【市町村長リレーコラム】第13回 新潟県見附市 稲田亮市長「暮らし満足No.1」を目指して~未来を見据えて子育て世代に選ばれるまちに~
新潟県内30市町村の首長に、地域での取り組みや課題や首長としての想いなどをコラムとして寄稿いただき、次に寄稿いただく首長を指名いただきつないでいく「市町村長リレーコラム」。第13回は、新潟県小千谷市の宮崎悦男市長からバトンをつないでいただいた、新潟県見附市の稲田亮市長のコラムをお届けします。
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「住みよい」との市民からの評価
見附市は、「スマートウエルネスみつけ」を旗印に、住んでいるだけで健やかで幸せになれるまちの実現を目指しています。その積極的な取り組みが評価され、令和元年にはSDGs未来都市に選ばれています。
また、令和4年秋に実施した市民アンケートでは「住みよい」「どちらかと住みよい」と回答した人の割合が91.2%と高く、過去最高を記録しています。
人口減少への対応
一方で、全国的に特に地方において人口減少や少子高齢化が顕著といわれており、見附市においても、その傾向が見えてきています。
ただし、新潟県のど真ん中に位置する見附市は、交通アクセスもよく、産業立地が進んでおり、コンパクトなまちという特性を活かせれば、人口減少を少しでも食い止め、将来に向かって持続的な元気なまちにしていけると確信しています。ターゲットは、若者や子育て世代です。
人口データ的にも、見附市では、この世代や15歳未満については、年によって転入超過となっています。未来を見据えると、こういった世代が「住み続けたい」「戻ってきたい」「新たに住みたい」と思えるまちにしていくことが大切であり、このために必要なのは、経済と居住と子育て環境の充実ではないかと考えています。
充実する子育て支援策
特に子育て環境の充実に向けては、これまでも妊娠・産後のサポートや発達支援などを切れ目なく行う「ネウボラみつけ」や、市内の商店等で特典が受けられる「子育て応援カード」など、様々な取り組みを行ってきました。
令和5年度に入ってからは、4月には小児科を市内に誘致できたほか、7月には子どもたちが屋内で思いっきり身体を動かしたり学んだりできる施設「プレイラボみつけ」がオープンし、多くの子どもたちに親しまれています。同時に中学生以下は市内で運行しているコミュニティバスの利用を無料にし、行動範囲を広げられるようになりました。
秋には、子育ての不安を解消しながら妊婦さんやママの健幸づくりを応援するため、筑波大学の監修を受けて「みつけ子育てママ健幸スマイルスタジオ」を開設しています。
働きながら子育てできるまちへ
また、働きながら育てられる環境づくりの面では、令和6年度に民間保育園の新設やリニューアルが予定されるなど、保育施設のより一層の充実が見込まれるほか、少なくとも小学校3年生までは希望する全児童を受け入れられるよう放課後児童クラブの充実を図っています。
加えて、令和5年度からは、子どもを預かる施設に頼るだけでなく、「ママやパパが子どものために育児休暇をとれる!」そんな職場環境づくりを行う企業を後押しする事業も開始しました。この取り組みは、子育て環境への影響のみならず企業価値を高めて人材確保にもつながり、地域経済にも寄与すると考えています。
現在、「子ども・子育て条例(仮称)」の策定作業も進めています。行政としても子育て環境の充実に努めていきますが、地域や企業も含めてみんなで支えていく、そんな気運を一層高めていきたいと考えています。
若者・子育て世代を呼び込む環境づくりと発信力
若者や子育て世代が住める・働ける環境に関しては、見附市はその立地や環境の良さが評価されて、中部産業団地において企業進出が進み、進出企業による工場の拡張も進んでいます。新たな住宅建設の需要も引き続き旺盛だと伺っています。
こういった状況をいかしつつ、農業・工業・商業など既存事業者による新たなビジネスや魅力を生み出すための仕掛けや支援、起業や事業立地がしやすい環境づくり、子どものときから起業家精神を学ぶ教育を考えていくほか、住宅需要に対応できる宅地の確保、駅を核とした公共交通のさらなる充実などを未来志向で着実に進めていきます。
令和5年度にLINEによるプッシュ型での情報配信もスタートさせましたが、見附の魅力をしっかり発信していくことも重要です。見附出身者や関係者で構成される「見附さぽーた」制度の強化・拡大も進め、市内の子どもや若者を含めていろんな人の力を借りながら、「ママやパパとして住むなら、やっぱり見附だ」と市民の皆さんや全国の多くの皆さんに認知されるよう取り組んでいきます。
このような「攻め」の施策と同時に、少子高齢化に対応しつつ、あらゆる世代や境遇の市民の皆さんが安心して暮らせる、いわゆる「守り」の強化も進めます。
みんなでつくる「誰一人取り残さないまち」
市民の皆さんの関心の高い地域医療について、医科診療所の誘致を進めてきた結果、令和5年の春には、小児科以外に、内科と心療内科も市内で開業しました。今後もスマートウエルネスによる健幸づくりを進めながら、地域医療の維持・充実に努めます。
また、通常の暮らしにおいても防災面においても、「誰一人取り残さない」ことを目指します。特に、障がい者や支援が必要な高齢者、経済的困窮者、性的マイノリティ、外国人など、ケースによって弱者となりうる方々をいかに支えられるかを大切にしたいとの考えです。
その取り組みにおいて、見附市は、100近くもある市民団体による活動が盛んであり、地域コミュニティも市内全地域に網羅されて人材が育っています。行政はもちろんですが、こういった市民や地域の皆さんなどの力も借りながら、誰一人取り残さない、持続可能なまちにしていきたいと考えています。
コミュニケーションと未来志向のまちづくり
私は、市長に就任してから2年となりますが、多様な方々とのコミュニケーションを大切にしてきました。市民の皆さんとは「ふれあい懇談会」を地域別やテーマ別に月1回ペースで実施し、多くの方々から直接ご意見をいただき、都度、市や私の考えも伝えてきました。また市職員のほぼ全員と毎年1年かけて面談してコミュニケーションを図り、特に若手職員から大きな刺激を受けています。まちづくりの土台は人づくり、組織づくりです。今後とも、市民力や職員力を活かしながら、庁内の連携を深め、ボトムアップでの施策づくりを進めていきます。
これまでの行政で見直すところは臆せず見直し、財政的にも体制的にも新しいことを行う余力を確保しつつ、未来志向で時代と地域のニーズにあった取り組みに積極果敢にチャレンジしていくことで、「暮らし満足No.1」のまちの実現を目指してまいります。
【市町村長プロフィール】
見附市長 稲田亮(いなだ りょう)。1971年3月24日生まれ、見附市出身。新潟大学工学部を1993年3月に卒業し、同大学院工学研究科を1995年3月に修了。その後、運輸省(現国土交通省)に入省。2013年4月に九州地方整備局大分河川国道事務所長、2015年4月には大分県中津市の副市長(地方創生シティーマネージャー)、2017年4月には鉄道局国際協力室長などを務めた。2021年4月には港湾局クルーズ振興室長兼官民連携推進室室長に就任し、同年7月に国土交通省を退官。2021年12月、地元見附市の市長に就任。好きな言葉は「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」。趣味は旅行(計画づくり)とスポーツ観戦。