-市振の場合は片道1310円)が必要になりますので、3000円のTシャツを6000円でご購入いただいたお客様に、さらにお金をお支払いいただく仕組みを用意しているわけですが、遠方からわざわざ観光にいらしていただくお客様でしたら、電車に乗っただけで帰る人はほとんどいらっしゃらないでしょう。
つまり、このTシャツがきっかけとなって、沿線地域にいらしていただいて、飲食やお土産のご購入、あるいは宿泊などにお金を使っていただくことで地域観光に貢献することも大きな目的の一つであり、そうすることでえちごトキめき鉄道が学生さんたちの地域輸送以外にも、少しでも地域のお役に立てればと考えております。
このTシャツのお申し込みはこのリンクから。8月初旬までの販売予定ですが、サブスクですからできるだけ早くお求めいただいた方がお得です。
ご興味のある方はぜひ、今すぐ「ポチッ」とお願いします。
直江津D51レールパーク内の売店でも販売しております。どうぞお早めにお求めください。
この夏はえちごトキめき鉄道で昭和の急行列車の旅をお楽しみください。皆様のご乗車をお待ちいたしております。
鳥塚亮
1960年東京都生まれ。明治大学商学部を卒業後、外資系航空会社に就職。2009年に公募でいすみ鉄道社長に就任。2019年、公募でえちごトキめき鉄道の社長に就任。鉄道に関する著書も2冊ある。